Happy Birth Day4
最後の戦いへのプロローグ
「驚いたか、まぁ、無理もないだろうけど」
雑談でもするようにシロウは、特に重大なことではないといった感じで軽く、
「でも、事実は事実だからな」
タバコの煙を吐き出すものの、周囲の人間は言葉を紡ぐことができずにいる。
「そうそう、俺がこの場所に現れたのは偶然ではあるが、必然ではない。ちょっとした裏ルート、いうなれば、隠しダンジョンみたいなものだ」
「何を、言ってる?」
ようやくユヅルが口にできた言葉はかすれ、弱弱しい。
「四つの星装具が一人の手に渡ったとき、星の皇が光臨する。そのとき、人が今まで築いてきた治世は終わりを告げる」
タバコの煙を吐き出し、シロウはいつものような笑みではなく、冷笑を浮かべ、
「星の皇は、俺と同じ神であり、この星と同化した者。故に、人間に対する憎しみというものが非常に大きい」
「どうして?」
「当たり前だろ。人間がこの星に対してしてきた行いを振り返ってみれば。有史以来、この星に対して、人間は終わらない拷問をしてきていると同じなんだから」
カズキの問いに、当然、そう告げるようにシロウは答え、
「星装具は、この星に存在する人間たちに対する警告。そのために俺が創った。それなのに、どいつもこいつも勘違いしてるから、どうしたものかと思ってな」
シロウが言うには、星装具は本来、四つの形を持つものではなく、一つであり、それを彼はあえて四つの形にわけ、悪魔、天使、聖獣、邪龍に接続できる装置としての意味を与えた。それは、膨大な力を制御する為のものではなく、武器としてではなく、人として星の魂に接する。そういった意味合いを持たせただけのこと。それを、人間は、星に選ばれたと勘違いし、強力無比な兵器と勘違いして使用してきた。
「おそらく、星装具は、もうすぐ本来の姿へと戻ろうとするだろう。そうすりゃ、星の皇が目覚める」
「回避する方法は?」
「ないな」
ヘキルの問いに対し、彼は無残にも切り捨てる。
「それにしても、どうしてお前ら人間って奴は、すぐに逃げる方法を模索しようとするんだ? そこが俺には理解不能だよ」
「勝てない相手なんだろ?」
「多分な」
どこか含みのある口調で、シロウは答える。
「なら逃げようと考えるのは、むしろ、当然じゃないのかな?」
カズキの言葉を聴いて、大声あげて笑ったシロウは、次の瞬間、振り下ろしたこぶしで、机を粉々に粉砕していた。
「おかしいな、俺が戦いに対する信念を教えたガキ共は、こんなに馬鹿だったはずはないんだが?」
「あなたは、兄さんは確かに、いろいろなことを教えてくれた。その中でも、決して死ぬなという言葉を、教えてくれたことを僕は忘れていない」
熱弁するカズキに対して、シロウは、
「ああ、教えたな。だが、お前らは死ぬということを勘違いしている」
「どういうことだ?」
「まったく、一から十まで説明している余裕はない。いいか、敵は強大、こっちの戦力はジリ貧、おまけに時間制限つき。そんなとき、俺はお前たちにどうしろと教えた、諦めろと教えたか?」
シニカルな笑みを浮かべて二人に対して問う。それに対して、
「「頭を使って、策をひねり出し、相手の裏をかいて生き残る」」
「そうだよ。わかってんじゃないか。そんで、ようやくスタートラインに立てそうなお前たちに、一つアドバイスをしてやる。戦う前から諦めるような愚考はない。お前らの前に、誰がいるか、思い出してみろ。鳥頭だってわかるぞ?」
答えを聞き、新しい選択肢を与えるシロウ。その姿は確かに、絶望を希望へと変化させる神と言う言葉がよく似合っている。
「まさか」
「そう、そのまさかだ。俺が手を貸してやる。だが、正面きって喧嘩を売るのは俺の役目じゃない。お前たち、人間じゃなきゃならない」
「それで、勝てる相手なのか?」
「馬鹿が。勝てる勝てないじゃない。勝つんだよ」
「ああ、確かにその言い分のほうが兄貴らしい。でも、具体的にどうやって?」
ユヅルの問いに対して、
「コレをくれてやったガキ。そいつは、自分の大切な者を守るためなら、命すら投げ出すような奴でな。自分が傷つくことを恐れやしない。だが、決して諦めたりもしない」
そこで一度言葉を区切り、
「ホントだったら、あいつにはいい加減、まともな生活をおくらせてやりたかったんだが、そうもいかなくてな」
タバコの煙を吐き出した後、
「神を打倒する事ができるのは、限られた人間だけだ。だが、あいつは凡人でありながら、信念だけを武器に、それを成し遂げた」
「それって、まさか」
「そう、お前らに紹介しようって奴は、俺に敗北の味を噛み締めさせた、クソガキだ」
短く、楽しげに伝えてきた。
次回は、シリアスパートを抜けます