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変化する戦況Ⅲ

「……揮移が退場した」


 外はもう暗くなり、戦闘は中断されていた。夜の戦争はルール上で禁止されているために、その時間は休息の時間として使われる。そんな中、勾坂を筆頭に組まれているエンジェルクラスは作戦を組むために昨日のテントへと集合していた。


「おそらく明日、緑城は一気に攻めてくる……明日で戦争も終わる」

「俺もそう思う。斬時先輩の言う通り、明日で全部が片付く。それも相手は揮移先輩を負かした程の実力の持ち主……一筋縄ではないはずだ。どれだけ大きな戦争になるかは分からない程かもしれない」


 斬時の言葉を肯定するように憐矢も自分の意志を交えれば斬時も頷き、明日の戦争が最後の切れ目になる。


「でもこれからどうするの? アドバイス役の学園長は一樹を連れてどっかに飛んで行っちゃったし、こっちとしては、知らないうちに電波妨害を受けて何もできなかったから、正直こっちからの支援は一切できなくなったの」


 幸と由愛は大きなモニターが設置されている設備の中で、相手側の対空砲などの制御を妨害することで今日の戦争は終わっていた。それに助けられていた栖偽も輸送機で物品の補給などをしていたのだ。


「もうこっちとしてはお手上げなのよ……実戦に入るのは嫌なのよさ」


 眠たそうに眼を擦っている由愛は頑張って起きているといった感じだ。


「確かに由愛は銃撃とかは苦手だもんね……明日はゆっくりしてていいよね?」

「由愛ちゃんはこのまま拠点に居て貰った方がいいかもしれないね。何か連絡が必要になった時は由愛ちゃんの能力は必要になるからね」


 明日奈と勾坂は目の前にいる華奢な体の持ち主、氷川由愛へと視線は向けられるが、


「それよりも明日の決戦はどうするんだ? 今の残存勢力はざっと見て四千……緑城の勢力は三千七百。たった三百の差がいつ逆転するか分からない状況だ。作戦を練らないと負ける可能性が大きくなるだろ、まだ相手の一位も前線に出て来ていないわけだしな」

「第一位が依然として顕在している緑城に対して揮移が退場になったことはこっちとしては痛手だね……」

「ならどうする? 俺たちの最大の戦力であるところの揮移が退場したんだ。勾坂、お前は大将だから前線に出ることはできないし、俺も輸送で前線に出るとしてもきつい。唯一戦力になるのも、斬時に憐矢、そして姫と狗龍くらいしかいない。もしかすると、一樹が戻ってくるかもしれないけど、戻って来ない確率の方が大きいだろうから、もったとしても明日が乗り切れるかどうかの瀬戸際だな」


 テントの中に付けられた電球が点滅し、光の強弱が栖偽達の目の虹彩を伸縮させる。チカチカと点滅する電球は少し時間が経つと元のような光を取り戻した。


「……明日の作戦は波状攻撃にして行こう。一回の攻撃に千人、第一波状攻撃には部隊長として斬時を筆頭に攻撃には憐矢君の遠距離射撃で狗龍くんはバックアップをお願い……第二波状攻撃は姫を筆頭に続けざまでは悪いけど、斬時を後衛にしてどうにかやり過ごしてほしい。後の二回には栖偽も入れて攻撃を仕掛ける。ここまでで質問がある人はいるかな?」


 大体の説明を聞かされた明日奈達は質問をする訳でもなく、ただ無言を貫いていた。それが何を意味するかは、このテントにいる全員が理解していた。

 テントの外からは駄弁っている生徒たちの声が聞こえる中で、異常なまでの静寂がこのテント内を支配していたのだ。


「それじゃぁ、明日は激しい戦争になるから、みんなはもう寝ていいよ」


 最後に先までの殺伐とした空気は消え失せ、全てを優しく包み込むような勾坂の優しい声音が響いた。そして、明日奈達は各々のテントへと向かい今日の疲れを取ろうと、外から聞こえてくる話し声をシャットダウンしているかのように静かに眠りに就いた。


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