干物女と好男子 ~それぞれの諸事情2~
R15は保険です。
あからさまな描写はありませんが、下品な言葉が出てきます。
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こういう人間関係も面白いと思うんだけど、どうなんだろう。
<Side 干物女>
冷静。言い方を変えれば無感動。(超注:猫関係は全力で除く)
基本的に仕事など対外的な事については、冷静であると自負している。
というか、年齢を重ねるごとに無感動になりつつある事は自覚しております。はい…。
けれど、反比例して涙もろさが増すことになるとは思わなんだ。
小学校や中学校、コドモの時の同級生。
当時はまだ“個性”がそれほど認められていなかったにも関わらず、
漫画、アニメ、ゲームが大好きで、堂々と公表し、いつもイラストや漫画をかいていた友達がいた。
それがまた超絶に上手くて、当時人気のアニメキャラクターを描いてもらったりしていたっけ。
そしてそれは思春期になっても続き、現在も基本はそのままだ。
今で言う立派な腐女子、さらにランクアップして貴腐人におなりあそばした。
だが、人並み以上の好奇心、探究心を持ち、並大抵の事では満足しないのが彼女。
人様の作品を読むだけでは飽き足らず、
どうせなら自分好みに作ってしまえ描いてしまえとばかりに自分で同人活動を始め出した。
ブレない彼女の性格、作品は読んだ人にも通じるようで、徐々に固定のファンも増え、
ついには商用誌に連載が始まり、そしてこの度めでたく単行本発売に至ったのだ!!
連絡をもらって、速攻で本屋に駆け込み直接注文、そして本日、ついに単行本をゲット♪
本人は何も言わないけれど、当時はいわゆるオタクに対して今より風当りが厳しかったし、
辛いこともあったと思う。
にも関わらず、自分の好きなことを貫き通し、しかも生業として
飯を食っていけるようになるなんて、なんてすごいんだ!一友人として誇らしいよ!!と
本屋のレジで会計をしているいる間も、既に涙目になっていた。
・・・・・・うん、まぁ・・・。
俗にいうR18・男性向けのエロ漫画本でなければ感動的なエピソードになったんだろうか。
対応してくれたレジのお嬢さんの冷ややかな視線がちょっぴり痛かったさ…。
確かにええ年こいた干物女がエロ本抱きしめて涙目になってるのは
どこからどう見ても怪しいのは認める。
だがしかし!今の私にとってはそのような視線など塵芥に等しいっ!!
それにねぇ。おばちゃんから言わせてもらえば、
お嬢さんも、例えアルバイトだろうが書店の看板をしょった、いわば販売のプロ。
今後はこれしきの事で動じることなく、キラキラな営業スマイル全開でぜひともお願いします。
かわいい女の子はこの世の宝だからね!
気を取り直し、帰宅後すぐに読み始めたけど、
かねてより疑問だった、今まで♂×♂のBL専門だったのに何故方向転換を?と本人に確認したらば
「需要が男性向けのエロ漫画だったから」と実に明快な回答をくれた。
こんだけBL・GL何でもアリなご時世になっているというのに、
需要はNL>BLなの。。。と現実をかみしめつつ、読み進める。
作品は、女性が描いているだけあって、暴力的な性表現ではなく、
いわゆる“らぶえっち”というほんわかしたジャンルだった。
甘っっ。甘酸っぱいわぁ~~~。
涙をだくだく流しながらR18 男性向けエロ漫画を読む干物女。
自分でいうのも何だが、なんてシュールな現場。
それをあのヤローが一部始終をばっちりがっつり目撃していたが、
珍しくどこかおびえたように明らかに遠巻きに見守り始めた。
くっくっく。彼女は本当に偉大だわ。
彼女の前ではテメェなんぞ所詮金持ちのボンボン。飯の種にしかならん。
どーせなら剥いて写メとって彼女に送ってやろうか。
間違いなく大喜びで大絶賛だ。1%性的+99%素材的な意味で。
今の所は美青年・美少年&美女・美少女が多目のようだけど、
ガチムチ大人なリーマンもいずれ組み込んでくることは簡単に予想できる。ふふふ腐腐。
とはいえ、模写させてくれ!(何をとはいわない)とか
プリントできない、いかがわしい写メも頼まれてしまいかねないので
この野望は封印しとくか・・・。ちっ。
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<Side 好男子>
もともと、物事にあまり動じない。冷静、言い方を変えれば冷血ともいえるのか。
職場でもプライベートでも、基本的に他人に対しては
穏やかな好青年を心がけているから、まず問題ないがな。
その俺がかなり内心動揺しているのはどういうことだ100文字以内で説明しろ。
と、おかしな表現をしてしまうほど、動揺している。
しかも100文字ってなんだ。多いだろう。せいぜい20文字だ。
仕事帰りに彼女の住むアパートに寄ったものの、帰宅していなかったので、
食事を用意しつつ、くつろいでいたんだが。
すごい勢いで、しかも涙目で帰ってきたことに文字通り仰天した。
彼女が涙を流すなど到底ありえない…驚天動地な光景だからだ。
何かあったのかと心配になった俺をよそに、いそいそと買ってきたらしい漫画本を読み始めた。
・・・まぁいわゆるオタクというか、漫画とか大好きだからな。
日課である猫動画を差し置いて読んでいる位だ。きっと大好きな漫画なのだろう。
ある意味普段と変わらぬ様子に少しほっとしつつ、なまあたたかい目で見ていた。
のだが。
ふと、目に入ったものに違和感を覚える。
今はやりの漫画本はあのような感じなのか?
