表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春隣  作者: 桜木結実
5/23

第五話 真実の破片(2)

 和馬がいなくなり、部屋の中はまた、将一、英樹、敏郎、吉住の四人になる。

「渡部。さっきの広瀬の話を、どう思った?」

「特に不審な点は見当たりませんでしたが」

「話はな。俺が気になったのは、広瀬の話し方だ。やけに淡々としていなかったか?小早川はどうだ」

「そうですな。まるで感情を表に出さないように、自制していたかのように見えましたな。原口のやったことを考えれば、もう少し軽蔑や嫌悪が出た方が、確かに自然ですな」

「では、広瀬を張るか?」

 英樹に言われ、将一は少し考える。

「いや。状況をみてから考えよう。目星をつけている奴らを押さえるほうが、先だな。ただ、釈然としなかっただけだ。おまえ達もご苦労だった。持ち場に戻ってくれ」

 そう言って将一は、扇で肩を数回たたいた。そして頭の中にある、数十もの解決しなければならない用件に、優先順位をつけ始めた。


「広瀬さん、遅いね」

「そうだな」

 和馬が将一に呼び出されたので、海神への出発が延びている。雪菜は直也と一緒に門の近くで座りながら、和馬を待っていた。

「広瀬さん……。何もしていないよね」

「……」

「直也?」

「今の段階では、なんとも言えない。ただ、もしも原口の死因に広瀬さんが関わっているとしたら、それには余程の理由があるからだと思う」

――直也、否定はしないんだ……。

 直也のこんなところ、冷静で頼れると思うけど、ちょっと冷たいな、とも思ってしまう。

 だって、普段あんなに仲がいいのに、どうして絶対にやっていない、って言い切らないんだろう。もしもあたしが何かに巻き込まれても、今みたいに冷静でいるのかな……。

「待たせたな、直也。悪い悪い」

 和馬の声が近くで聞こえた。いつも通りの和馬が、名波を曳いてやってくる。

「あれ、お姫さん。直也のお見送りですか?」

「うん。広瀬さんも気を付けてね」

「どうも。いただいたアメ、ありがたくご馳走になりますよ」

 和馬は笑いながら雪菜に手を振った。直也は馬に乗って、じゃあ、とだけ言う。

 前から気になっていた直也のそっけなさが、やけに雪菜の不安をざわつかせる。

――そういえば、直也ってあたしのこと、どう思っているんだろう。嫌われているとは思わないけど、もしかして迷惑なのかな。だから、そっけないことが多いのかな……。

 その考えが、雪菜から無邪気な笑顔を奪う。

――あたし、ちゃんと笑えているかな。変な顔、していないかな。

 そう思いながら、雪菜は直也と和馬に手を振った。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