■第6話 なんだあれ
まるでフランス人形のような彼女の口から出た、矢継ぎ早な数々のそれを
タクとヒロオミは再度混乱しまくる頭の中で必死に整理しようとしていた。
見た目と口調が、全く、一致しない。
一致しないにも程がある。
外国映画のパロディで、わざと汚く下品な日本語を吹き替えているかの様な。
彼女のそれが、本当は口パクだったと説明された方がよっぽどしっくりくる。
エベレストとマリアナ海溝ほど高低差が凄まじすぎるそのギャップに、
もしかしたらそれが日本語っぽく聴こえるただの異国語なのかもしれないと、
まるで一縷の望みを託すようにタクの頭を一瞬かすめた。
そして、
『きゃ・・・ きゃん ゆ~ す、ぴ~く・・・
・・・じゃ、じゃぱに~ぃずぅ・・・??』
ゴクリ。
息を呑んで、タクはしずしずと生きるフランス人形に向けて発してみた。
自信の無さと心許無さがありありと声色に現れ、後半失速してかすれ具合が
とめどない。
小さなタクの背中に隠れる、長身の全く隠れきれてなどいないヒロオミは、
その突然の片言英語に思い切りギョっとした顔を向けながらも、再び弱々し
く少女に目を向けその反応を待った。
すると、
『んぁぁあああ??
今まで散っ々、じゃぱに~ぃずぅ喋ってたの聴こえなかったの?!
つか、今だってじゃぱに~ぃずぅ、だろがっ!
どーぉなってんだ、お前の耳っ。
偽物かっ?! 付いてるそれは、ケモ耳の真逆イってるヤツか?!
ある意味、萌え属性としてのシンボライズか?!
1周まわって丁度リアルか?!
つか、なんでもいーから。 さっさと帰れっ!アホ共がっ!!!』
もの凄い早口の巻き舌でまくし立て、その少女はバタンと勢いよく窓を閉め
ると乱暴にカーテンも引き、それは1ミリの外光も入り込む隙ない最初に
見た薄暗い出窓に戻った。
タクとヒロオミ、互いに目を合わせ呆然と立ち竦む。
そして、やっと口を開き発した言葉は、ふたり共が同じ弱々しいそれだった。
『な、なんだあれ・・・?』
『な、なんだあれ・・・?』