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始まる変化Ⅶ

 火炎球は相手の目の前に存在する巨人へと直撃すると不可解な現象が起きた。

 火炎球は先まですべてを燃やし尽くすことが出来る程の熱量を持っていたはずだ。なのに、今はどうだ……。巨人の右手が火炎球へと着弾すると、そこで無残に飛散してしまったのだ。そして、その次の瞬間には明日奈の意識が一瞬だけだが飛ぶような衝撃が襲った。



「僕たちは確かに赤城との力の相性が悪すぎる。でも、それは同等の力量と物量での話で、それを越えてしまえばどうってことはないんだよ」


 体を地面へと呻かせている明日奈に近づいてくる巨人。


「そうだ、これまで屈辱的に負けてきた僕たちが赤城に引導を渡すんだ。名前を名乗っておかなきゃ勿体ないな……」


 さっきまでの余裕といった表情から、今の表情は変わり果てていた。

 侮蔑、屈辱、愉悦、そんな相手を罵るかのような感情が籠った笑顔で明日奈をものでも見るかのように眺めている。


「僕の名前は片谷総冶かたやそうじ。君を徹底的に負かす緑城学園二年にして第五位の男子だよ」


 自分の名前を名乗った片谷はもう一度だけ地面に手を触れ、もう一体の巨人を作り出すと、明日奈達の襟にも付けられている通信機を使い、


「こっちはもう少しで片付くから、そっちも早めに終わらせてくれるかい? こっちはちょっとしたことで押されてきてるけど、僕も参加すれば多分、この状況を崩せるからさ。あと一週間も戦争はしたくないし」

『ごめん、こっちもちょっと手こずってるから早くはできそうにないわ。相手の女子が異常で相手にしてるだけでキツイから。そっちはそっちで頑張ってて』


 無線から聞こえてきた女子とはおそらく揮移の事だろう。学園一位である彼女が連れて行った学生の数は五千人のうちのたったの三百人。昨日の戦争では二千人もの生徒たちが消えて行ってしまったが、明日奈が連れてきた学生は六百人と、揮移の二倍なのだ。それでも彼女は均衡を保っているようで、流石は学園一位と言うべきところだ。

 そう思うと、自分が負けている気がしてならない明日奈は、何かの衝撃を受けた体を無理やりに起こしては相手へと両腕で脈打っている銃を向ける。銃口の中では再度、煉獄の炎が充填され始め、大きく脈を打ち始める。


「へぇ~、まだ動けるんだ。さっきはあんなものを喰らっておいてよくもまぁ動けるもんだね。これは褒められてもいいくらいだと思うよ」


 確かにさっきの何かは異常だった。身体の中ではおそらく数本もの骨が軋むように折れただろう。ギチギチといった感覚が身体の中で疼くように感じられるのだ。相当の激痛が身体を襲ってきているのに、それを我慢しながら銃口を持ち上げ片谷へと向ける。


「……私だってね、この前まで学園でも三十位くらいだったのを……一気に六位まで上げたのよ……それがどれだけ苦しかったのかはあんたになんか分からないでしょ」


 息を切らせながらも意識を保たせるように言葉を紡いで、


「あんたにはこんなことできないでしょ……?」


 次の光景は相手である片谷を驚かせた。それもそうだろう……何故なら、


「自分の体に銃を向ける奴があるか……」


 煉獄の炎が溜められた銃口を自分の頭へと向け、そして引き金を引いたのだ。そして、煉獄の炎は明日奈の体を包み込み、体を燃やし尽くす。だが、煉獄の炎は明日奈を灰にする訳でもなく、まるで鎧のように体に纏わり付いていった。


「昨日の輸送機の中で学園一位がやったことを真似てみたんだけど、結構すごいわね……」


 体を守るように炎が燃え滾り、ついでに自分の周りをすべて燃やし尽くす攻撃を兼ね備えた炎の女神のような風貌へと変わっていた。

 両腕に纏わり付いている銃からは煉獄の炎が常に兼ね備えられ、何発も火炎球が連射できる状態へと変わっていた。


「……これならあんたのその巨人たちを消すこともできるわね」


 目の前の光景に驚きを隠せない片谷は、巨人たちを後ろへと引かせれば、


「集っ! もう一度やれっ!」


 と大きく叫ぶ。次の瞬間には再度、明日奈へと何かが飛んできたのだがそれは灰へと還るなり、飛んできた方向へと銃口を向け、煉獄の弾丸を撃つ。さっきまでの火炎球とは変わり、ライフルのような細い弾丸となった炎は、何かが一直線に飛んできた方向へと何十発も打ち付ける。

 その姿は鬼神とも言い表せる明日奈は何かしらの手応えを感じたらしく、そのまま目の前の巨人へと視線を移すと、


「早く終わらせてみんなのところに戻らないと……」


 と言い残し、今度はさっきのとは比べ物にならない程の火炎球が何発と巨人の懐へと飛んで行く。火炎球が飛んで行く途中、


「さっきの連絡で戦ってるあんたの仲間もそろそろ負けてる頃だと思うわよ? だって相手は私たちの学園で一位の人間なんだから」


 と言い残すと、


「――――――ッ!」


 最後に驚愕の表情を浮かべた片谷の前にいる虫の巨人は何発もの煉獄が消し炭にしながら飛んで行く。それでも片谷は抵抗しようと、数体の巨人を作り出すがそれもあっさりと消し炭になる。

「俺達だって苦しい思いをしてここまで来たんだっ! なのに、それを君は一瞬で否定するのかっ!」

 怒りが混ざった叫びが銃声の響いている森の中を木霊するのと同時に煉獄が片谷を襲った。本当だったら片谷はそのまま灰へとなっているかもしれないが、能力を付与するときには必ず、相手が死なない程度にしか力を込められないようにはなっている。


「一応は死んでないわよね……」


 今の一撃が大きすぎたことが心配となり片谷の首元へと指を当て、脈があるかだけを確認すると、そのまま明日奈は自分の仕事を最後までやり終える。

 一時的に離れていたせいで、戦況は劣性へと傾いていた状況を、煉獄を纏った明日奈が加わることで優勢へと持ち越せることができたのであった。


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