篠原って面白いなぁ
府川は少なくとも篠原に興味を持っていた。
まず女子という時点で府川は彼女に興味を持てた。
現代の高校生でここまで派手な奴はなかなか見当たらないしな。
髪の色は明るい茶色でピアスは両耳に二つずつ。
化粧は普通にしてる。
顔をしっかりとは見ていないが、府川にとって彼女の印象はとても衝撃的だった。
しかしそれでも興味があるだけで自分から近づこうとかそういう気にはなれなかった。
その訳は主に彼女が発する空気が原因だった。
自分でも自覚している。
府川はメガネで地味めな男子。
これといって特徴のない顔立ちである。
それに府川は世間一般で言うオタクであった。
しかし二次元だけにしか興味がないと言う程ではない。
基本的には自分からはあまり人には話さず、友好関係も広く浅くと言ったところで、心からの親友がいるのかと質問されたら迷ってしまうだろう。
でも一たび自分の得意分野の話になれば急に熱が入り、とてもおしゃべりになってしまう性格でもあった。
そんな府川が偶然にも自分とは真逆な人種である不良の前の席になってしまった。
プリントを渡しただけなのに「死ね」と言われてしまうこの始末。
頭にくると言うよりもむしろこの状況は府川に取って、面白かった。
きっと篠原は自分の事を馬鹿にしているのであろう。それを覆したくなった。
覆して驚かせて、とにかく不良を馬鹿にしてみたいと思った。
それは篠原が悪いわけではないが、世間一般的には不良はオタクを馬鹿にしていると言うのが常識ともいえる状況になっている。
現にそういう話はよく耳に入る。
電車の中や、学校の中でも。
だからこそ頭をはたいてみた。
こっちに非がない分、申し訳ないという気持ちも全くなかった。
篠原は睨んできたが、特にどうとも思わない。
府川は篠原にとって不思議な存在でいようと、そう一瞬思った。