表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

独身女性の葛藤

独身女性の夢・希望

作者: どた

女性の幸せってなんでしょう?

「夢・希望、ありますか?」

新聞の広告に、そう書いてあった。


夢。

希望。


なくちゃいけないの?

真奈美はつぶやいた。

夢・希望なんてない。


真奈美は38歳独身。1人暮らしだ。

趣味も特技も資格もない。

彼氏はいない。いたのはいつのことだっただろう。

真奈美自身、考え込まないとわからないくらい月日が経っていた。

毎日、職場と古いアパートとの往復。

マンションをローンを組んで購入しようかと思ったこともある。

だが、この地に骨を埋めるのかわからない。

躊躇して、今に至っている。

結婚・出産も、したいともしたくないとも思わない。


ただ、生きているだけ。

それが今の真奈美だった。


7月の日曜日だった。

真奈美が、これからどう過ごそうかボーっとしているときに、インターホンが鳴った。

真奈美は、どきりとした。

昼間とはいえ、女性の1人暮らし。

「怖い」

おそるおそるのぞき穴から外を窺う。

見知らぬ中年の女性が立っていた。

女性ということもあって、真奈美は恐る恐る玄関のドアを開けた。


「こんにちは」

中年女性が真奈美に微笑んだ。

母親のような優しい笑顔だった。

「あの…ご用件は」

真奈美は恐る恐る聞く。宗教の勧誘かもしれない。

真奈美はセールスなど、断るのが苦手だ。宗教の勧誘も断るのは苦手だった。

「これ、あなたにプレゼント」

中年女性は、真奈美にリボンのかかった箱を見せた。

「大丈夫よ、爆弾じゃないから。怖いなら、私がここで開ける?」

中年女性は、真奈美の用心深い性格を知り尽くしているかのように言った。

「スミマセン、私、怖がりで…」

真奈美が言い終わる前に、中年女性は包装紙を慣れた手つきではがし始めた。

真奈美は黙って見ていた。


箱から出てきたのは、スカーフだった。

ベージュに近いオレンジ色の、鮮やか過ぎない落ち着いた、品の良い色だった。

「キレイ」

真奈美はつい、口から出た。

「今のあなたに必要なものよ」

中年女性はそう言って、真奈美にスカーフを手渡した。

真奈美があっけにとられていると、中年女性はじゃぁね、とドアを閉めて去って行った。

慌ててドアを開けたが、中年女性の姿はどこにもなかった。

「いいのかな、もらっちゃって」

真奈美は、そのスカーフが気に入った。

今すぐにでも、身につけて、散歩したい気分になった。


そうだ。このスカーフに似合う服でも買おう。

真奈美は最近服を買っていなかった。

老後が心配、とお金を使えなかったのだ。

だが、真奈美はスカーフを手にし、そんな気持ちは吹き飛んでいた。

持っている服の中で、スカーフに似合う女性らしい服を着て、真奈美はデパートに出かけていった。

デパートではちょうど安売りをしていた。

拍車がかかった。

バックや靴も買ってしまった。

買ってしまうと、真奈美も38歳とはいえ、女性だ。身につけたくなる。


そして、出かけたくなった。

外出が多くなり、知人が増えた。


その後、男性との出会いも増えたが、やはり結婚はしなかった。

シングルなんて怖くない。

今、真奈美は、幸せである。

45歳、独身。

夢・希望、具体的にはない。

でも。

だから何?

今の生活が楽しい。幸せだ。

この生活を続けることが、夢・希望、なのかもしれない。

真奈美を結婚させようか迷いました。

女性の幸せ。

人それぞれですよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