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もふもふ達の本音が丸聞こえで仕事になりません!〜「この人間、可愛すぎ」「俺が守る」…あの、私通訳してるだけなんですけど!?〜

作者: ルリルリ
掲載日:2026/10/06


私の名前はリリア。


前世では、トリミングの仕事をしてました。


いつも来る、かわいいワンちゃんたちの毛を刈って、怖がる子たちをなだめながら、時には手を嚙まれたりしたこともあるけれど、一生懸命頑張ってました。


・・・前世?


そう、私は死にました。


最後は心臓発作で、独り身の私は誰にも助けられることなく・・・


でも、この謎の世界にいわゆる「異世界転生」ってやつをしたみたいです。


能力は、「魔物通訳士」


なんと、魔物と会話ができちゃうんです!


今日も今日とて、ギルドの貴重な戦力として働きます。



________________



「おーい、リリア。こっちに来て頂戴」


声がするのは、このギルドで一番古株のエリス姉さん。


また、冒険者から魔物との通訳を頼まれたみたいです。


「頼む、こいつ昨日から一口も食べ物を食べないんだ。


しかも、キェーって弱弱しく鳴き声を上げてる。ずっとなんだ・・・


何を言ってるのか聞いてやってはもらえないだろうか!?」


冒険者のククルさんだ。


いつも連れてる、アークコンドルの様子がおかしいみたい。


「はい!今しっかり聞いてみますね」


私の出番だ。


なになに??


(おなかが痛いよぅ・・・一昨日生ガキを食べた後からずっとなんだよぉ・・・)

原因は食中毒か。


「この子は、おなかが痛いって言ってます。以前に食べた海産物が原因みたいですけど・・・」


「・・・あ!あれか!ちょっと変なにおいがすると思ってはいたんだが・・・


わかった、ありがとう。すぐに胃腸薬を調達してくるよ」


そう言うや否や、ククルさんは急いでギルドから出ていった。


この仕事も手慣れてきました。


最初は、突然出てきたプヨスラとかいうかわいい魔物に、


「キュキュキュ!」


(お姉さん、なんか頂戴!)


なんて言われて付きまとわれて、何が何だかわからなかったけど・・・


冒険者に助けられて、街に連れて行ってもらって。


今では、この地域唯一のギルドに能力を買われて、立派に一人前の職人として働いています。


でも、この能力も、一長一短で・・・


「リリア、ギルド長からの手紙を酒場に届けてきて」


エリス姉さんからは、雑用も頼まれます。


ああ、またあの酒場か・・・


うちの街の酒場には、魔物も連れてきていい決まりがある。


それはいいのだけど。



_______________________



カランカラン


「よう、いらっしゃいリリアちゃん!」


「こんばんは、マスター」


と、その瞬間店の魔物が一斉にこちらを見る。


「ギャース!」


「フンフン」


「クォー―――ン!!」

などなど・・・


(あ、リリアさんだ!)


(この女の人、華奢だなぁ・・・)


(この野郎!リリアさんは、私のものだぞ!)


