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シュリンムスト・メテレーザー  作者: nao
第七章 つかの間の安息
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歓迎会です6

シリアスパートにはさよならしました

「お待たせいたしました、ご主人様」

「遅くなってしまい、もうしわけございません、マスター」

 クローデルが店を出ていってからすぐ、ラッピングされた大きな包をアカネが抱えて現れ、ヌイはユヅルの前にコーヒーとスパゲッティを置き、

「おいしく、おいしくなぁれ、もえもえ、きゅ~ん」

 ご丁寧にも、美味しくなる呪文をかけて、彼の隣に腰掛ける。当の本人は、メイド喫茶体験二回目で、先ほどクローデルがいたこともあり、居心地の悪さを感じているご様子。ただ、ヌイは意外にも人気があるらしく、周囲からは彼に対して嫉妬混じりの視線が向けられている。


「ヌイ、少し詰めてください」

 アカネもアカネで、ヌイを少し奥へ移動させると、彼の隣に腰掛ける。

「おい、なんで反対側が空いてるのに、わざわざ隣に座る」

「マスター限定のサービスです」

「本来であれば有料かつ、来店ポイントが規定数を超えたご主人様、お嬢様のみ利用できるサービスとなっております」

「いや、頼んでないから」

 ご丁寧にメニュー表を開き、来店ポイントサービスの欄を指さして説明するアカネ。ちなみに、彼に対して二人が行なっているサービスは、来店ポイント二百ポイント利用して初めて、五分間のみという、極めてぼったくりもいいサービス。


「マスター、あ~ん」

 頭を抱えたくなってきた彼に対し、スパゲッティを絡ませたフォークをヌイが、彼の口元にまで運んでくる。

「これは一体、なんの真似だ?」

「マスター限定のサービスです」

「いや、そのセリフはさっきも聞いたから」

「本来であれば有料かつ、来店ポイントが規定数を超えたご主人様、お嬢様のみ利用できるサービスとなっております」

「それもさっき、聞いたって」

 辟易しながら先ほどの欄を見ると、来店ポイント五百ポイントからのサービスとなっている。


「マスター、あ~んです」

「いや、一人で食えるから。フォークを返せ」

「マスターは、私のことが嫌いですか?」

「いや、好きか嫌いかで答えろと言われたら、好きの部類に入るが」

「では、あ~ん、です」

「今の会話の流れにそれがどう関わってるのか、マジで説明してくれ」

 ただ、現状、彼には嫉妬と殺意の入り混じった視線が向けられており、食べるという選択肢を選んでも、食べないの選択肢を選んでも、結果としては、視線の痛さが増すだけ。

「あ~ん、あ~ん」

「食べればいいんだろ、食べれば」

 半ば自暴自棄気味になりながら、甘んじて口を開いて食事をする。その途端、ものすごい勢いで嫉妬が消え、完全に殺意のみとなった視線が向けられるのだが、ヌイは顔を赤らめ、とても満足そうにほほに手を当てている。


「ご主人様、あ~んです」

「いや、もうそれ、やったから」

「ご主人様は、私のことが嫌いですか?」

「ナニコレ、こういう会話の流れから、抜け出せないようになってんの?」

「ご主人様、あ~んです」

「もういいよ、抵抗するのに疲れたよ」

 完全に諦めモードに入り、二人のメイドに奉仕されながら食事をするユヅル。周囲から見れば、羨ましい、殺してやる、っといった感じの意見が暴発寸前。ただ、本人に全くその気がないことを、その場にいる人間、誰一人として理解していないが。


「そういえば、ソレ、何が入ってるんだ?」

「「存じません」」

「簡潔な回答、ありがとうよ」

 二人のメイドに奉仕されながらの食事を終え、タバコに火をつけようとした彼は、思い出したようにアカネが持ってきた大きな包に疑問を抱く。

「中身、一応確認しておくか」

 本来であれば、プレゼントの中身を送られる本人以外が確認するのは、モラルに反する。ただ、クレハの悪ノリが加速した場合、はた迷惑な事態に進展する。そういった事態に何度か遭遇したことのある彼からしてみれば、これは保険である。自分に言い訳して、意を決してリボンを解いて中身を確認。


「あの女、一度脳外科に行って、精密検査受けたほうがいいんじゃねぇかな」

 額に青筋を浮かべながら、中身を確認した彼は、ラッピングを元の形に戻し、拳を震わせている。

「仕方ない、プレゼントは別のものを用意しよう」

 流石に、マネキンと一緒の勝負下着がプレゼントとあっては、義理とはいえ、兄としては見逃せない。そんなことを考えながら、会計を済ませて店内にラッピングされた猥褻物を放置したまま、足を外へと踏み出した彼だったが、そこで違和感に気づく。


「なんで、ついてくるんだ?」

「「メイドですから」」

「仕事中だろ、放棄するなよ」

「「店長と副店長ですから」」

「なおさらダメだろ、ソレ」

「「きちんとマネージャーにあとは任せてきました」」

 聞かれたといに、あらかじめ回答を用意してきましたと言わんばかりに、二人は異口同音に答えてくる。そんな二人に対して、彼はもう、ため息を付くことさえできない。


「おかしいな、ドイツの時も、異端審問局の時も、俺、こんなに疲れた覚えないぞ」

メイドさんってば素敵過ぎ

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