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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第二章 日常というもの
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魔弾の後継者2

トリガーハッピー

 そこは、何の変哲もない倉庫。

 ブービートラップを警戒しながらも、目の前に目的の人物が現れたことを確認し、ユヅルはタバコに火をつけた。

「はじめまして、あんたが新しい席次の十二?」

「人を、誰かに与えられた記号で呼ぶな」

 気さくな挨拶を心がけたつもりのユヅルだったが、どうやら彼女の気分を害してしまったらしい。

「私には、レベッカ・サウザードという、母親からもらった大切な名がある」

 以外にも自分から自己紹介をしてきたレベッカに対し、口笛を吹き、

「そうか、そんじゃ、俺にもユヅル・ハイドマンっていう、名前がある」

 軽口で答えた彼に対する返答は、銃声。彼女の両手に握られている拳銃。その片方、右側から紫煙が立ち上っている。

「あのさぁ、それは、ガキが気軽に使っていいものじゃねぇんだぞ。第一、銃声聞きつけて、警察が着たらどうするつもりだよ、お前」

「だまれ、貴様と談笑するつもりなど私には、毛頭ない」

 怒りと同時に、左側の銃も彼に向け、レベッカは言い放つ。

「そっか、なら、一つだけ答えろ。お前、何がしたいんだ?」

「大方察しがついているのだろう」

「俺は、確信が欲しい。そんなわけで、お前の口から直接、聞きたいんだよ」

「私は、お前を殺しにきた」

 予想通りの答えを聞けたので、ユヅルは顔に微笑を浮かべる。

「俺をすんなりと殺せないことは、学習済みだよな。それでも、俺を殺すって言ってるんだ。何かしら、策ぐらい用意してあるんだよなぁ?」

「それは、お前が死んで確かめろ」

「そうかい、じゃあ、最後に一つだけ、礼をいっておく。俺をぬるま湯から出してくれて、ありがとうな」

 銃を構えている相手に無防備に歩み寄りながら、彼は場にそぐわぬやさしい声で、レベッカに語りかける。

「もういいから、黙れ、化け物」

 彼女はそう口にして引き金を引く。狙いは、当然のように額。それを受けたユヅルは、流血し、体制を崩すものの。死んでいない。レベッカが手にしている二丁拳銃は、彼の持っているオートマグと違い、現在、世界最強と名高いデザートイーグル。その50AE弾を受け、傷だけですんでいるのだから、彼女の言葉はもっとも。

「これが、お前の用意した、策か?」

 侮蔑するのでもなく、嘲笑するのでもなく、何気ない口調で口にするユヅル。そんな彼に対して、彼女は何度もその場で引き金を弾き続ける。撃鉄が、甲高い金属音を上げるまで。それまでに彼が受けた弾丸の数は、二十二発。一般人であれば、死ぬどころではなく、跡形もなく消し飛ぶか、肉片に変わっていてもおかしくない。それでも、彼は生きている。傷は負っているものの、自らの足で、崩れることなく立っている。

「化け物がっ」

 吐き捨て、彼女は弾丸の尽きたはずの拳銃を、弾層を変えることなく、引き金を引く。突如として響く轟音。そして、初めて、この場で膝を着くユヅル。

「さすがに、化け物レベルの耐久力を持っていても、これは効くらしいな」

「ははっ、『魔弾』とは、あの人と能力まで同じかよ」

「あいつのことを、口にするなぁ」

 そして、彼女は引き金を弾き続ける。先ほどと違うのは、ユヅルが弾丸を受けるたびに、大きく体制を崩し、その場から動いていないこと。

 魔弾。

 正式な能力名は、圧縮開放なのだが、異端審問局ではこの能力は、特にこう呼ばれている。原理は非常に簡単で、ただ物質やエネルギーを任意の大きさに圧縮し、対象に接触した瞬間に開放するというもの。ただ、この能力は、シンプルであるがゆえに、非常に応用が利き、殺傷能力も高い。先ほどから、ユヅルが受けているのは、おそらく、空気を圧縮した弾丸。威力を武器でたとえるなら、この魔弾は、バズーカクラスに相当する。

「踊れ、踊れ。さっきの余裕を後悔して、踊り続けろ」

 彼女は狂った笑いを浮かべながら、引き金を引き、ユヅルが地面に倒れ、そのまま動かないことを確認して、唾を吐く。

「ふっ、ははっ、はーはっは。これが席次の十三。ただの馬鹿の間違いだろ。私はこんなにも強い。相手が化け物だろうが、殺してみせる。なのに、私は十二、テメェみたいな奴の下に見られる。それは、きっと前任者が間抜けすぎたからだろうな」

 声を上げてひとしきり笑った後、こみ上げてきた怒りをそのまま言葉にするレベッカ。しかし、

「おまえ、なんか勘違いしてないか? 席次の十三は、十二よりも上って意味じゃねぇぞ」

 荒い息で立ち上がったユヅルを見て、忌々しげに目を細める。

「お前こそ、何言ってやがる。撃たれ過ぎて、頭までイカレたか? 執行官の席次は、一が一番上で、次が十三、その後からは普通に数えて、十二は末席だろうが」

「そこから教えないといけないのかよ、骨が折れる」

 彼女はユヅルの言葉を聴いた瞬間、引き金を引く。当然、衝撃を受けたユヅルは崩れ落ちるが、今度は膝を着くだけにとどまる。

「異端執行官の席次は、一から七までが万能型、八から十三までが特化型。そんで、数え方は、万能型が一から、特化型が十二から。能力の使い方、戦闘スタイルで、席次が与えられるだけだ」

「なら、十三はどこに行った」

「その数字の意味を教えてやるよ、今からな」

 シニカルな笑みを浮かべ、彼は呪詛を口にする。そう、神を蹂躙したときの言葉を。


          『 無限書庫アーカイバへのアクセス開始

            第二六九幻想領域座標固定

            並びに、封殺結界を固定座標に接続

            執行官権限により、厳重封印指定の十三を開放

            厳重封印との魂接続開始

            肉体および魂の封印を開放

            物理的干渉および精神的干渉に異常なし

            起きろ、もう一つの俺の魂

            悪魔皇イレイザー      』




第四の執行官登場


数え方は

万能型が1、2、3、4、5、6、7

特化型が12、11、10、9、8

です。

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