表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第三章 執行官の誇り
41/106

天使光臨7

ようやく長かった三章が決着

「ふむ、完全に始末をつけたとおもっていたんだがなぁ」

 異端審問局本部、『黒金の檻』。その局長室で、冷めたコーヒーを口に運びながら、部屋の主、アレグリオ・ハイドマンは提出された書類に目を通し、机と放り投げる。

「あいつは、どうした?」

 書類を提出した男性、ケイオスへと声をかけ、彼は椅子を回転させて、視界を外へと向ける。

「なんでも、急いで帰らなければならない用事があるとのことで、日本へと今日の飛行機で帰っていきましたよ」

「顔ぐらい見せていけばいいものを」

 少し寂しげに、アレグリオは言葉をため息と共に吐き出す。

「今回の件に関して、処罰を受けるものは一人としていない。これは私の決定だ。以上、下がりたまへ」

「はっ」

 短い返事と共に敬礼し、ケイオスは室内を出て行こうとするが、ドアノブをまわしたとき、思い出したことがあったのか、振り返り、

「局長。ハイドマン執行官の伝言を伝えておきます。用事を片付けたら、プレゼントを持って帰ってくるから、それまで息災でいろよ。っとのことです」

「プレゼントを受け取るのは立場として、逆だろうに」

 アレグリオの言葉を聴いて、彼は微笑し、そのまま室内を後にする。

「それで、俺への説明はいつしてくれるんだ?」

 室内に突然現れたウインドからの不躾な言葉を聴き、アレグリオは嘆息し、

「エカテリーナに言われただろう。それは、第一級秘匿事項だと」

「ああ、あの女には確かに言われた。だが、腑に落ちないことだらけでな。なったばっかりの執行官としてではなく、友人として聞きにきた」

 彼は許しを得ることなく、ソファに腰掛、アレグリオの回答を待つ。

「ユヅルの力についてか?」

「ああ。あの女が言うには、無限書庫アーカイバには、天使と悪魔は存在しない。だが、あいつは使うことができる。それはなぜだ。さらに言うなら、あの馬鹿げた力は?」

 彼の問いかけに、アレグリオはすぐに答えることはせず、コーヒーを口に少しだけ含んだ後、

「厳密に言えば、天使と悪魔、聖獣と邪竜の四種類が無限書庫には存在しない」

「だが、無限書庫には、すべての魂が保管されているはずだ」

 そう、無限書庫はすべての魂が行き着く終着点。その場所に、存在しない魂があることのほうが異常。

「ああ、表向きの無限書庫には、存在しない」

「表向き?」

 彼の言葉に不信感を抱き、ウインドは首をかしげる。

「無限書庫には、鍵を持たぬものが入れぬ厳重封印が施されている。その先に、深奥室と呼ばれる、この星の魂に通じる場所がある。そこに、先に口にした四種類の魂が封印され、保管されている」

「ほう」

「鍵は全部で四つ。その鍵は星装具アストラルと呼ばれ、手にしたものは到達者アデプトと呼ばれている。もっとも、私はあいつ以外の到達者に出会ったことはないがな」

 あっさりと、驚愕の事実を告げる。もし、彼が言っていることが真実であるなら、ユヅル以外に三人、魂吸収者ソウルアブソーバーが足元にも及ばない、桁違いの存在がいることになる。

「あいつは、なぜそれを持っている? 俺と一緒にいたときには、持っていなかったはずだ」

「それは、上手く隠していたからだろうな。あいつは、生まれながらに持っていたよ」

 そう口にして、彼は過去に思いをはせる。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 異端審問局にユヅルを始めてつれてきたとき、星装具を持っている彼に対して、アレグリオは、

「お前は生まれながらにして選ばれた存在だ。そのことを誇りに思いなさい」

 確かにそう口にし、彼を褒め称えた。だが、彼の反応は非常に冷めていて、

「どうした、もっと喜びなさい」

「なんで?」

 純粋に、どうして喜べばいいのかわからないといった感じで、ユヅルは言葉を返してきた。それについて聞いてみたら、

「星に選ばれて、なんで喜ばなければならない。人より優れていることを誇るなんて、愚者のすることだ。人は、同じ人に出会うことはできない。なら、誰かと比べる必要ない。俺は、そんなものよりも、大切だと思える人が欲しかったよ」

 酷く悲しい答えが返ってきて、彼を強く抱きしめたことを覚えている。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 


「まぁ、なんにせよ。あいつがいる限り、異端審問局に攻めて来る馬鹿はいない。そういう意味では、最強の広告塔だな」

「あいつは、私の自慢の息子だ。兵器でも、化け物でもないし、ましてや、広告塔でもない。私が愛してやまぬ息子。それだけでいい」

「お互い、親ばかみたいだな」

「違いない」

 二人はどちらからとも言わずに、声を上げて笑い出したのだった。

次からようやく日常編へ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