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始まる変化Ⅱ

 バリバリッという乾いた音が眠っている幸の鼓膜を震わせた。何かが割れるかのような、まるで卵から孵化でもしたかのような音が聞こえてきた。

 体を無理やり起こして目を擦るなり目に入ってきた光景は驚くものだった。

 一樹を覆っていた白と黒で構成されていた卵がボロボロと崩れ落ちているのだ。それもゆっくりと崩れ落ちていくのではなく、まるで倒壊でもしたビルのように一気に崩れ落ちていく。そして、その中からみんなが待ち望んでいた彼が体を丸めて眠っている。


「一樹君……」


 寝息を立てながら眠り耽っている彼の顔は良い夢でも見ているのだろう。優しい感情で満ち溢れた笑顔で眠っている。

 そんな彼を見ているだけ、心配していたこっちも笑顔になる。目の前で眠っている彼へと近づこうとすれば、寝返りをしてきた彼が手を伸ばし幸の手を握ってそのまま引き寄せ、そのまま添い寝をするような形になってしまった。


「―――ッ!!」


 あまりのことなので驚愕が頭を真っ白にさせる。状況が状況で幸の目と鼻の先には一樹の寝顔がある。ほんのちょっと動いただけでも、目の前にいる一樹にキスが出来てしまう。

 でも、これってチャンスなんじゃないかな……。

 頭の中をよぎった思考。それは自分の意志とは裏腹に大きくなっていく。

 すぐ横には一樹がスヤスヤと寝息を立てながら眠っている。今なら一樹を起こさずにキスができる。そう確信した幸は自分の願望に身を任せ、そのまま一樹の唇へと近づけていく。あと数センチ、ほんの数センチで一樹の唇に幸の唇が重なる。

 目を閉じてそのまま顔を近づけていこうとした時、

 ピュンッ、といった何かが飛んでくるような音が聞こえたのと同時に、一樹は体を跳ね起きさせようとした。

 そして、今度こそ本当の驚きが心を支配した。


「んんっ!」


 呻くような声が幸から出てきた。それもそのはずだ。何故なら、


「幸とイッキがキスした…………」


 そう、幸と一樹は唇を重ね合わせたのだ。そして、それを見ていた第三者がいる。だけど、いまはそんなことを気にしている場合ではない。幸が一樹とキスをした。そして、幸と唇を重ね合わせている相手である一樹も目をパチクリさせながら状況を把握しようとしているようだ。

 そして、状況が把握できたのであろう一樹は、キスの相手である私から飛び退いたのだ。多少、残念感が心の中で残ったもの、初めてを一樹にもらえたことが嬉しくなり、そんな気持ちも無くなる。


「さ、ささ、幸!? 今のってどういうことだよっ!?」


 物凄い動揺で体を震えさせながら顔を赤くしていく一樹とは反対に、幸は顔を赤くしながら艶めかしい息遣いと瞳で見つめる。


「イッキ……何、幸とキスしてるのよ……ねぇ?」


 第三者であった彼女、天野明日奈が右手に握っているサプレッサー付のハンドガンを一樹へと向けて、引き金へと指を掛けている。


「おいっ、お前が撃ったから俺が幸とキスしたんだろうっ! もとはと言えば、お前が……」

「問答無用っ!」

「嘘だろっ!」


 それからまたも数度の小さな発砲音が一樹の体を襲ったのであった。


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