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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第五章 新しいはじまり
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紹介します4

執行官同士で戦闘開始

「ほう、俺ら全員に対して、啖呵切るって。オモシレェぞ」

 真っ先にユヅルの挑発に乗ってきたのは、席次の九にして、彼に戦い方を教えた男性、ウインド。


「世界の広さを教えてあげる必要が、ありますよねぇ」

 そんな彼に便乗するように立ち上がったのは、席次の十にして、ウインドの相棒を勤める女性、レイブン。


「声を出して、相手に位置を悟らせるなんて、愚の骨頂だ」

 しかし、そんな二人よりも彼の動きのほうが早く、鋭い。対象を、沈黙させるという、純粋すぎる目的で動く彼を、単純な戦闘力で止められるものは、


「拙者が、お相手するでござるよ」

 長刀で、ユヅルの刀を受け止めたのは、席次の一にして、盲目の女性、鳳センザ。そして、その横で爆発が起き、彼は瞬時に自分の周囲を再確認する。


「いやはや、こういう歓迎をするつもりはないんだけどね」

「しょうがないどすなぁ、ほんまに」


 そんな彼に追撃のように放たれた、雷の槍。それを刀を投擲し、避雷針代わりにして逸らした彼は、

「ケイオスにフジノ、か」

 ただ、確認するように二人の名をつぶやく。


 コレで戦況は、五対一。

 圧倒的不利な状況でありながらも、彼の表情には一切の変化がない。


「兄様、私もいます」

「ああ、だろうな」

 彼の周囲を取り囲むように疾走し続ける水の糸。その一本一本が加速し続けている為、触れれば、ダイヤモンドですら切断することが可能だろう。しかし、

「甘いんだよ、覚悟がな」


 彼は、それを気にすることなく通過しようとする。そして、その行為はハイドレンジアの脳裏に、結果だけを連想させる。よって、解かれる包囲網。


「相手を殺すことを躊躇うな、そう、言ったはずだ」

 その言葉と共に振り下ろされた刀。しかしそれは、遠距離から放たれた矢によって逸らされ、死角から繰り出された槍の一撃で、彼は後退を余儀なくされる。


「イジーにマリー」

「そうよ、ダーリン」

「だんな様が相手でも、容赦はしません」

 戦況は変化し、八対一。


 っというよりも、レベッカを除き、荒事専門の執行官全員の戦闘である。下手をしたら、この場所が焦土となってもおかしくない。


「あの、秘書官、この場合、どうすればいいのでしょうか?」

「そうですね」

 そこで一度、エカテリーナは言葉を区切り、首をひねった後、


「あそこまで冷静にブチキレているハイドマン執行官をみるのは、私も久しぶりです。ですから、どうしましょう」

「いや、どうしましょうって、先輩は力の大半を失っているんですよ?」

「ええ、それは私も聞いています」


 先日の一件で、ユヅルの力はかつて程、脅威ではなくなっている。今なら、執行官同士の戦闘でも、敗北するかもしれない。


「ですが、力の大半を失っていようと、私には止められません」

「冷静に言いますね」

 エカテリーナの戦闘能力は執行官の中でもクローデルと一、二を争うほど低い。だが、


「むしろ、この状況でも、彼の敗北はないでしょう」

 続く言葉を聴いて、レベッカは首をひねってしまう。


「それ、どういうことですか?」

「ああ、そうでした。あなたは、彼と単独で戦闘して敗北していましたよね、確か」

「はい」

 彼とはじめてであった時のことを、思い出し、レベッカは居心地悪く答える。


「ですが、恥じることはありません。席次の九と十は別として。他の執行官は、彼の強さを嫌というほど体で理解しているはずです」

「まさかっ?」

 そこで、レベッカはある結論へと考えが至り、


「そうです、あなたの考えどおり、彼らは一度、ハイドマン執行官に敗北しています。それも、彼が星装具アストラルを使う前に」

 その言葉を聴いてしまう。

「単純な戦闘能力で言えば、席次の一、速度で言えば、席次の九、連携で行けば、席次の三と六。彼を打倒することは、不可能とは言いません。それぞれ、勝っている部分で、押し切ればいいのですから」


 そして、彼女はヒサノへと耳打ちし、

「でも、それって、成功するんですか?」

「おそらく、あなただけしかできない方法です」

 疑問符を浮かべたまま、ヒサノは戦闘が行われている場所へと足を踏み入れていく。


「いま、何を言ったんですか?」

「秘密です。それよりも、急ぎたまえサウザード執行官。彼女を傷つけたら、矛は君のほうへ向く可能性もあるんだよ?」

「この、鬼っ」

 罵倒しながら、レベッカはヒサノの後を追って戦場へと足を踏み入れる。


「面白そうだな、エカテリーナ?」

「変な言いがかりはよしてください、局長。むしろ、あなたが軽率に動かなければ、このような事態に発展しなかったんですから」

 復活したアレグリオだったが、エカテリーナに厭味を言われ、その巨躯を若干小さくさせる。

「さて、上手くいけばいいのですが」


◆◆◆◆◆◆◆◆


 戦況は、八人の執行官を相手取りながらも、彼の優位的状況で展開されていた。それもそのはず、ユヅルは彼らと戦い、勝った経験があり、彼らの攻撃方法や心理、そういった戦場において有利に動く要因を知り尽くしている。


「テメェら、残念すぎるぞ」

 それは、この戦いを終わらせる一言に他ならない。だが、その彼の右側から放たれた攻撃により、彼は若干、声のトーンを下げる。


「お前も、混ざるつもりか、レベッカ」

「流石に、コレは洒落になりませんから」

 彼に襲い掛かってきたのは、レベッカの魔弾。それでも、ユヅルにしてみれば、殺すべき、殲滅する対象が一人増えただけのこと。


 だが、レベッカにしてみれば、彼の動きを一瞬でも止める。それが目的であり、終着点。

「ゆ~君、ダメですよ。私を紹介してくれるんじゃ、なかったんですか?」

 後ろから、彼に抱き着いてきたヒサノ。

 どうして、この場に一般人がいるのか。その思考は、戦闘をしている執行官全員に、困惑を植え付けるには十分すぎる。しかし、


「ああ、そういえば、そうだったな」

 彼ら全員の予想を裏切り、あっさりと、ユヅルは殺気を収めてしまう。これは、その場にいる全員が、自分の目を疑ってしまう。


「こいつは、春日野ヒサノ。俺の女だ」

 乱暴すぎる口調で、ヒサノのことを紹介するユヅル。この状況下でも、彼女が全員の死角になっているのは、流石というべきだろう。


「彼女?」

 最初にその言葉を聴いて、疑問符を口にしたのは、冷静さを欠いていないケイオス。そして、


「「「「「「「彼女ぉ」」」」」」」

 その言葉は、全員の思考を戦闘から、驚愕へと塗り替えるには十分すぎるほどだった。



最強を覆すのは、いつだって最愛

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