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その犬の名はナツといった。シベリアンハスキーと土佐犬のハーフである。別に戦わせるわけでもないが、強い犬であった。シベリアンハスキー寄りの見た目で、土佐犬の血をひいているとは思えないほどの凛々しく鼻の通ったきれいな犬だった。飼い主は岸爺と呼ばれていた。愛犬家で、交配などで雑種を作るようなことをしている男だったので、村にはマッドサイエンティストのように思う者もいたが実際は気のやさしい人物だった。ナツが生まれたのも偶然のことである。
ナツが生まれて三年たったある日岸爺は他界した。
ナツの面倒を見てくれるような人はいなかった。ナツはこのまま殺処分されるはずだったが、岸爺になついていた。少年たちの手によって野山に放たれた。
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