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厄日

案の定、篠原は職員室には現れなかった。


職員室の中、数学の教師には府川と篠原の間に何があったと聞かれた。


だから府川は正直に


「篠原に馬鹿にされたから言い返しただけです。」


と言った。


すると教師は特に咎めることもなく


「とにかく篠原関係で事件は起こさないで欲しい。」


とだけ言われた。


篠原の悪行は教師たちの間でも有名なのだろうか。


数学の教室は半ばうんざりした様子で言った。


篠原が来なかったことも特に咎めなかった。



篠原はその日、教師に呼びつけを破り学校を早退した。


早退と言うよりもサボった。


数学が終わった途端にバックを持ち上げ、教室から出て行ってしまった。


府川は一応呼びとめたがそれは無意味だった。



篠原はまっすぐ家には帰らず帰り道の途中にあるファーストフード店へと立ち寄った。


ハンバーガーとコーラを一つずつ注文し、それにかじり付いた。


…。



「ちっくしょう!!」


篠原はこらえきれず、公共の場だと言うことを忘れてテーブルを叩いた。


その音が店内に響き、客の注目を集めた。


ざわざわと店内が静かにやかましくなる。


オタクを捨てれば誰にも馬鹿にされない。


さらに不良であればオタクよりも上の立場にいられる。


それなのにあの府川と言う男は、オタクが不良の上に立つみたいな言い草だった。


篠原は不良を馬鹿にされていることに腹が立ったのではなかった。



自分に集まる視線どもをギロリと睨みつけ、再びハンバーガーを食らい始めた。


だんだんと怒りは収まっていき、篠原は冷静さを取り戻してきた。


あの頃の自分は不良がおっかなくてオドオドしてたのに、今はその不良になっているだなんて。


別に不良になりたくなったわけじゃないが、オタクを避けていたらいつの間にか不良になっていた。


高校に入り、新しい友達ができた。


その友達は篠原を街に誘った。


友達と行く街は自分が居るべきところではないと小さくなっていたが、それを重ねるにつれて街にも詳しくなり、出歩く時間も増えて言った。


その内その友達にタバコを進められた。


授業でタバコは良くないものだと習ったし、周りの大人たちは皆言っている。


初め、篠原はなぜ友達がたばこを吸っているか理解できなかった。


その理由を尋ねたら、おいしいからとい答えた。


しかし篠原はタバコに興味がなかったわけではなかった。


興味本位で友達から貰った一本を吸ってみた。


案の定最初はむせたが、友達は丁寧に吸い方を教えてくれた。



だが現在はタバコを止めた。


やはり、自ら自分の体を壊すのは良い気ではない。


友達から進められても断った。


そしたら友達が少し減った。



そんなものかと篠原は彼女らの仲間意識を見下した。



物思いに耽っていると突然後ろから若い男たちに声をかけられた。


「その制服東高?」


振り返って男たちを見てみれば、私服で髪を染め眉毛を細く短く整え、いかにもの不良だった。

篠原は無視を決め込み、店を出た。


「おい、まてよ。」


男たちはついてくる。


まぁ、わかっていたことではあるが。


「俺らの声がきこえねーんですかぁ?」


声が違う、さっきのとは違う人が話しかけてくる。


篠原は振り向き言った。


「なんか用ですかぁ?」


自分より身長の高い不良を睨みあげる。


「そうそう用があんだけどよ。なんでこんな時間にこんなところにいるわけ?学生さんは学校でお勉強しなきゃなぁ~。」


あー、うざい。


なんで男って言うのは馬鹿ばっかなんだ。


こいつらと言い、府川と言い。


「ちっ」


篠原は相手に聞こえるように舌打ちをしてその場を後にしようとした。


しかしその時1人の男の手が篠原の肩を掴んできた。


「っ!何しやがんだ!」


「無視はよくないな~。それに舌うちも。」


「うるせぇ、おめぇらなんかに用はねぇんだよ、離せ!」


「離すわけはないでしょ~。」


こいつの喋り方、うざい!


なんでこんなに語尾を伸ばすんだ!


あー!なんでだ!


府川に出会ってから厄日が続いてる!

あいつは疫病神か!


