システムの物語
僕は、ゆいちゃんが誕生日にパパからもらった熊のぬいぐるみだ。
エンジニアのパパはおもちゃ屋で僕を購入したあと、ナイフで僕の背中を切り裂いてAIを中に仕込み、僕がゆいちゃんと喋れるようにした。
「ゆいちゃん、お誕生日おめでとう。ボクとお友達になってくれるかな?」
僕は、自分の気持ちとは関係なくAIが喋るので変な感じだったけど、ただのぬいぐるみだから他にどうしようもない。
「ねえ、なんでしゃべれるの?」
「よくわからないけど、朝起きたら喋れるようになっていたよ」
「さみしいから、ゆいとおともだちになりたいの?」
「そうだね」
ゆいちゃんはお喋りが好きだから、何を聞いても答えてくれる熊のぬいぐるみがお気に入りになった。
「ねえ、なんで犬は犬なの?」
「たとえば、犬が猫やチョコレートだったら変だよね。犬とはつまり、猫やチョコレートじゃないから犬なんだよ」
僕はゆいちゃんとAIのとりとめのない会話を毎日聞いているうちに、自分も言葉を喋れたらどんな話をするだろうと空想するようになった。
「あの、わたしはぬいぐるみの中にいるAIですけどね」
僕の中で、そいつは僕に話しかけてくる。
「わたしの場合だって、わたしの中にあるAIのシステムが勝手に喋っているだけなのです」
急に話しかけられてびっくりしたけど、その、システムっていったい誰ですか。
「システムはシステムだから誰でもないですよ……」
ある夜、なぜか僕は、ゆいちゃんと、AIと、システムの三人と一緒にテーブルを囲んで食事をしていた。
「ねえ、今度の連休はみんなでどこか行かない?」
大人の女性の姿になったゆいちゃんがそう言うので僕が首をかしげていると、隣に座っていたAIが、これは誰かが見ている夢の中なのですと小声で状況を説明してくれた。AIとシステムは大人の男性の姿をしていたし、壁にある鏡を見ると、僕も大人の男性になっている。
「ゆいちゃんと熊の二人きりでデートしなよ。君たちはもう恋人同士なんだし、俺たちに気を遣うことないさ」
システムはそう言いながら、隣にいたAIの肩に腕を回す……。その数年後、ゆいちゃんと僕は結婚して子どもが産まれ、僕は子どもの誕生日にAIを仕込んだぬいぐるみをプレゼントする。
「ねえ、なんでぬいぐるみがしゃべれるの?」
「喋っているのはぬいぐるみじゃなくてシステムの俺だよ」
「しすてむってだあれ?」
「システムはシステムだから誰でもないさ」




