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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第五章 新しいはじまり
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第十七話 紹介します1

前回でようやく、第一部が終了した感じです

「ああ、そう言えばあの家でたんだよな、俺」

 目覚まし時計の時間を確認し、カーテンを開けたユヅルは、タバコに火をつけながら、換気扇のスイッチを入れる。

 学園祭終了から二日目。

 神宮寺家を出て、引越しが終了したのが先日。そして、この国に着てから始めて一人だけの朝を迎える。

「めし、どうするかな」

 今まで朝食は準備されていて、日本に来る前は職員専用の食堂で済ませていた。つまり、料理をする必要などなかった。だが、これからはそうはいかない。一人暮らしをし始めたのだから、自分のことは自分でやらなければならない。

「まぁ、その前に必要なのは、調理器具だよな」

 改めて室内を見渡し、ユヅルはため息をつく。突発的に決めたこともあり、この部屋には、冷蔵庫と洗濯機、それ以外の家電製品すらない。食器などあるはずもないのだ。

「やることがない一日は、退屈以外のなにものでもない。そう思ってたけど、意外にやることは多いみたいだな」

 学校が休みに入り、執行官としての仕事も差し迫ったものはない。故に暇。だが、暇を満喫していれば、生活に支障が出てしまう。

「ってことは、やることは決まったな」

 タバコの火を灰皿に押し付けて消し、出かける準備を始めるユヅルだった。


「それで、なんでいるんだ、二人とも?」

「告白して二日目の恋人を放っておく彼氏は、どうかと思います」

「相棒って言ってくれたじゃないですか、先輩」


 新しいタバコに火をつけ、玄関のドアを開けた瞬間、ヒサノとレベッカに待ち伏せされていたユヅルは、軽くため息をついてしまう。


「いや、まぁ、そうだけど。俺、これから買い物に行くんだが」

「じゃあ、ついていきます」

「一緒に行くに決まってるじゃないですか」


 二人は打ち合わせでもしていたのだろうか、息ぴったりに即答してくる。そんな二人を無碍に扱うこともできず、ユヅルはそのまま二人を引き連れて買い物へ。


「それで、ゆ~君。本日のお買い物は?」

「電子レンジと、調理道具一式。後はエスプレッソマシンが欲しいところだ」

「先輩、それって一人暮らしするとき始めに買うものですよね?」

「まぁ、そうなんだが。あっちいたときも、こっちにきたときも。必要としてなかったから持ってないんだよ。そもそも、料理自体あまりしないし」

 

 そう、ユヅルは料理人を尊敬している。それは、彼自身、自分の分だけの食事を作ることに面倒さが勝ってしまうゆえ。そして彼は、器用な割りに、興味のないことに関しては、とことんずぼらというか、やる気を示さない。つまり、食事を作るという環境が始めてなのだ。


「先輩、それじゃ、今度料理つくりに行きましょうか?」

「いや、遠慮しておく」

「どうしてですか?」


 改心の一撃、っといえる言葉を持ってきたレベッカだったが、それを拒否され、予想を裏切られてしまう。


「それなら、真っ先にヒサノに頼むし。ついでに言うなら、おまえの料理の腕を、俺は知らない」

「嬉しいです、ゆ~君」

「酷いです、先輩」


 はやくもバカップルぶりを発揮しそうな二人を、若干恨めしそうな気持ちで見つめるレベッカ。そんな時、ユヅルの携帯が振るえ、


「はい、どちらさん?」

「どちらさんって、君、番号登録してあるんだから、いい加減、液晶見ずに出るのやめようよ」

 ケイオスのため息交じりの言葉が耳に響いてくる。


「ああ、悪い」

「それは、欠片も悪いと思っていない人間のせりふだよ、ユヅル」

「意外としつこいな。それぐらいサラッと流せよ。しつこい男は嫌われるぞ」

「君に好かれるのは、正直、ゾッとするね」

「言うようになったじゃねぇか」


 会話が英語で行われている為、ヒサノは意味がわからず、レベッカは会話の内容がわかっていても、相手がわからないといった状況。


「そんで、用件は? 無駄話する為に連絡入れてきたわけじゃないんだろ?」

「当然だよ、君」

「次あったら、出会い頭に殴るぞ、お前」

「ごめん。それじゃ、本題に入るよ。君、いつこっちに帰ってくるの?」


 ケイオスの言葉を聴いて、

「何言ってんの、おまえ?」

「いや、ドイツでのお仕事が終わって、局長に帰るって、君言ってただろ?」

「ああ、確かにそんなことを言ってた気がする」

「曖昧な記憶だね」


 自分で言っていた言葉なのに、最近、ユヅルの周りでいろいろな変化が怒涛のように押し寄せてきていたので、彼自身、すっかり忘れていた。


「そっちに、サウザード執行官もいるだろ? 一緒に帰ってきなよ」

「ああ」

「近いうちにとか、そういう言葉はなし。君がそういうことを口にした場合、一向にやる気配がないから」

「付き合いが長いと、邪推してくるから嫌だよな」


 そこで、一度ユヅルは思考を切り替え、

「明日、連絡するから、それまで待っててくれ」

「どういう風の吹き回し?」

「こっちにもいろいろあるんだよ」

 そう言って携帯の通話を切る。


 そして、ヒサノとレベッカの二人に対して向き直り、

「そんなわけで、年末年始はロンドンで迎えることになりました」

「「はいっ?」」

 彼の言葉の意図がわからず、頭上にハテナマークを浮かべる二人。


「ちなみに、二人とも連れて行くので、今日はその準備もしたいと思います」

「どういうこと?」

「説明が欲しいです」

 そんな二人に対して、

「ちょっとした、大人の都合って奴だよ」

 曖昧な言葉で濁すユヅルだった。

いざ、ロンドンへ

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