第2話 相棒とそれから
今回は何故魔法が使えるようになったかと、チート誕生の話です。
「さて、突然じゃが【ホルダー】とは簡単に言えばなんじゃと思う?」
さっきの出来事が無かったかのように話始める一二三教授は目をキラキラさせて聞いてきた。
「はい」
数十秒間の沈黙の後、一人の少女が手を上げた。
彼女の名前は天童 美希。九割組の一人で身長は170cmで髪は黒に、腰まで伸ばした髪をひとまとめにしている。キリッとした目つきが印象的だ。眼鏡をしていていかにも頭が良さそでまさにクールビューティーという言葉が似合いそうな美人だが、馬鹿である。
最近その事でコンプレックスを感じつつある。カップはBで助さんの眼中にない。説明している自分が罪悪感を抱くほど残念美人な人である。
天童さんが一瞬こちらを睨んだように見えたが、気のせいだろう。
「【ホルダー】とは、言わば魔法の杖だと授業で習いました。」
「うむ、その通りじゃ。しかし道具だけでは魔法は発動しない。例外もあるが、そんなのは参考にならんじゃろう。ではどうしたら魔法が使えるのか、この事については約100年前に遡る・・・・・」
〜*〜*〜*〜*〜*〜
約100年前、俺の爺ちゃん婆ちゃんが中学生で父さんや母さんが産まれていない頃。
「奴ら」はやってきた。
この学校でまだ奴らの名前は教えてもらっていないので、自分なりに仮の名前を付けた。
ある昼頃、空に小さな亀裂がはいった。最初は皆んな気づいていない、それか気にしていなかった。
しかし、日を追うごとに徐々に、だが確実広がっていった。
ほとんどの人が気づいた時にはすでにビルを呑み込めるほどに大きくなっていた。聞いた話によると、その亀裂は世界各国にまであるそうだ。
さすがにこのままでは不味いのでは?と思い始めた頃、ついに亀裂が開いてしまったのだ。
そして中から出てきたのは地球には絶対にいないであろうさまざま種類の化物、「奴ら」が降ってきたのだ。
奴らは人を見るなり虐殺していった。人類は反撃を試みるも全く歯が立たない。
生活できる土地も少しずつ減っていき、諦め始めたところで「それ」は降ってきた。
大きさにしてバスケットボールぐらいの光の玉が、化物が出てきた亀裂の中から現れたのだ。
その光の玉はだんだんと膨らんでいき、破裂した。
視界が真っ白になり、目が開けられないぐらいにまでなったが、それは一瞬だけの事だったそうだ。
目を開けてみると、町全体が五層の光のドーム状に覆われていた。
最初は皆んな困惑していたが、奴らが光の中に入れないことから安全ということがわかった。
安全なうちに人類は必死に奴らの対抗手段を探した。しかしなかなかこれといったものがなく、手詰まりになってきていた。
そんな時、上層部はある情報を耳にした。
それは世界各地にミステリーサークルのようなものが無数にあるということだ。
いつ出現したのかはわからないそうだが、とりあえずそこに行ってみることにした。
そこでは確かに情報通りそれはあったのだが、僅かに光っているように見える。
研究員の一人が近づき触ろうとした時、服に付いていたご当地ストラップをミステリーサークルに落としてしまったのだ。
あわててストラップを取ろうとした瞬間、一瞬光がその場全体を覆った。
目を開けるとストラップが宙に浮き、持ち主に戻ってきた。
しばらく全員が黙っていると、
『そなたか?私と契約をするのは』
それが最初の【ホルダー】の誕生だ。
そして1年後くらいにこのミステリーサークルに学校を建てるということが決まった。
〜*〜*〜*〜*〜*〜
「つまり、中身が必要というわけじゃ。しかも昔は長かった詠唱を限りなく0にしたのが今の【ホルダー】じゃ。あの時は苦労したのぅ〜ワシばかりに雑用させよって!全くワシも参加したかったのに!ぶつぶつ」
最初はまともに話をしていたのにだんだん愚痴になってきた。ていうかこのジイさんのけ者にされてんじゃねーか。なんか可哀想になってきたな。
「全くあいつが誘ってきたのがそもそもの問題なんじゃ!ワシはOKだと思い尻をちょっと触っただけなのに変態〜だのクソジジイ〜などと言いおって!ぶつぶつ」
前言撤回、このクソジジイ自業自得じゃねーか!首を吊っていたのも頷ける。
「兎に角じゃ!その「中身」というのは最初に【ホルダー】になった奴が精霊や神などが「道具」に必要という事を教えてもらってついに完成したというわけじゃ!」
最後らへん投げやりに見えたがしっかり説明できているのは流石教授と呼ばれるだけはあるな。変態じゃなければ凄いと思えるのに。
俺がそんな事を思ってるうちにまた話始めた。
「精霊には八つの属性があってな、火、水、風、土、雷、光、闇がある。神だとランクがあって、F〜Sがある。精霊と神は大きな差はあるが、修練をおこたらなければFやEランクの神にはなれる。じゃがCになるというのは努力だけでは無理じゃ。特にSランクの契約者は世界にまだ二人しかおらん」
ふーん、なるほどね。しかしSランクが二人かぁ、絶対に契約したくねぇなー。面倒事は避けたい。はっ!これフラグ!?やっちまったか!?いや、まだだ!まだ契約もしていないのに慌ててどうする。大丈夫だろ。だって二人だけだぜ?ははは、ないない。
そんなことを考えているうちに石垣先生が生徒に指示をだしていく。
「【ホルダー】を起動できる奴とできない奴に別れろ!できない奴はしっかりと見ておけよ!」
そうやって一列を二つ作ったら次々に自分の【ホルダー】を一纏めに魔方陣の中に入れていく。
さて、突然だがここで問題です。
俺以外の九割組、つまり起動に成功した人達が今魔法陣の中に入れている物は一体なんでしょう?
1、ストラップ
2、腕輪
3、木刀
4、カツラ
5、パンツorパンティ
さあ、どれでしょう!
流石に簡単ですよね!あーでも1と2だと迷いますよね?そこで意見が別れると思いますね〜。
では、正解は・・・・・
パンツorパンティだ
え?聞こえない?パンツorパンティだっつの。
俺の気持ちを考えてほしい。
小学生の頃に父さんが遠い国から送ってきた初めての誕生日プレゼント。まねき猫の携帯ストラップ。本当に嬉しかったなぁ。
それを今、パンツの山の中に入れるのだ。
・・・・・
いやだあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだぁ!!!!!
なんでパンツなんだよ!しかもなんで平然とパンツとパンティ一緒に入れてんだよ!!男の衣服と一緒でも平気なのか?しかも女子が真顔で仁王立ちして様子を伺ってるし・・・こいつら全員狂ってやがる
「どうした五十嵐!さっさと入れんか!」
石垣先生が怒鳴ってくる。
そりゃねぇぜカッツァァァン!!こんな仕打ちあんまりだろぉ!!!
しかし、ここで立ち止まっていても始まらないのは事実だ。腹をくくらなければならない。
意を決して魔方陣の中に入れた。
ああ、俺の宝物が。
研究員達と一割組が俺を哀れみの目で眺めている。
最悪の気分だ。
そうやって俺が絶望に沈んでいると、一瞬光が体育館全体に広がり、だんだんとおさまってくる。
九割組の奴らのパンツが宙に浮き、持ち主に戻ってきた。
俺のまねき猫も手・・・ではなく肩に乗った。
『YO!ちみが僕ちんの契約者かイ?』
それが俺と相棒の初めての出会いだった。
いや〜最悪ですね!自分で書いていても罪悪感があります(汗)