■第4話 不機嫌そうな少女
出窓に見えたその影に、タクは大きく仰け反って狼狽えた。
驚き過ぎて声が出ないその口は、金魚のようにただパクパクと開き、
見開いてそれを凝視するその目は、今にも目玉が落ちそうに血走って
ひん剥いている。
突然体をガチガチに硬直させ後退り、ぶつかってきたタクに思い切り
足を踏まれたヒロオミ。
『痛ってぇ・・・ なんだよ?』 しかめ面でタクの背中を手の平で
押し返す。 タクがいまだ声が出せずにガタガタ震えながら指をさす
その先に訝しげに視線を向けた。
するとそこには、薄暗い部屋の中からもの凄い形相で睨んでいる少女
の姿。 ほんの少し開けた出窓には内側に厚手のカーテンが掛けられ、
こんな真昼間なのに閉め切っているそこは、外壁に絡まるツタもあって
暗く陰鬱な感じが拭えない。
『ででででで出た・・・ ででででで・・・・・・・。』
やっと声が出たタク。
それは絞り出したと言っていいかすれ具合で、ヒロオミにしがみ付く
指先の力が強すぎて、その腕にはタクの指の痕が残りそうな程。
さすがに普段は冷静なヒロオミさえも、その姿に一気に血の気が引き
声が出ない。
すると、その不機嫌そうな少女はボソっと呟いた。
『デデデデ、って・・・
・・・浅野いにお、か。 お前・・・』