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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第二章 日常というもの
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第十話 水着×mizugi1

季節は、冬のはずです。

「それで、って、きちんと私の話を聞いてますか、ユヅルさん」

「ああ、とりあえず聞いてるよ」

 学校の屋上、昼食をとりながら、カナミは隣で購買のパンを食べているユヅルに対して不満を口にする。彼が、この天禅寺高校に転入してきて、約二ヶ月になろうとしているが、未だに、カナミの弁当は食べてもらえていない。

「文化祭についてだよね」

「そうですよ、ゆ~君。きちんと聞いてください」

 一緒に昼食をとることになったカズキとヒサノにまで言われ、彼は閉口してしまう。そして、彼は、自分の隣で昼食を取っている女子生徒に視線を向ける。レベッカ・サウザード。ユヅルと同じ異端審問局所属の執行官であり、実際に殺し合いをした人間。なのだが、なぜか、殺し合いをして一週間も経たずにこの学校に転入してきている。

「先輩、私の顔に何かついていますか?」

「別に」

 納得はいっていないものの、ユヅルはそれを口に出すことなく、食事を終了する。

「話を本筋に戻しますよ、今日は、文化祭のユヅルさんのスケジュールについてです」

「スケジュールねぇ」

 どうして自分のスケジュールを、自分で組むことができないのか、彼は疑問を持ちながら適当に話をあわせる。

 天禅寺高校の文化祭は、若干特殊な時期に行われる。行われるのは、十二月の二十二から二十四の三日間。終業式を二十一日に行い、その後、三日間をお祭り騒ぎに当てるといった理事長の考えである。

「軽音楽部は、たしか、最終日のステージ参加だったはず」

「手芸部は、二日目の午前中が当番になってます」

 本人の意見を無視しながら、着々と四人の女子によって、ユヅルのスケジュールが決定していく。

「そういえば、ユヅルさんは、誰か招待したんですか?」

 カナミが疑問を口にした瞬間、その場にいた四人の女子の視線が、彼に固定される。天禅寺高校の文化祭は、初日が学内のみ、二日目、三日目が一般公開となっているものの、この文化祭が開催されている最中、部外者は生徒に配布されているチケットがなければ、敷地内に入ることができない。

「くるかどうかはわからないが、とりあえず二枚ほど、チケットだけは送っておいた」

「先輩、それは、男ですか、女ですか?」

 食いついてくるレベッカに飽きれながら、

「そこ重要なのか?」

「「「「重要です」」」」

 聞いてみるが、四人同時に言われ、

「女だよ、ただ、お前は知ってると思うけど」

 ため息をつきながら、レベッカを指差す。だが、当のレベッカは、首をかしげている。そんな彼女を手招きし、

「お前、自分と俺以外の執行官、何人ぐらい知ってる?」

「局長代理と、秘書官ぐらいです。顔を知っているのは」

 彼女の回答を聞いて、肩を落とす。

 本来、執行官に就任したとき、顔見せに他の執行官に挨拶に伺うのが基本なのだが、彼女はそれをしなかったらしい。もっとも、執行官が本部にいることが稀な為、合えていなかった線もあるが、二人というのは、あまりにも少なすぎる。

「俺が送ったのは、イスカリオテとマリーシャ、二人ともお前と同じ執行官だよ」

「聞いたことのない名前ですね」

「じゃあ、『軍神』と『戦乙女』の称号は?」

「それなら聞いたことあります。確か、席次の三と六ですね」

「そう、その双子だよ」

「先輩の交友関係って」

「何か言いたげだな」

 そんな風に二人で内緒話をしていると、アキタカが屋上に姿を現し、

「ユヅル君、ナンパしに行こう」

 意味不明な言葉を口にしたので、その瞬間、ユヅルは固まってしまう。

「ちょっとこっち着て」

 手招きされたので、仕方なく四人から離れて彼に近寄るユヅル。

「そんで、何?」

「だから、ナンパしに行こう。二人で」

「はっきり言おう。おまえの言っていることの意味がわからん。結果だけでなく、その考えに至った過程も話せ」

 いきなりの誘いを断ったりはせずに、説明を求めると、

「いやね、ちょっと懸賞サイトでこんなものを手に入れたんですよ」

 そう口にして、アキタカは制服の内ポケットから二枚のチケットを取り出す。良く見ると、そこには新しくできたスパリゾートの名前が記載されている。

「よかったな、他をあたれ」

「いや、まだ過程をすべて話し終えてないですって」

「俺じゃなくて、他のやつを誘えよ」

「バンドのメンバーのことを言ってるなら、みんな補習です」

「あいつら、馬鹿だったのか」

「面目ないです」

 天禅寺高校は、期末試験終了後、テスト休みが設けられ、授業はなく、部活動の為の自主登校という形を取っている。もっとも、そこで赤点を取ったものは補習という名目で、毎日授業参加を義務付けられているが。

「そんなわけで、一緒にナンパに行きましょう」

「一人で行け」

 過程と結論を聞き、面倒だと判断したユヅルはすぐに断るのだが、

「一人でナンパなんてできるわけないでしょうが」

 いきなり逆ギレされてしまい、言葉を失う。

「そりゃ、毎日美少女に囲まれたハーレム生活を送ってる、各ファンクラブのぶっ殺すランキングトップの人にはわからないでしょうよ。でもね、僕だって、モテタインデスヨ?」

 血の涙さえ流しそうな勢いでまくし立てるアキタカを見て、ユヅルはため息をつく。これは、後で知ったことなのだが、ヒサノだけでなく、カナミにカズキ、おまけにレベッカにまでファンクラブができており、いつも彼女たちと一緒にいるユヅルは、男子生徒たちにとって見れば、不倶戴天の敵らしい。

「わかったよ。ナンパはともかく、付き合ってやるよ」

「ユヅル君なら、そう言ってくれると思ってましたよ。それじゃ、後で連絡入れるんで」

 表情をコロコロと変えながら去っていったアキタカ。

「平穏って、どんな状況をさして使う言葉だったっけな」

 タバコに火をつけながら、傍観者になりたいと感じていたユヅルだった。

さぁ、

次から修羅場に突入です

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