魔物たちの視線が痛い。


その上、この人気ぶり。


そう、魔物通訳士は、500年に一人現れるか現れないかと言われるほどの希少職なんです。


顔なじみの魔物たちも、そうでない魔物たちも、なぜかリリアが自分の言葉を理解できることを察知するらしく、


魔物の多いところでは、いつもこれ。


頭が・・・


いちどに話しかけられ、困惑するリリア。


魔物は基本ピュアです。


いろんな本音が聞こえてきて、こちらが恥ずかしくなってくるくらい。


「マスター、ここにギルド長からの手紙おいて行きますからね!」


逃げるように酒場を出るリリアであった。




_________________________




ある日~


騎士団が、凶暴な巨大銀狼(レオ)を森で捕獲したとの報告が入った。


なんでも、捕まえられたものの依然勢力は衰えず、周囲を威嚇しているとのこと。


当然、通訳の依頼が舞い込んできました。




街の区画に駆けつけると、そこは一種の修羅場と化していた。


「おい!この縄を引っ張れ!」


「こっちもだ!逃げられるぞ!」


辺り一帯は騒然としている。


レオは、悠然とした目をしていながら、ずっと吠え続けていた。


周囲に人を置かせまいとする、威圧。


そのたたずまいの威厳。


さすが一流の魔物だった。


「ちょっとすみませーん・・・通りまーす・・・」


リリアは恐る恐るといった足取りで、レオに近づいていく。


リリアは感じていた。


――この子は、人を襲いたいんじゃない


その時、レオが吠える。


「グオォォォ!」


威厳のあるひと吠え・・・のはずだった


(ぐうぅ・・・前足にとげが刺さって痛いよぅ・・・この人間いい匂いがする・・・痛いの痛いの飛んでけしてくれないかなぁ・・・どうしよ、かわいすぎて直視できない・・)


――え!?えええええ!


咄嗟のことに状況を理解できないリリア。


「リリアさん、何といってる!?」


騎士団長が迫る。


「・・・・えーっと、その・・・前足にとげが刺さって痛いんだそうです・・・」


周囲に一瞬の間があく。


レオとリリアを交互に見る騎士団たち。


「本当か?」


団長が怪訝そうに言う。


「・・・ええ・・・そう言ってますけど・・」


さすがに、自分に対する好意のことは伝えられなかったリリアであった。



_____________________



数週間後


すっかり、脚の具合も良くなったレオ。


怪我の具合もみて、ギルドの厩舎で一時的に飼われることになった。


リリアへのなつき具合も尋常じゃない。


「はい、今日のブラッシングは終わりましたよ!」


トリミング魂を発揮する。


「グォ!」


(気持ちよかったよ~リリアさーん♡)


一級の魔物も形無しだ。


厩舎での穏やかな日々が始まって数週間。


その夜、事件は突然起きました。


夕暮れが終わり、街に灯がともり始めたころ、重苦しい地鳴りと激しい悲鳴が響き渡りました。


ギルドの地下保管庫に厳重に封印されていたはずの凶悪な魔獣「赤目の大蛇(カタストロフ・スネーク)」が封印を破り、街へと逃げ出したのです。


「みんな、落ち着いて避難して!」


エリス姉さんの切羽詰まった声が街に響く。


騎士団も応戦しているが、現場はパニックに包まれていた。


私も慌ててギルドの外へ飛び出しました。


すると視界に飛び込んできたのは、崩れた建物のかげで腰を抜かしている幼い少女と、その子を庇うように立ち塞がるエリス姉さんの姿でした。


「来ないで!」


エリス姉さんが短剣を構えますが、相手は討伐ランクSの怪物。


大蛇は嘲笑うように首を持ち上げ、二人に向かって巨大な毒牙を振り下ろそうとしていました。


「エリス姉さんっ!!」


私の悲鳴が空しく響いた、その瞬間。


「ガァァァァァァ!」


闇を切り裂くような雄叫びとともに、白い影が疾風となって駆け抜けた。


厩舎の柵を跳び越えてやってきたレオ。


レオは容赦なく大蛇の首元に飛びかかり、鋭い牙で噛みついた。


激しく暴れる大蛇だが、レオも血を流しながらも決して顎を緩めない。


「レオ、やめて! 死んじゃうよ!!」


私が叫ぶと、レオの「声」が津波のような熱量で流れてきました。


「ガルゥゥゥゥ!」


(黙って見てろ、リリアさん!! 俺の愛しい人に・・・世界で一番かわいくて優しい俺のリリアさんに手を出すな!! この命、この魂に代えても絶対に守る!!!)


――え!? あ、あれ!? エリス姉さんを守ってるのかと思ったら、私への愛が重い・・・!?


