Life:12
ついに装備完成。
早朝。
日の登る前に起床。
療養所裏庭でストレッチ。
体操選手並みの柔軟度だが、念を入れて丁寧に行う。怪我、故障防止もさることながら、自分の身体の可動域の確認にもなる。どう動かせるか、どこまでは動くかを身体と頭に染み付ける作業でもある。
その後、療養所外周をジョギング。
1周2km弱(療養所の土地は円形で、端から端まで差し渡し500m位)を5周する。
後半2周は200mずつのジョグ&ダッシュ。
そのまま、息を整えずに型稽古。
心肺機能の強化と、可負荷状態でも戦えるようで無ければならないからだ。
型稽古が終わったら再びストレッチしつつクールダウン。
一連のトレーニングでどこにどれだけ負担がかかったかチェックする。
療養所内で24時間開いている大浴場にザッと入り、村のグラハムの店で朝食。
朝食後、冒険者ギルドで依頼を確認し狩りに出る。
まだ装備が出来ていない為、ブレード系の敵は避ける。ウサギ等の小動物類にもブレードが付くものがいるらしい。
しかたがないので、東側にいるバッファローに似た『突進牛』と『突進猪』を主に狩る。東方だから漢字なのか?
依頼の規定数の分だけ狩るが、修練を兼ねる為、捌き、避け、寸止めを繰り返す。
日が陰る頃、村へ帰還。
ドロップの買い取りの為、武器防具屋へ行くが、閉店状態。リーブラにフレンドチャットを送るも応答無し。
『今、おね~さんはすっごく忙しいのです。ゴメンネヽ(^o^)丿』
なんていう留守番メッセージが返ってくるだけだ。
警備兵のスティーブに聞いてみたが、時々、製作に集中してそうなるらしい。
アイテムインベントリ内なら腐らないとはいえ、死体を持ち歩くのは気味が悪いなぁ。
とりあえず冒険者ギルドへ依頼完了報告。
報告後、受付嬢のアリサ女史と雑談&サポートスキルの相談。
必須ではないが便利という事で、『索敵』と『アイテム鑑定』、モンスター情報を得る『看破』のスキルを取る。
夕食時になったのでグラハムの店で夕食。
途中、警備兵のスティーブが食事に来た時に、グラハムが
「よう、スティーブ」
と呼びかけると、なぜか店内のそこここから笑いが。
スティーブに聞いてみたがはぐらかされた。
療養所に戻りジムとプールで汗を流し、大浴場にのんびり浸かった後、就寝。
これを3日ほど繰り返した後の4日目の夕方、村に帰るタイミングで、リーブラから連絡がきた。
『できたよ~、おね~さん、がんばりましたよ~』
どことなく、というか疲れたボイスチャットだった。急いで店に向かうと、カウンターに乗せた毛皮の塊を前に、リーブラが突っ伏して爆睡していた。
なんとなく起こすのが憚られたが、とりあえずほっぺたをツンツンしてみる。
ぷにぷに。
女性の肌はそれがデフォなのか、リーブラのほっぺも『つるすべ赤ちゃん肌』だった。
「うへへ~♪」
なにやらニヨニヨ笑い出したので、肩をゆすって起こしてみる。
…悪戦苦闘20分、ようやく目が覚めたリーブラはようやっと人語を解する程度には覚醒した。
「出来ました!でも、おね~さんがこれを売るには条件があります」
「条件?」
懸案をクリアしていれば、ケイとしては是非もない。その条件とやらを聞こう。
「療養所側は放免しますが、ゲームサーバー、つまりは村と狩り場では私の装備以外は着ちゃいけません。不満は聞きますが、実質性能以外の改善案の取捨選択権はおね~さんのものです」
「性能が良ければかまわないよ、公序良俗に反しなければ」
王様は裸だったりするのは避けたい。
「それは大丈夫、かわいいから!」
じゃ~んっ!と毛皮の塊に見えたそれを広げて見せた。
「ブレードベアの毛皮を元に、各種機能を盛り込んだ強化きぐるみ、べるちぇるくっ!です!」
「噛んだね」
「噛んでません!」
ドヤ顔で否定する。噛んでるじゃんか~と心中で再度突っ込みながらアイテム鑑定してみる。
『べるちぇるくっ!』防御力180 再生属性 隠蔽効果 非同士討ち
※備考:かわいい、もふもふのふわふわ。敵が触ると痛い。
んで防御力すごい。親熊と仲良くなれる。クマー。
「まんまか!」
珍しくケイがノリ突っ込みした。
「再生属性は、壊れてもなおるヤツね。隠蔽効果は、小熊に見える事、きぐるみだからね。表示タグはPC表示で『べるちぇるくっ!』だよ~。非同士討ちは、敵にはブレードベアみたいな感じで、味方が触るとふわもこなの。おね~さん、がんばった!」
そう言った後、突っ伏すように倒れた。
寝ている。
その日、もうリーブラは目覚める事はなかった。
その寝顔は、『やり切った女の顔」とでもいうべきドヤ顔だった。




