始まる変化Ⅲ
「どこなんだよ、ここ……?」
何発もの弾丸を受けた一樹は、何事もなかったかのように立ち上がり輸送機から降りていくと周りを見渡して口にした。
いつの間にか自分が知らないところに連れられていたのだ、説明をして貰わないと状況が分からない。
「ここは緑城学園の戦場よ。イッキが変な殻に包まれてからもう一週間も過ぎてるし、明日には私たちも戦闘に参加するのよ」
そして、今の言葉を聞いた一樹は驚きながらも納得していた。今は戦争をしているのだと……周りからは溢れてくるこの殺気立った空気が体を刺してくるようだ。
「それはそうと、一樹君がもとに戻ったってことを学園長に報告しなきゃいけないでしょ」
「確かにそうね……イッキ、学園長に会いに行くからついて来て。その後であたりを確認すればいいでしょ?」
勝手に話は進められていくが、一樹はまだ状況を百パーセント理解しているわけでもないので、付いて行くしかない。
長い道を歩いていると、周りの奴らが一樹のことを見てくる。
それもそうだろうな……俺は学年の底辺だし、ここに居ること自体がおかしいからな。
内心で呟きながら数分間、明日奈達に着いて行くと人が百人は入れそうな巨大テントの中へと入っていく。
「学園長、イッキがもとに戻りました」
明日奈達の視線の先へと目を向ければ、テントの中央にでかでかと置かれている机の上に地図を広げて勾坂と話し込んでいるミカエルがいた。
そして、ミカエルと勾坂が振り向いて一樹を確認すれば、
「一樹君、説明しなきゃいけないことがあるからこっちに来てくれるかしら?」
いつもの不真面目さが無くなったミカエルが一樹へと手招きをして待っている。
それに、まず自分ができることは状況を理解することだけだ。それ以外は今の状況で何もできない。
「今の状況が知りたいみたいだから先に言っておくけど、今は代理戦争中。場所は……さっき聞いたみたいだからいいわよね。まずは、代理戦争のルールについてだけど、本物の弾丸を使わないこと。これは代理戦争であって本物の戦争じゃないから実弾は使用できない。死人が出ないように代理戦争をしてるからね」
「決着はどうやって決めるんですか?」
「それは簡単よ。相手を全滅させるか、敵の大将を倒せば終わり。そして、私たち赤城学園の大将は勾坂君よ」
「大将は僕だからよろしくね」
「ちょっと待ってください。最初に降下していった先輩が大将なら何であの時に降りて行ったんですか!? あの時にもしも当たっていたら、もう戦争自体が終わってたかもしれないじゃない!」
一樹の後ろにいた明日奈が声を荒げたが、
「最初の降下の時は大将を撃とうが、関係ないんだよ。もしも、そこで本当に撃たれていたら終わっちゃうしね。だから、ルールとして降下している生徒達は撃たれても退場にはならない。じゃないと不公平だからね」
と、冷静に勾坂が答えたことで納得する明日奈であった。
「とにかく、今は代理戦争の序章。おそらく後、二日後には終わってる戦争よ」
一通りの説明が終わり、次いで話題になるのが一樹の事だった。
「一樹君自身について話さなきゃいけないことがあるんだけどいい?」
「俺の事……ですか?」
いきなり自分のことを出された一樹は、何で俺のこと? と思うが、さっきまで自分自身が卵のようなものに包み込まれていたことを言われたのでなんとなくだが理解はできた。
「一樹君がなんで能力を使えないのかが分かったのと同時に、貴方自身のことが分かった」
近くにいる明日奈達は静かにその声を耳へと入れていく。だが、一樹自身は自分の能力が使えない理由を知ることが出来る、そう言われた瞬間に体に力が込められた。理由がわかったとしてもその対処法が無かったら能力が一切使えない人間になることを感じた一樹の身体は強張ったのだ。
「一樹君が能力を使えない理由は…………君が人間ではないからよ」
「学園長、なに言ってるんですか……? 俺は人間ですよ……?」
今の一言は衝撃的だった。いや、衝撃的ではなく衝撃だ。自分が人間ではないと言われ、それを「はい、そうですか」などと言えるはずがない。そして、ミカエルは追い打ちを掛けるかのように、
「一樹君が能力を使えなかったのは、君にはすでに力が備わってるのよ。それも私たちと同質の力が半分。要するに、君は天使と人間のハーフなの。だから、私の力を付与しようとしても取り込まれるはずもなかったってこと」




