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2013年・2014年

エゴ6聯

   他人の吐いた酸素



たとえ自分自身の核があっても

いつかは破壊され持っていかれるのだ

名もない餓鬼どもに連れ去られるのだ

そして記憶をすべてうしなって

聾唖者となって逝ってしまうのだ

睡り呆けた無力な赤ん坊のように

安全な場などどこにもないのだ

世の中、砂みたいな愛情ばかりで

噛み潰しても痛みはない

倒れそうな廃ビルも

乱暴に犯すあなたも

傾倒した昭和作家も

流れっぱなしの想いもついには涸渇した

身体の奥底から湧いて出てくる空っぽの感情

涸れ果てた肉体のうねり

息ができるだけでそれだけなのだ

呼吸をして他人の吸った酸素を取り入れる

それだけが自分が生きてる証なのだ

けれども

逆説的に僕だけの酸素はどこにもないのだ

結局は他人の吐いた酸素を吸って生きている

どこに行っても他人がいるのだ!

それに気づいたとき

僕は赤の他人にまみれて

消えてしまったよ

























   ジキルとハイド



僕はジキルなのか

俺はハイドなのか



























   かみさまとわたくし



このまなこにうつるすべてのできごとは

ほんとうにてんにましますかみさまが

みているものとおなじなのでしょうか

せかいでもっともみにくいわたくしは

ほんとうにじぶんじしんをもっていいのでしょうか

わたくしのからだもこころもたましいも

すべてかみさまにささげているのです

わたくしはやみもひかりももちません

たしかななまえをもっていませんでした

わたくしにあるのはてっていてきな罪だけなのです

かみさまに罰せられることだけをねがっています

しんでようやくわたくしはわたくしになれるのです

そしてようやくわたくしはわたくしになれました

ありがとうございましたかみさま



























   賢者



この世のすべてを悟ったとき

あなたはあなたではなくなる

あなたこそが世界になってしまう

賢者とはそういうものだ


























   たった一度しぬだけで



ながいあいだ

見えない何かの侵入で

崩れたものがある

積重なる砂の粒の

限界がついに来た

死へ駆り立てる

廃したこころ

もはや

冷えた身体を温めてくれる

機械はない

守ってくれる壁もない

押し寄せてくるのは

目にはうつらない

致死量の悪意

たった一度しぬだけで

たった一度しぬだけで

この苦しみからぬけだせるのだ

すべてを解放して

しんでいきたい






























   人々よ静かに生まれたまえ



奴隷にも心はある

殺人者にも心はある

一国の王にも心はある

傷ついた人にも心はある

神を信じる人にも心はある

病気になった人にも心はある

平和を望まない人にも心はある

たったいま死ぬ老人にも心はある

生まれもしない子どもにも心はある

そうだすべての人間には心がある

まだ見ぬひとびとにも心がある

もちろんわたしにも心はある

そしてあなたにも心はある

人々よ静かに生きていけ

その心を大事に持って

静かに生まれたまえ








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