Life:09
LV 5※
筋力値 50(MAX)
敏捷値 50(MAX)
耐久値 50(MAX)
器用値 50(MAX)
知力値 60※
生命力 150※
精神力 100※
※の項目は、今後一般公開されるMO及びMMOのゲーム要素に対応する暫定的なものです。治療に直接は関係しません。
LVが上がった。
あのあと、初心者ポーション1個を消費して手の傷を治し、ブレードウルフの群れをいくつか潰してみた。
その過程で、いくつか検証してみた。
結果判った事は、このクラスの敵と戦うときは、少なくとも敵と接する部分は自前の肌では身が持たないという事だ。
昨日立ち木を打った時に分かった事だが、どうやら皮膚の角質化はしないらしい。
再生過程で、酷使した部分が厚くなっても良さそうなものだが、アバターの値に戻る仕様上、そのあたりの変化もないみたいだ。
治療後の身体に関しても、空手家の拳タコは言うに及ばず、遺伝子治療前に分厚かった所やタコ、マメ等も綺麗さっぱり無くなるらしい。
じっと手をみる。
控え目に言っても『つるすべ赤ちゃん肌』である。
手だけではない。足もだ。
1度試しに裸足になった上で手に靴を被せて戦ってみたが、砂利や石に皮膚が耐えきれなかった。
結局、そのままでは機動力が落ちてどうにもならなくなる事が分かっただけであった。
ブレードウルフとの戦闘でも、打つ場所や打ち方を工夫してみたが、素手ではどの道手足の切り傷でだんだんと動きが鈍っていくだろう。
最低でも手甲、脚絆は必要だ。
適当な物が売っていれば良いが、そうでなければ作るしかないだろう。
試し、戦う事、数刻。
回復アイテムも残りは初心者ポーション8個、初心者バンテージ2個になっていた。
すでに森の際が見えない程度には奥に来ていた。
そろそろ日も陰り始める頃合いにはなっているはずだが、立ち込める靄とうっそうと茂った木々がそれらを覆い隠している。
ぞくぞくと背を這い上がるものがあった。
木々の密度は5mより狭い所はなかったが、枝の張り出しが良いのか陽の光は差し込んでこない。
その薄明かりが滲む様に凝り固まったのがそれだったのか。
気付けば、そこに、いた。
『ブレードベア LV2』
頭上の赤いタグで正体は知れたが、その醸し出すモノからすると空虚でさえある。
渦巻く靄が戦いの始まりを告げた。
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その日リーブラが店の裏庭のハンモックで午睡を楽しんでいると、店内のカウンターにしつらえたベルが涼やかな音色をあげた。
どうやら常連以外の客が来たらしい。
寝ぼけまなこで身体を起こせば、もう夕方と言っていい時間だった。
現実ではありえない真っ赤な髪をかきあげて大きくのびをする。
無粋な作業着姿ではあるが、上から3つも外したボタンと、その合わせ目から覗くふくらみがアンバランスな色気を漂わせている。
武器防具屋のNPC契約者で、ほぼ唯一の常駐生産職として有名な彼女は、午後は午睡している事でもよく知られていた。
「はいは~い」
裏木戸から作業場を通り、店舗カウンターへ続く扉をあけると、顔見知りの警備兵と見知らぬ少女が立っていた。
「よお、もしかして、まだ寝てたか?お客さん連れてきたぞ」
「おは~、スティーブ、そんな装備で大丈夫か?」
「いや、俺のは警備兵のお仕着せだって。それよりこっちの嬢ちゃんが…」
「一番いいのを頼む」
ドヤ顔のケイだった。
こうしてお約束は為されたのであった。
「とはいえ、御予算しだいよ~、えっと」
「ケイです」
「うん、ケイちゃん。素材持込みなら、その分勉強できるけどね」
道案内だけだったのか、警備兵スティーブは手を振って辞していった。
「素材の買い取りもここでしてくれると聞きました。諸々まとめてお願いします」
ペコリと頭を下げる。未だ入院着のケイは、はたからみても狩りをして来たとは到底思えない。
とはいえ、求めに答える職務である。リーブラもそこのところをおろそかにするつもりはない。
「えっと、買い取りはなにかしら~?びっくりするよね、ドロップがまるまる死体一匹って。でもまぁ、生産系の職能だと、上質な素材の剥ぎ取りができるのよ。これはNPC契約したPCが行使する以外に、そのPCから習う事も出来るのよ。熟練度はあるけどね」
話しながらトレードウィンドウを開く。これにより、一時的にドロップ品が譲渡されるのだ。
ピコン。トレードウィンドウにアイテムが落しこまれる。
『フィールドウルフの死体』5個
「お?」
『ブレードウルフの死体』86個
「おぉお?」
『ブレードベアLV2の死体』1個
「はあぁぁぁああ!?」
「少しはいいものが出来ますか?…なんか、ボロボロにやられちゃって」
半ばパニックになりながらも、リーブラはドロップアイテムに記された所有者タグをチェックする。
譲渡履歴は無い。と、すれば、これらをこの少女が倒したのだ。でなければドロップ品として拾得することは出来ない。
「ボロボロって、何に?フィールドボスとでも殴り合った?あ、フィールドボスは大猪ね」
「その熊です。負けました」
「勝ってるじゃん、倒してるじゃん!」
なにやら落ち込むケイに、リーブラは突っ込みを入れる。自分の恥をさらすように話す少女に、リーブラの理解は追いつかない。
「ん~、んじゃ、復唱して。『バトルログ共有』!」
「『バトルログ共有』」
復唱するケイ。このコマンドにより、ケイがどんな戦闘をしてきたか、リーブラにも閲覧できるようになったのだ。
早ければ今夜中、…むりかな、寝ちゃうかも。
少なくとも明日にはもうひと更新予定。




