第三話:突然に
いつものように待ち合わせをし、デートをし始めたジュンとユウ。しかし、デートも終盤というところでユウが苦しみだし・・・
ジュンは振り返り、ユウが倒れているのを確認すると
顔を真っ青にし、あわてて駆け寄り、彼女の体を抱きかかえた。
「おい、ユウ!ユウ!!!」
子犬のように震えるユウ・・・
「ごめんなさい・・・」
「え?」
胸を押さえ、激痛が体中を襲っていたが、
それでもユウは無理に笑顔を作って言った。
「モウ駄目みたい・・・」
覚悟はしていた。
あの日から、この日が来ることはわかっていた。
それが今日かもしれないと、いつも思いながら・・・
でも、でも何で今日なんだ・・・!
「まだ死ぬな!俺たちはまだやってないこといっぱいあるだろ?
二人っきりで旅行にも行ってないじゃないか!ディズニーランドにだって・・・」
死を否定するようにユウのけいれんする手を必死に止めた。
それしかできなかった。
「いいの・・・もう十分ダカラ」
もう時間がない。
瞳があの日と同じように生気を失っていく・・・
思わず涙を溢れさせながらジュンは言った。
「俺はユウが好きだ!愛してる!だから俺と・・・」
「私も涙ヲ流シタかったナア・・」
視界が黒くかすんでゆく・・・
ジュンの泣き顔が歪んでいく。
これが死か、と思いながらユウの意識は次第に薄れていった。
ふと雨の音がした。
にっこり笑ったジュンが自分に話しかけている。
一つ一つ温かい言葉が自分を癒すのがわかった。
気付けばあんなに澱んだ空は晴れ渡っていた。
これが「走馬灯」というやつか。
でも最期にコレが見られて良かった・・・
―ぷつん―
テレビの電源が切れるような音がユウが聞いた最後の音だった。