表紙のイラストの色合いからして、きらきらしいというよりは生々しい。
俺もどちらかというと童顔に分類される容貌なので、
ナメられないためにも前髪をあげて眼鏡をしているが、これは伊達眼鏡。
視力は両眼とも2.0だ。その2.0の視力をもってしてみても・・・生々しい、というかやたら肌色が目に付く。
目に入ってしまった以上、どうしても気になり、それとなく近づいて横から眺めてみると。
がっつり濡れ場シーンのコマだった。しかもフルカラー。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!」
俺の気配を察知して、だらだら涙を流しながら彼女が振り向く。
「あれ?どうしたんですか?これ読みたい?今はダメですー。
私が堪能してからでお願いします☆」
「違う!!! というか堪能ってなんだ!どこをどうやって堪能しているんだ!?
そもそもこれは女性がターゲットの漫画ではないだろう!?」
「うん。男性向けです。でも友達が描いてる漫画だからさ。初単行本ですよ?買うでしょーよ。」
「・・・まさかと思うが。君が直接書店に行って買い求めたのか。」
「当然です!本屋さんで注文すると、注文書とか書店の人の目にも入るしね。
直接買う方が宣伝になるって聞いたので。」
ちゅ、注文ときたか。この漫画を目的に2回書店に行ったのか。
普段は干物で枯れてヒキコモリに近いくせに、このアグレッシブさはどこから出てきたんだ。
こういう時こそヒキコモリを発揮してネット注文・宅配を使うべきなんじゃないか!?
めまいを覚え、思わず眉間をおさえる。
落ち着け俺。
俺の予想など軽く斜め上を飛び越えて更にまわし蹴りをくらわしてくるのが彼女クオリティだ。
・・・まわりまわって正面、正攻法になっている場合もあるが。
その間にも、作者である友達の話をさくさく進めていく彼女。
もともと頭の回転は早いし、仕事上、簡潔に説明することに長けている彼女の説明で
すぐに、ある程度の状況、ここに至る経緯は把握できた。
でも・・・BLか。やはり君はその道を通ってきたんだな。(遠い目)
「それは偏見ですよ。
だってさ、地球上のホモサピエンスってだいたい男と女の2種類しかいないのに
全員が異性を好むとは限らんでしょ。
人それぞれ、同性を好きになる人だっているのが普通だと思います。」
そうだな。確かに偏見は良くない。
ただし誤解の無いように言っておく。
何やらあやしげな視線をこちらに向けてくるが、俺は世間一般の至ってノーマルタイプだからな!?
・・・・・・・・・・・・・・言い寄られたことが皆無とは言えないが。
「うーん、でも個性とはいえ、猟奇的なのや犯罪系はアウトだよねぇ。
アブノーマルも限度がありますね。
あ。私、猫好きだし、もしかしたら獣姦系はいけるのかもしれない。」
真顔でのたまったこの一言に。
長年培ってきたはずの「冷静」という自己評価が崩れ去ったことは言うまでもない。
お読み下さり、ありがとうございました。 <(__)>