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始まる変化Ⅵ

 一樹が空へと飛んで行ってから数時間。すでに戦争は激化し始めていた。


「急いで後方部隊を前衛に持ってきてっ! このまま停滞し続けるのは消耗戦にしかなんないから。一気にここで押しに行くわよっ!」


 何百もの銃声が鳴り響く中、襟元に装着されている通信機を通して命令を飛ばしている明日奈がいた。森林の中での戦闘は初めてながらも、司令塔である勾坂の作戦と命令が功をそうしていた。相手側は何かしらの能力を使っているようだが、その能力が具体的に表へと出て来ていない以上、攻めない手はない。


「前衛は二人一組になって突撃、後衛にいた部隊は炎弾を絶やさずに前進していくわよ!」


 自分の部隊を引き連れながら緑城学園の生徒たちと対峙し、均衡を保っていた明日奈はここで切り崩しに掛かる。

 前衛を担当している生徒たちの何歩も前を駆け、両手に握られたハンドガンの銃口からは火花と弾丸が飛び散り、相手へと向かって飛んで行く。銃口から飛んで行く弾丸は攻撃重視に力を引き上げれ、着弾すると同時に何メートルにも火柱が立ち上るように発生する能力も追加してある。

 他の学生たちも、自分たちの力を込めた弾丸が何百と飛んで行く。だが、明日奈を含めた何百という弾丸は、相手を減らすことが出来ずにいる。


「僕たちNATURAL ENAGYナチュラルエナジーがどれだけ苦しい訓練を受けてきたと思ってるんだい、そう簡単に負けるはずがないだろう?」


 そんな状況で緑城の一人の男子学生が声を出すと、何百という弾丸の嵐の中を何も持たずに悠然と歩いて来た。悠然と歩いて来ている生徒は他の学生とは服装が異なり、見た目は長めの茶髪にモデルをしていてもおかしくない端整な顔立ちとスタイル。そして、彼が着ている服の色が深緑といった色で明日奈達が着ている制服となんら変わりないものだ。


「へぇ~、あんたも私たちと同じように天使に選ばれた人なんだ。あんたがどれだけ強いのか、見せてもらおうじゃない」

「僕は本当だったら女の子に手を出さない主義なんだけどね……ことがことだからさ、遠慮なくやらせてもらうよっ!」


 各天使たちに見入られた生徒はこの弾丸の嵐の中、自分たちの力を全力でぶつけようと対峙する。

 明日奈の持っているハンドガンからは灼熱の炎がメラメラと燃え上がり、形状を変化させていく。どことなくハンドガンの面影はありながら、それは腕に纏わり付くように両腕を包み込む。そして、その銃はまるで生きているかのように表面は脈動している。

 対する緑城の生徒は地面へと触れる。そして、地面からは数千、数万と昆虫たちが現れる。その光景は、奇怪だ。まるで虫たちがあの男子生徒に操られているかのように集まり、そして、形を作り出す。昆虫たちはまるで合成でもされたかのように纏まり、そして大きな物体になった。


「僕たちの能力は自然に対する敬愛。それを受けた木や虫たちは僕たちの意のままに動かせる。まぁ昆虫嫌いの生徒も多数いるけど、僕の場合は虫が大好きだからね。だから、僕が操る昆虫たちは危険な種類しかいないよ。そして、僕が作り出したこの巨人。結構、評判は良いんだ」


 そう言った生徒は、余裕と言った表情を浮かべながら自分の目の前に作り出した物体を見入っている。昆虫たちは大きな人型へと形を変え、大きさも人の二倍はあるだろう。しかも、その巨人と称された昆虫たちは依然として全貌を大きくしている。


「虫とか汚いものを武器として扱うのね……」


 腕に纏わり付いている銃は脈動しながら、銃口を虫の巨人へと向けられる。


「一発で消し飛ばしてやるっ!」


 一際大きい声で明日奈が叫ぶと、脈動している銃口の中では煉獄れんごくとも思える程の熱量を持った炎が収束されていく。収束していくにつれて、腕の脈動は大きく激しくなり腕が痛むほどだ。

 そして、たったの三秒で煉獄と化した炎が銃口から勢いよく飛ばされる。それは弾丸とは言えず、ただ周りに存在するすべての物体を焼き尽くすような火炎球。たった一発なのに一回で戦況を変えかねないものだ。

 轟々と燃え盛り、近くにある木々を一瞬にして灰へと帰させている火炎球は一直線に敵である緑城の生徒へと飛んでいく。


「おっと、こんな凄いものが出てくるなんて見かけに寄らずとはよく言うものだね。あと、僕もそれなりに炎系には対処法を見出してきたわけで、そう簡単には負けないつもりだよ」

「そんな御託は結構よ、その一発はどんなことをしようとしたって消せない。それは決まってることよ」


 火炎球は着実に相手へと向かって飛んで行く。どれだけの熱量なのかは専用の計測器でなければ測れない程の温度だ。

 でも、相手の表情は変わらなかった。依然として余裕をかましている雰囲気はどこから出て来ているのか……。


「いつ僕が一人で君と戦うって言ったかい?」


 十メートルほど離れたところにいる相手の口元がそう動いた気がする。だけど、今はそんなことを気にしている訳にはいかない。この一発が決まれば、この戦況はこっちへと状勢が傾くのだ。

 今決めなきゃ、いつ決めるっていうのよっ! 

 心の中で吐き捨てるように叫ぶと、明日奈自身も大きく一歩、二歩と前進していく。後方からの炎弾の弾幕と、明日奈の何歩も後ろから飛んでくる弾丸が相手勢力へと着実に決められているのだ。この状況を好機としか言いようがないのだ。


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