SF作家のアキバ事件簿240 ミユリのブログ 腐女子はウソつき
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第240話「ミユリのブログ 腐女子はウソつき」。さて、今回もアキバが秋葉原だったミレニアムの頃のスピンアウト編です。
全国の御屋敷を渡り歩く"はぐれメイド"が秋葉原に出現、爆乳で主人公を悩殺してヒロインはヤキモキ。ところが、実は彼女は超能力の持主で…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 風立ちぬ
僕がヲーナーを務める御屋敷"トラベラーズビクス"は今朝も開店直後から満員。モーニングのあるメイドバーって革新的ビジネスモデルだと自画自賛w
「3番テーブル、セット完了ょ!」
お皿を下げテーブルを拭くスピア。その目と鼻の先をコーヒーサーバーを手に悠然と歩くミユリさん。
「あの、メイドさん。すみません」
「はい。何でしょう、御主人様」
「コーヒーのおかわりを」
声をかける僕。オスマシ顔で答えるミユリさん。顔をぐっと近づける。鼻と鼻がくっつきそうな距離。
「コーヒーのおかわりですね?喜んで」
気取った素ぶりで答えたミユリさん。そのままキスをヲネダリと思ったらフフッと微笑んで歩き去る。
「ミユリ姉様、もう良い加減にしてよ」
傍らのエアリがボヤく。僕も同感w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「姉様が、他の覚醒したヒロインと戦う時、いつも最初は負けそうになるけど、アレはワザと?」
「うーん確かに最近パワーがヤタラ充実して負ける気がしないの。ソレに…」
「ソレに?」
御屋敷のアイドルタイム。ミユリさんとスピアの話にキッチンから割り込むマリレ。全員メイド服だ。
「テリィ様は、私が、その、あの、敗北しそうになって切なゲにしてるのがお好きみたいなの」
「え。テリィたんってヒロピンだったの?!」
「口に出してはおっしゃらないけど…でも、頭の中を覗くと、どーやらそーゆー妄想をなさってるのょ」
溜め息をつくミユリさん…ってか勝手に人の頭の中を覗くな!スーパーヒロイン、横暴だ。人権侵害!
「ソレで姉様はワザと苦戦して切なゲをアピールしてるワケ?呆れた」
「だって!せっかくパワーに覚醒したのょ?少しは自分の都合で使っても良いでしょ?ちゃんとアキバの平和"も"護ります」
「片手間?」
メイド達は天を仰ぐ。
「ま、テリィたんは正直だからヒロピンはハナから顔に出てたわ」
「で、テリィたんが御所望のミユリ姉様の敗北シーンはどんなの?」
「私が悪の女幹部に巨乳窒息固めをキメられて苦しげに喘ぐシーンょ。誰か手伝ってくれる?」
2人のメイドは声を合わせる。
「絶対イヤ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷にラギィが御帰宅。彼女は万世橋警察署の敏腕警部。僕とは前任地で"新橋鮫"と呼ばれてた頃からのつきあいだ…とゆーワケで、彼女も元カノw
「あら。警部、今日は何の御用で?」
コーヒーサーバーを手にホールを回っていたミユリさんが真っ先に声をかける。元カノvs今カノの絵w
「ミユリ姉様。コレにコーヒーを頼むわ」
ポットを差し出す。ポットを受け取り、サーバーから並々と注ぎ入れるミユリさん。余裕で微笑む。
「大サービスょ。はい、どうぞ」
「ありがとう」
「お邪魔したわね。では、ごきげんよう」
ラギィはお出掛け。直ちに始まる鳩首密議。
「ヤバ。ラギィは気づいてるわょスピア」
「え。マリレ、何のコト?」
「"時空ビーコン"が何かょ」
僕達が池袋の縄文アイヌから譲り受けた"時空ビーコン"はヒョンなコトから今、ラギィの手にアル。
「そもそもマリレが"時空ビーコン"を勝手に持ち出したりしなければ…」
「待って、スピア。何でもかんでも私のせい?」
「そこまで。2人とも今は仲間割れしてる場合じゃないでしょ?」
キッチンとホール、カウンターを挟んだメイド達のイザコザを笑顔で収めるメイド長。絵になるなー。
「だって!姉様、ビーコンを奪われたのよ?」
「でも、幸いなコトにアレが何なのか、警部には未だわかってナイわ」
「そりゃそうょ。何しろ私達にだってわかってないんだから」
僕達に託された渦巻き象形文字の描かれた石が、異なる時空をつなぐ"時空ビーコン"だと教えてくれたトポラは、突然姿を消して、今は生死も不明だ。
「ねぇ!何の話?」
ココで場違い金髪メイドの乱入だ。胸元に激しくVカットの入った谷間チラ見せのメイド服はティス。
黙殺沈黙と細目視線の十字砲火。
「あら?お邪魔だったみたいね」
「いいえ。そんなコトはナイ(カモしれない)わ」
「座る?ココに」
誰もがマジ座るとは夢にも思ってなかったミユリさんの隣にドンケツして割り込み座り。呆れる全員。
「ラッキー!で、みんなで何の話をしてたの?」
「…その前に何か飲み物でもどう?」
「あ。1オーダーだったわね。じゃ"Dr.ペッパー警部"をお願い。ライムを添えてね」
メイド達が腹の探り合いスルのを横目に、僕はティスのミダラな妄想をしてる。僕を見上げるティス。
「テリィたん。どうしたの?私の歯にお好み焼きの青海苔でもついてる?」
「いや、別に…ミユリさん。ちょっち良いかな」
「はい、テリィ様。でも、あの、私、未だ勤務中ですけども」
バックヤードに連れ込むとミユリさんは何やら期待して僕を見上げる。カチューシャを取り、いきなりキス!ミユリさんはウレしそうに身をクネらせる。
「ミユリさん。も少しキスさせて」
「喜んで。何なら変身いたしましょうか?」
「え。あのセパレートタイプの(ヘソ出し)メイド服?hallelujah!」
突然バックヤードに光のビッグバンが現出!次の瞬間、僕はヘソ出しメイド服のミユリさんとキスを…
あれ?相手が…全裸のティスに変わってる?!
