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一話
篠原唯子が府川優大に出会ったのは高校2年の春だった。
学年が上がると行われるクラス替えで二人は偶然とも必然とも運命とも言えない、ただ単に同じクラスになっただけだった。
もちろんお互いの事は全く何一つわからない。
性格や見た目もまったく共通点がなく、二人とも住む世界が違うように見えた。
篠原は校則を破り、遅刻はする、髪は染める、ピアスをして登校、ミニスカ、たばこは吸う、成績は後ろから数えた方が早いところに君臨している。
一方府川は…これと言って特徴がない。篠原の様ないわゆる不良とは一切の関わりを持たないような、絡まれたらビビりながら自分の財布から現金を渡してしまうような印象かもしれない。
でもたったひとつ…。
二人には共通点があったのだ。
それは、絵を描くのが好きだと言うこと。