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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第二章 日常というもの
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水着×mizugi3

華やかだけど、冷たい空気

「そんで、これからどうするよ?」

 食堂でカレーライスを口にしながら、ユヅルは意見を求める。

「遊べれば何でもいいんじゃないかな?」

「そうですよ、息抜きみたいなものですから」

 カズキ、ヒサノに共に言われ、ユヅルは余計に悩んでしまう。元々、アキタカに誘われてきた為、彼にはこの場所で何かをしようという、明確な目的がない。さらに言えば、こういったテーマパークに来るのは、カナミと一緒に行った遊園地を含めて二回目。遊ぶ、そのことに対して、彼はまったくといっていいほど経験がないのだ。

「あいつはあいつで、どっかいっちまうし」

 彼を誘った本人、アキタカはうなだれるだけうなだれて、一人でどこかに行ってしまった。そう、誘ったはずのユヅルを置き去りにして。

「気を利かせてくれたんじゃないかな?」

「何気に、空気の読める人みたいですしね」

 そんなことを口にしながら、二人の間は視線で火花が散っている。後は、一人、排除できれば、彼と二人きりで休日を謳歌できる。その考えは、二人にとって友情よりも、とても魅力的。

「そうは言っても、俺、こういうところ慣れてないしな」

「それじゃ、ゆ~君、あれに乗りましょう」

 食事を終え、適当にぶらつくことにした三人だったが、ヒサノが指差したウォータースライダーに乗ることに決定。しかし、その提案を受けたわりにカズキの顔色はあまりよくない。どうやら、彼女もカナミと同じように絶叫系のアトラクションが余り得意ではないらしい。

「別にいいけど、お前、大丈夫なのか?」

「安心したまえ、大得意だ」

―絶対、嘘だな―

 視線を合わすことなく口にするカズキ。そんな彼女の様子を気にしながらも、三人で列に並ぼうとして、そこでユヅルの動きが止まる。

「これ、二人乗り?」

 彼の視線の先にあるのは、カップル限定とかかれた文字。つまり、三人でも一人でも乗ることができないアトラクションらしい。

「なっ、なら仕方ない。僕が少し待っていることにしよう」

 早々に戦線を離脱するカズキ。その時、ヒサノの瞳が光ったのは言うまでもない。

「じゃあ、行きましょう」

 カズキを尻目に、ユヅルの腕を取って列へと並ぶヒサノ。その、実に嬉しそうな姿をみて、卑屈な気分になってしまうカズキ。

「じゃあ、少し待っててくれ」

 そう口にして、ユヅルとヒサノは列へと並んでしまう。

 そして、二人に順番が回ってきたとき、係員の男性になぜか、殺意交じりの視線を向けられるユヅル。この男性、どうやら先ほどの三人のやり取りを見ていたらしい。

「この、ハーレム野郎」

「なんか言ったか?」

「いえいえ、それでは、きっちりと持ってくださいね」

 バナナボートに似たものに跨り、取っ手に手をやるユヅル。しかし、その後ろに座ったヒサノは、なぜか取っ手を持たず、彼に抱きついている。

「これ、大丈夫なのか?」

「ええ、カップル限定ですし」

 そう口にはしているものの、男性スタッフの顔は引きつっている。

「それでは、逝ってこい」

「おい、絶対演技でもないこと口にしただろ、今」

 係員に突っ込みを入れるものの、ウォータースライダーはスタート。正直に言って、ものすごいスピードで落下している。取っ手でバランスを取らなければ、コースアウトしてしまってもおかしくはない。

―やり辛い―

 後ろからヒサノに抱きつかれ、羨ましい状態のユヅル。しかし、本人には、その意識がなく、操作がやりづらいことに対する感想しかない。そして、そんな状態の彼は、当然のごとく、最後のほうで操作を誤り、二人してコースをはずれ、プールへと投げ出されてしまう。

「おい、無事か?」

「はっはい、大丈夫です」

 咄嗟の判断で、ヒサノを右手で抱きしめる形でプールに着水したユヅル。濡れた髪をかき上げながら、彼女に声をかけるものの、二人の顔の距離は十センチもない。

「とりあえず、あがるぞ」

「はい」

 声をかけられながらも、ヒサノの顔はうっとりとしている。咄嗟の行動とはいえ、ユヅルは彼女をかばい、抱きしめてくれたのだから。

「おや、二人ともずぶ濡れだね」

「ああ、アレのせいだ。お前は乗らなくて正解だったかもしれない」

 カズキの元へ戻ってきたユヅルとヒサノの二人。ヒサノの顔が赤いことを確認し、何かあったのだとカズキは判断するものの、超がつくほどこの手のことに鈍感な彼が、そのことに気づく可能性が、非常に低いので、ため息を一つだけつく。

「そうそう、ヒサノ君、一つ君にお願いがあるんだ」

「私ですか?」

 ユヅルにではなく、自分にカズキが声をかけてきたのが不思議でしょうがなく、首をかしげるヒサノ。

「あれに、一緒に参加してくれないかな?」

 そう口にして、カズキが指差したのは、ビーチバレー大会ののぼり。

「二人がウォータースライダーに乗っている間に調べたんだけどね。アレ、どうやら女性限定で参加できるみたいなんだ。おまけに優勝商品は、ペアの一泊二日温泉宿泊券、二回分。どうだい、ここは共闘してみるっていうのは?」

「やりましょう」

 瞳に炎を燃やし、二人は互いに手を取り合う。優勝以外に興味はないといわんばかりに。

「あいつら、いつの間に仲良くなったんだろう」

 彼の目は、こういったことに関しては、節穴以外の何者でもなかった。

イベント盛りだくさん

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