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変化する戦況Ⅵ

 戦場は無謀の一言で表せた。

 あれから数分で後衛にいた部隊や危険を犯しながらも空からの部隊が来ることで戦力は均衡に保つことができた。でも、決定的に負ける要素が一つ……相手の巨大な物体だ。栖偽によると「巨人」との一言で表され、それは見上げなければ頭の方まで確認することが出来ない程の大きさ。そんなものが一歩でも歩いたら一瞬だが足がすくわれて動けなくなる。


「あの巨人ウザいっ! 動かないでよ、標準がズレるじゃないっ!」


 巨人の足元付近で煉獄を撃ち続けている明日奈と、付き添う形でついてきた幸が前線のよりももっと前、最前線付近で緑城との大きく戦争を行っていた。


「さっきも明日奈が撃った最大級の火炎球だって表面に着いた途端に飛散しちゃったし……あれを対処する方法は無いんじゃない?」

「昨日もそうだったけど、なんで私の炎は相手に触れた途端に消えるのよっ! こっちは体に激痛が走っているのを我慢して撃ってるっていうのにさっ!」


 明日奈は両手をブンブンと振り回すと、腕と融合でもしているかのように銃自体が脈を

打っている。


「それってどういう原理で体とくっついてるの? 凄く気になるんだけど」

「あぁ、これはね。特注で作ってもらった銃なんだけど、銃を造る工程で私の血を混ぜたのよ。そうすれば能力の伝達率も比較的に引きあがるから試してみたら、最終的にはこの通り、身体と融合するみたいにくっつくのよ。凄いでしょ」

「自分の血を入れるって……」


 聞くんじゃなかった……。

 確かに自分のDNAとなるものを武器となるものに入れれば能力の付与が通常よりも強くなるのは分かる。でも、それは揮移や勾坂のような上位の人間でもやらないことだ。


「でも、そのおかげで力的には勾坂先輩と同じくらいにはなるのよ。一発大きいの決めてやるっ!」


 その一声で明日奈の腕の脈動は大きく激しくなる。その度に顔を苦痛に歪める明日奈は耐える為に体を強張らせる。


「結構……痛いのよ、これ。でも、一発で戦況が変わるくらいの一撃が出来るなら撃たないわけにはいかない……」


 苦痛に表情を歪ませながら明日奈は頭の中の引き金を引いた途端、巨大な煉獄の炎が銃口から放たれ、それは勢いを増して敵陣の一角へと着弾する。爆発と爆風が一気に敵へと押し寄せ、その衝撃と共に敵は薙ぎ倒される。


「……流石は姫と呼ばれるだけあるよね、明日奈は」


 幸は呆れが交じった表情で着弾点へと視線を向けていると、唐突に何かが倒れるような音が隣から聞こえてきた。そして、音が発信源へと顔を向ければ、


「ハァ…………ハァ……」


 そこには尋常じゃない程の嫌な脂汗を額から流している明日奈の姿だ。


「明日奈っ!? まさか、その銃ってやっぱり何かしらの副作用でもあるの!?」


 戦場のそれも最前線で突如として倒れ込んでしまった明日奈は荒い息遣いをしながら、それでもまだ、体を立たせようと銃と化している両手を地面へと支えにしている。


「少しでも有利にしなきゃ何がエンジェルクラスよ……天使に選ばれた人間があっさり倒れていいはずないじゃない……」


 話がまるで頭に響いていない明日奈の左手は地面へと、右手はこちらへと迫ってきている敵陣へと無理やりに向けられる。

 そして銃は脈を打ち始め、脈を打つたびに明日奈の表情は激痛に歪む。


「――――――――――――――ッ!!!!!」


 激痛に歪んだ顔はより形を変え、普段のような明るいものはそこから消え去っていた。

 ドクンッ、ドクンッ、と遠くからでもわかる程の脈動の音が一定のリズムから速く強く、

リズムを崩すように鳴り響く。


「消し飛べぇぇェえええ」


 咆哮を上げるように叫ぶ明日奈の右腕の脈動は、中に溜めこまれていた煉獄はより大きく成長させる。

 明日奈は自分でも理解していた。これを撃てばここで気絶する。そうすれば、相手が攻めてくる前に自分は救護施設へと飛ばされる……。

 なら、最後は大きなものを飛ばしてやろうじゃない……。

 その一心で練り上げた煉獄は少しずつ力の捌け口が必要となり始め、銃口を今すぐに飛び出そうとしている。それに抗う必要はない。もうすでに最大限にまで引き上げたんだから……

これなら多少は戦力を削れる……。

 明日奈の意識が途切れる直前、煉獄に発砲を知らせる引き金は引かれた。

 さっきのモノより断然に大きい煉獄は、確実に敵陣へと迫っていく。少しずつ迫っていく煉獄を他人の視点から見ているかのように眺めている明日奈は、

 これくらいはやらないとダメだよね…………イッキも多分、頑張ってるんだろうし、私も頑張っておかなきゃ、ダメだよね……?

 数秒は頭の中で数十秒にも引き伸ばされ、煉獄が相手の目前まで飛んで行くのを確認すれば意識が薄れていく。

 あと少し……あと少しで相手を削れる。

 期待と確信、その二つが大きく膨れ上がりながら飛んで行く。

 そして、明日奈の意識は着弾するのを確認せずに途切れてしまった。


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