第十二話 天使光臨1
タイトルは変わってるけど、続いてます。
「なるほど、大体の事情はわかったよ。それにしても、話を聞くだけなのに、いきなり襲い掛かってきちゃダメだよ」
室内に入るなり、襲い掛かってきたレイブンを叩き伏せ、現在の状況を聞くことに成功したケイオスは、叩き伏せた彼女に対して笑顔で忠告する。
「それにしても、秘書官殿、どこまで状況を読んでるんだろうね」
「残念ながら、拙者には、元隊長の考えは読めぬでござるよ」
ケイオスの問いかけに、センザは首をひねりながら答える。
「まぁ、ユヅルはんが中抜けしたことには、驚きましたけどなぁ」
「兄様は、途中で任務を放り出すようなことは決してしません。きっと何か考え合ってのことだと、私は判断します」
ユヅルが、新しい席次の九と共に姿を消したことに対し、不満を口にするフジノに対し、ハイドレンジアは、揺るがぬ言葉を口にし、
「その根拠はどこにあるんどすか?」
「兄様だからです」
見事なまでのブラコン振りを発揮していた。
そんな時、ケイオスの携帯が振るえ、彼は液晶を確かめることなく通話に出る。
「もしもし?」
「もしもしじゃねぇよ、詐欺師」
電話の相手はユヅル。彼は開口一番、ケイオスの称号を口にし、
「時間がないから、先にこっちの用件を言わせてもらう。とりあえず、その場に全員いるな?」
「うん。僕らアンブレラと新しい席次の十。この五名を指すんだったら、誰一人かけることなく、この場所にいるよ」
周囲を見渡し、現状の戦力を確認してからケイオスは答える。
「少し遅れるが、席次の九もそっちに合流するはずだ。お前はそいつと一緒に事態をどうにかこうにか、収めるか、俺が戻るまで時間稼ぎをしろ」
「時間稼ぎ?」
「ああ。順序だてて説明しているほど時間はないから、簡潔に説明する。敵さんの目的、これが馬鹿みたいなことでな、天使の従僕化だ」
「うん? 言っている意味が良くわからないんだけど」
「わからないなら無理に理解しようとするな。俺も、さすがに馬鹿すぎて理解することは諦めた」
電話越しにため息を口にするユヅル。
「まぁ、その目的を達成する為には、大規模な天使の召喚術式が必要になってくるわけだ。こいつは数秘術に関する専門知識が必要だから、説明は省く。ただ、厄介なことにこの術式は、こっちが潜入したときから発動を開始している」
「止める方法と、完成時間は?」
「完成するまでの時間は、相手さんの技量が大きく影響を及ぼすから俺にも詳しくわからん。ただ、それなりの準備はしているはずだから、後一時間もあれば発動するんじゃないか?」
「曖昧だね」
「そんで、止める方法は、術式の核を壊すか、術式の使用者を殺すかの二択。前者は、時間内に無理があるだろうから、選べるとしたら後者だろうな」
「そうだろうね」
ケイオスも、彼に習ってため息をつく。制限時間は少なく、選べる選択肢も少ない。加えて、天使を相手取ることになれば尚更。
「術式の使用者についての情報は?」
「ああ、肝心なことを話してなかったな」
「まったく君って奴は」
「そういうなよ。術式の使用者は、お前らの先輩だよ」
その言葉を聴いた瞬間、ケイオスの思考は凍りつく。
「無限書庫の入り口に一番近い人間だっけ? お前らに与えられてた情報」
「ちょっと待ってくれ。ユヅル、僕の聞き間違いかな?」
「事実は事実として受け止めないと、自分の死期を早めるぞ、ケイオス。もう一度、今度は詳細に教えてやる。術式の使用者は、元異端審問局所属の異端殲滅執行官、アンブレラに所属、当時の席次は一、称号『魔術師』、徒草リカコ。十八年前、当時の席次の十三、つまり局長に殺されたはずの人間だ」
敵は先輩、しかも死んだはずの