天使光臨2
少しずつ前へ
その言葉を聴いて、ケイオスの心は重苦しい衝撃を受け、言葉を口にすることができない。
「どうしてそいつが生きているのか、事実確認はできていないし、本物という確証もない。ただ、いえることは、術式は開放まで待ってくれないってことだ」
彼の心の葛藤を知っていながら、ユヅルは言葉を続ける。
「相手の行動パターン、戦力、思考が知りたければ、携帯でサーバに直接アクセスして自分で調べろ」
ユヅルの言葉に彼は、まだ答えることができない。
「先輩が相手だから、そんなことで悩むなよ。優先順位を間違えるな。今のアンブレラの隊長はお前だ。お前が迷えば、悩めば、その分だけ、部隊の生存確率は減少する」
「それは、わかっているさ」
「わかってねぇよ。仲間意識? 同朋意識? そんなちっぽけなものすぐにでも捨てろ。相手は敵だ。向こうは迷うことなくこっち側を殺しにかかってくる」
「それでも、僕は」
「救いたい? お前の美意識に口出しするつもりはないが、死ぬつもりか?」
「仲間殺しが、仕事に入っている君にはわからないよ」
ケイオスは、決して彼に対して口にはしたくなかった言葉を口にする。孤児であった彼にとって、異端審問局の人間は、家族同然。それがたとえ、あったことのない人間であったとしても。
「ああ、わからない。まったくもって理解不能だ」
そんな彼に対し、ユヅルは侮蔑の言葉を持って答える。
「お前が守りたいのは、一緒にいたいのは、あったこともない他人か? 冗談もほどほどにしろよ。もう一度言うぞ、テメェが今隊長なんだよ。味方殺し? そんぐらいの汚名なら、そんなもん受けるだけで味方守れるなら、喜んで受け取れよ。俺たちは所詮、エゴイストの集まりだ。誰かに考えを強制することなんてできやしない」
そこで一度、ユヅルは言葉を区切り、
「俺たちは、テメェで好き好んで自分の手を汚して生きてる。だがな、守るっていう証を立てたんなら、テメェがどれほど汚れたって、それだけは破るなよ。綺麗でいたいと憧れるな。そこには、もう、俺たちは決してたどり着けない」
自分の心すら傷つける言葉を口にした。
「まぁ、お説教はここで終わり。決めるのはお前だ。そうだな、答えを最後までだせないってんなら、せいぜい引き伸ばしとけ。汚れ役は、俺が引き受けてやるから」
「君は、本当にそれで言いのかい?」
「良いも悪いもない。その為に俺がいる。ああ、後、そっちに行く奴は俺よりも、もっとエグイ思考の持ち主だから、それじゃな」
そう口にして彼は通話を終了した。
「それで、お前さんはどうするつもりなんだ、隊長殿?」
わざと茶化すように、現れたウインドは意地の悪い笑みを浮かべながら、ケイオスに答えを求める。
「あなたが新しい席次の九」
「おう、俺様がウインド様だ。よろしくな」
「そうか。なら話は早い。みんな聞いてくれ」
そして、ケイオスは自身の知りえている情報をすべて皆に対して公開する。
「これよりアンブレラは、術式使用者を戦闘不能にし、核のある場所を吐かせ、それを破壊。異論は認めない」
「甘いねぇ、ガムシロップよりも」
「ウインド、異論は認めないし、以後、私語も慎め」
彼の決定に対し、異を唱えるウインドをケイオスは鋼鉄の意志で封殺。行動を開始する。
「なぁ、方針はそれでいいとして、できなかった場合、術式使用者を殺していいんだよな?」
「できなかったことは考えるな。僕らはアンブレラ、血の、嘆きの雨から異端審問局を守るために存在する。そして、決定事項に変更はない」
そう口にし、彼に背を向けてアンブレラは動き出す。それを見て、
「隊長、こんなおままごとに付き合うつもりですか?」
レイブンは早速不満を口にする。
「まぁ、お手並み拝見といこうじゃないか。異端審問局の抱える最高戦力がいかほどのものかを」
まとまりがありませんねぇ