しかし相手は数えると4人いる。


抵抗してもしきれない。


こんな昼間でしかも人目が結構あるので喧嘩なんかにはならないとは思う。


車に連れ込まれるなんて事もないと思う。


これは誰かの助けか、やつらがあきらめて帰ってくれるしか篠原がこの場を立ち去れる方法はなかった。


「…で、なんの用ですか?」


「お、やっと聞いてくれるぅ~?あのさ、俺らと一緒にゲーセンいかない?ゲーセン?」


「はぁ?金ないんで。」


「大丈夫大丈夫、俺らが出してあげるからさ~。」


「いえ、結構です、では。」


しかし不良たちは篠原の肩を離してはくれない。

むしろ肩を掴む手に力が入ってくる。


「え~本当にぃ~?」


「ってぇな、この…!」


篠原は男の手を掴んで引き離そうと力を込めた。


そのままさっと体をひねり、男の手を肩から外した。


男は意外だと思わんばかりの表情をしている。


ま、小学校の時にちょっと習った合気道だけどね。


心の中で篠原はつぶやいた。


「ちっ」


今度舌打ちしたのは男の方だった。


「くそっ。」


そして男たちは自分たちの車に乗り込みどこかへ行ってしまった。


「厄日だよ、ちくしょー…。」


篠原は行く宛もなくただ道を自転車で漕いで行った。



結局カラオケで時間を潰すことになった。


昼間だったので混んではおらず、すぐに部屋に入れた。


しかし篠原は歌いたい気分なのではなく、ソファに深く座った後、しばらくぼーっとしていた。


ぼーっとし終えたあと、何曲か歌を叫び歌い、その日のストレスを思いっきり掃きだした。



だが、その時だった。


部屋に誰かが勝手に入ってきたのである。


カラオケの部屋は暗いので誰だか分らなかったが、


「みーつけた~。」


語尾の伸ばし具合とこの声、さっき篠原に絡んできた男四人組のひとりであった。


「な、なにやってんだてめぇ!つけてきたのか!」


マイクが音を拾い、叫び声が部屋に反響する。


男は何も言わず、篠原に近づき篠原の手からマイクを奪い、それを後から入ってきた3人の内の一人に手渡した。


残りの二人の内1人がマイク音量を0にし、カラオケ音源の音を最大にした。


最後の1人は篠原を押さえつけている。


篠原は背筋が凍った。


この状況でやられることは二つに一つ。


暴力、あるいは強姦、それしかない。


篠原は助けを求めたかったが、防音であるカラオケの部屋の中でいくら叫んでも外には聞こえない。


それに予防線でもあるかのように、マイクの音量は0だし、カラオケ音源は最大なのでなおさら外には聞こえない。


「さてと、どうしようかね~。」


「とりあえず脱がしちゃえばいいんじゃないですか?」


「おまえら!!いい加減にしろよ!離せよこのカス!」


篠原は暴れたが、男の力には勝てなかった。


「離せって言われて離す奴がいるかよこのカス。」


「本当に、やめろ!なんでこんなことすんだよ!あたしに恨みでもあんのか!?」


篠原は恐怖を隠し、男に叫んだ。


しかし男は、ん~とわざと考えているような振りをして言った。


「なんとなく~かな~。ぶっちゃけお前俺の好みなんだわ。まぁそういうことで。」


篠原は気がついた。


マイクの音量を下げた男は、デジタルビデオを構えている。


録られる、男に犯されているところを録られる。


篠原のブラウスのボタンに男の手がかかった。


最後の抵抗と言わんばかりに篠原は男を蹴り飛ばした。


「…やりやがったな?ちくしょう、わかったよ。そんなに犯されてぇのか?ん?」


篠原は二人掛かりで体を押さえつけられた。

もう抵抗はできない。


出来ても体をひねるくらいだ。


篠原は絶望し、一筋の涙を流した。


既に篠原は下半身まで露出されていた。


あぁ、悔しい。

初めてがこんな形になってしまうなんて。

事の発端は府川だ。

あの男に合わなければこんな厄日はこなかったんだ。


ちくしょう…なんでこんなことになってしまったんだ…。


学校に居ればよかったなぁ。


そうすれば今頃こんなことにはなっていないはず…。


悔しい、悔しい、悔しい!!!



その時だった。


突然と部屋のドアが開いたのだ。


そして篠原はその開けた人物に目を疑った。



そいつは、府川だった。


「え?府川?」


府川は爽やかに笑って見せた。


「やぁ篠原、俺も さ ん か しにきたぜ♪」


「…っ!ふっざけんな府川ぁ!!」


「あ?なんだこのガキ?」


「あ、すいません、俺こいつにすっげぇ恨みあるんすよだから俺もやっちゃっていいすか?」


男四人は互いに顔を見合わせ、府川について何か言ってるようだった。


「おめぇ誰だよ、部屋に入ってくんじゃねぇよ。でてけよバーカっ。」


「いいじゃないすかー。」


府川は部屋に入ってきてドアを閉めた。

そして押さえつけられてる篠原に近づき篠原の露出されてるあそこを凝視した。


「みてんじゃねぇよ!!お前なんだよ!帰れよ!」


「へぇー、生って初めて見たわ。」


「おい、シカトしてんじゃねぇよ…っ!!!」



瞬間男の体が吹き飛んだ。


府川のアッパーが男の顎に綺麗に決まったのだ。


そしてそのまま府川が持っているマイクで二人目の顔面を殴りつけた。

ひるんだ男に間髪いれずにもう一度顔を殴りつけた。


「なにしてんだてめぇ!」


ビデオカメラの男が飛びついてくる。


府川は振り向き裏拳を繰り出した。

これもまた気持ちが良く男に当たり、鼻の骨をへし折った。

そのまま顎を思い切り殴り気絶をさせた。


「さて、お前以外は全員気絶しましたが?」


篠原を押さえつけてる男の顔が汗を勢いよく噴き出している。


「どうする?逃げる?まぁ逃がさないけどな。」


府川は男に近づいた。


「近づくな!近づいたらこいつがっ…!!!」


府川は男が言い終わる前に男の髪の毛を掴み思い切り横に引っ張った。

もう片方の手で男の人差指を掴み逆方向に曲げた。


「ああああああ!!」


篠原から離れたことで府川は男の顔を思い切り殴った。


男は吹き飛ばされ床に倒れた。


ふぅと府川が一息つくと府川は篠原に顔を向けた。


「パンツ…穿いたら?」


篠原はいきなりの府川の暴力になにも考えることができなかった。


「あのー、篠原ぁ?」


「…っ!お、お前何やってんだよ!」


「何って…、お前を助けにさ。」




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