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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第三章 執行官の誇り
32/106

無貌の君臨者4

まだまだ本題にたどり着かない

「それにしても情けない。俺様は、こんな間抜けを育てた覚えなどないのだがな」

 吐き捨てられるのは、再会の喜びを完全に打ち砕く侮蔑の言葉。

「背後への警戒が疎かだと、そういいたいのか?」

「ご名答、クスっ」

 ユヅルの言葉に答えるように、背後から彼に突きつけられる刃と言葉。それも、彼は忘れることなく覚えている。だから、振り返ることなく、

「そうだよな、元隊長がいるんだ、元服隊長のあんたもいて、当然といえば当然だ。久しぶりだな、レイブン副隊長」

 新しいタバコに火をつけ、つまらなそうに、落ちたタバコの火を靴のそこで踏み消す。

「あらっ、可愛くない。そういうところは相変わらずみたいね。でも、いいのかしら、自分の命を相手に握らせたままで」

「ウインドが九ってことは、あんたが十でいいのか?」

 レイブンの問いに答えることなく質問を投げかけるユヅル。その表情に焦りはなく、先ほど浮かんだ驚愕すら姿を消していた。

「ああ、ぴったりだろ?」

「そうだな。他人の背後取ることしかできない暗殺者には、相応しい場所だな」

 レイブンの代わりに問いに答えたウインドへ視線を一瞥、彼はタバコの煙を吐き出し、背後へと視線を送る。

 その場にいたのは、黒髪に黒い瞳、顔に小悪魔のような表情を浮かべたスーツ姿の女性。年は、彼より少し上程度。

「なぁ、何でナイフを動かさない? 相手の命を握ったから? 元仲間だから躊躇った? 違うだろ。俺は目の前の男に標的は殺せるときに殺せと教わった。嬲るのは、拷問のとき以外する必要はないとも」

「何が言いたいのかしら?」

「折角再会できたって言うのに、落胆させるなってことだ」

 その言葉と同時、彼女は地面へとたたきつけられる。ユヅルは立ち上がっただけ。それ以外の動作が彼女には見えていない。

「それで、わざわざ執行官になってまで俺に会いたかったのか? 子離れしない親は嫌われるぞ、ウインド」

「本当にそう思っているのだとしたら、自信過剰もいいところだ」

 真っ向からユヅルの視線を受け止め、ウインドは答える。

「今回、俺様たちがこの件にかかわったのは、別にお前に関係していたからじゃない。エカテリーナとか言う女が、あまりにも必死こいて説得してくるものだから、交渉に乗ってやっただけのことだ」

「そうかよ」

 そう口にして、懐から銃を引き抜いたユヅルは、ピエロに向かって引き金を引く。銃弾は、五発着弾し、ピエロはそのまま地面へと転がる羽目に。

「良かったのか?」

「本当なら、もう少し情報を手に入れてからにしたかった。だがまぁ、ここで俺のプランを変更しておかないと、どうにも手遅れになりかねないからな」

 床に転がったピエロはピクリとも動かない。そして、血液の一滴すら出さず、何かがはじける音が小さく響いている。

「あの女が何を考えているのか、俺の理解の範疇にはない。だが、あんたがここにいるのは、いろいろと都合がいい」

 吐き捨てて、

「レイブン、これから四人の馬鹿がこの部屋に来る。そいつらと一緒に、この城の主を消しとけ。つ~か、いつまでも寝てないで働け」

 乱雑に命令し、ユヅルはゆっくりと息を吐き出す。

「ウインド、あんたには付き合ってもらうぞ」

「ほう、俺様をご指名とは、嬉しいねぇ」

「すぐにそんな戯言は口にできなくなる。行くぞ」

 その瞬間、二人の姿が彼女の視界から消失した。

合流できなかった

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