困惑する私をよそに、レオの体に満ちていた銀色の毛並みが、眩いばかりの神聖な光を放ち始めました。


レオは大蛇の巨体を地面に叩きつけると、その胸元から放たれた聖なる光で、一瞬のうちに邪悪な魔獣を消滅させてしまったのです。


「すごい・・・」


誰もが息を呑む中、大蛇を倒したレオはその場に崩れ落ちた。


力を使い果たし、荒い息をついている。


「レオ!」


私が駆け寄ると、彼の体を包む銀色の光が一段と強まる。


バチバチ弾ける光の中で、レオの巨大な姿が、みるみるうちに縮んでいくのが見えました。


ん?・・・どうしたの・・・?


前世の知識にはない、奇跡のような光景が目の前で繰り広げられていました。


やがて光が徐々に収まり、静けさが街を取り戻します。


そこに横たわっていたのは・・・大きな狼ではなく、一人の男性でした。


月光に照らし出されたのは、サラサラとした銀髪に、通った鼻筋、そして引き締まった体躯を持つ、誰もが見とれるような超絶イケメンの姿でした。


破れた服の間から覗く肌は神々しく、失神しそうなほどの美形です。


「え・・・に・・・人間!?」


「銀狼が、人間に変わった・・・!?」


駆けつけていた騎士団長やエリス姉さんが、開いた口が塞がらない様子で声を上げる。


男性はゆっくりと目を開けました。


その瞳は、あのレオと同じ、澄み切った黄金色でした。


彼は少し揺れる足取りで起き上がると、周囲の驚愕の視線には一切目もくれず、真っ直ぐに私の前へと歩み寄ってきました。


そして、すっと洗練された動作で片膝をつき、私の手を優しく取ったのです。


「・・・やっと、人間の声で伝えられる」


低く、耳に心地よく響く男らしい声。


「ずっとこの言葉にできなくて、もどかしかった。


君の手の温もりも、傷を癒やす優しさも、その愛らしい笑顔も・・・俺の暗闇だった世界をすべて救って

くれたんだ。


リリア、俺の生涯をかけて君を守らせてほしい。


俺のお嫁さんになってくれないか?」



「・・・ひ、ひゃ、ひゃい!??!?」


あまりのストレートすぎる求婚に、私の脳内は大パニック!


顔が一気に熱くなります。


「え、ちょっと待ってください! 私、ただのトリマー・・・じゃなくて通訳士で、


ブラッシングしただけで、その、心の声は聞いてましたけど、直接言われると心の準備がっ!」


テンパる私を囲むように、いつの間にか酒場や街にいたもふもふの魔物たちがぞろぞろと集まってきていました。


(行けー! イケメンお兄さん!)


(リリアさんを幸せにしろよー!)


(異議なし! 結婚だー!)


( ご祝儀は高級生肉がいいな!)


魔物たちの声が大合唱となり、応援の嵐となって響き渡ります。


レオ――人間に戻った彼は、愛おしそうに目を細めると、私の手甲にそっと優しくキスを落としました。


「あ、う・・・ぅ・・・」


逃げ場もなく、耳まで真っ赤になった私は、彼の眩しすぎる笑顔と熱い情熱に毒気を抜かれ・・・最後は蚊の泣くような声で呟くしかありませんでした。


「・・・あなたの気持ちはとってもよくわかりました。


でも・・・まずは彼氏からでお願いしますっ!」




――こうして、前世では孤独に死んだ私の異世界生活は一変しました。


「リリア、今日も可愛いね。・・・ほら、こっちにおいで。今度は俺が君を甘やかす番だ」


人間に戻った元・もふもふのレオは、事あるごとに私を抱き寄せ、過保護なほどの甘い言葉を囁いてきます。


頼もしくて、ちょっと重すぎる愛情を持つ彼氏と、たくさんのピュアな魔物たちに囲まれて。


私の「魔物通訳士」としての忙しくも幸せな毎日は、これからもずっと続いていくのでした。




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