激しく互いを貪るようなキス。学級委員タイプのミユリさんとは出来ない情熱的なキス…次の瞬間フラッシュバック!星空の砂漠で手をつなぐのは僕と…
全裸のティス?!
「テリィ王子…」
全裸のティスは巨乳をブルルンと震わせて微笑むが何処か切なゲだ。僕の顔を両手で優しく包み込む。
「…テリィ様。どうかなさいましたか?ビキニタイプの新しいメイド服、お気に召しませんか(貧乳なのでw)」
「え。え、あ。ソンなコトは…素敵だょ」
「やはり巨乳でないと似合わないですょね」
必死に寄せ上げした谷間を見て溜め息つくミユリさん。貧乳は最強スーパーヒロインの最大の弱点だ。
「もう1度、キスさせてください。ちゃんと頑張りますので。お勤めを果たさせて」
「お勤めって…いや、ミユリさん。もう大丈夫だ」
「え?では、また何か画像をご覧になれたのですね?アキバで腐女子がスーパーヒロインに"覚醒"する謎に迫れましたか?」
ミユリさんはマジメだ。正直な学級委員タイプ。
「え。いや、そうなんだ。いいや、でも、実は何も見えなかったンだょ少し疲れてるのかな」
「テリィ様…ヲタクなのだから無理はしないで。私、お給仕に戻ります。おでこにキスを」
「ミユリさん、ごめん」
目を瞑るミユリさんのおでこにキス。すると、彼女は微笑み、その唇が"またあとで"と優しく動く。
第2章 世界線の異なる女達
「トポラょトポラ。ト・ポ・ラ」
ラギィ警部は自分のオフィスで電話中だ。手には渦巻き象形文字が描かれた石。"時空ビーコン"だ。
「いや。ソチラに入院してるハズなの。え?担当医の許可が必要?では、マルゴ先生に代わってください。重要な話です…外出中?それなら伝言を。万世橋警察署のラギィ警部に至急連絡を願います。トポラと話したがっていると。もしもし?」
唐突に切れる通話。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「やあ、エアリにティス。元気か?」
"マチガイダ・サンドウィッチズ"はホットドッグステーション。YUI店長がメイド達に声をかける。
「エアリ。あの店長さん、貴女にベタ惚れょ」
「そう?良い人よ」
「ソレはヲタ友として良い人?ソレとも、もしかして恋人候補に昇格スル可能性アリの良い人?」
休憩時間にやって来たエアリとティスのメイド同士の井戸端会議。ティスはトランジスタ超グラマー。
「さぁ今は何とも言えないわね。ティスこそ、秋葉原でビビっとくる御主人様はいなかった?」
「ナイわ。でもね、ココだけの話だけど、テリィたんって結構タイプなの。私、あーゆー陰のあるタイプに弱いの」
「え。テリィたん?陰がアルって何?」
笑い転げるエアリ。失礼だろ。陰ぐらいアルぞ!
「とにかく、テリィたんはムリょ。ミユリ姉様一筋ナンだから。こんな気持ちになったのは初めてだ、死ぬまで推すとか、いつもノロけてる。もう聞いてらんないわ」
「…じゃアレは勘違いだったのかしら」
「アレ?アレって何?」
ニッコリと微笑むティス。
「ううん。何でもナイわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「萌え、とは何か」
ズラリ整列したメイドを前に"萌え"を語る僕。御屋敷のヲーナーとして月に1度の朝礼の御時間だ。
「…つまり、萌えとは2つ以上の感情が互いに刺激し合い、酸化に拠り最高点に達し、微熱を発しながら萌え続ける現象を逝う」
誰も聞いてナイ。ミユリさんだけが微笑んでるが、恐らく完全に聞き流してる。その時、照明が明滅。
「どーやら誰かが有り余る超能力を使いたくて仕方ナイようだね。では、今日から僕達の新しい仲間を紹介して、お給仕を始めるコトにしよう」
ミユリさんの顔からフト笑顔が消え、最前列のティスをチラ見スル。何かマズいコトが起こる前兆か?
「先月まで大阪の日本橋でメイドをやっていたティスだ。挨拶を」
ミユリさん含む全メイドの視線を浴びながら、僕の方へ歩いて来るティス…おや、何処からともなく中近東の音楽が…メソポタミアの血が騒ぐ。そして…
「テリィたん…萌えて!」
何とベリーダンサー風メイド服のティスは、お腹と腰を超振動させクネらせながら、僕に迫って来るw
hallelujah!
「ベリーダンスょ。女神崇拝のために巫女達が踊る世界最古のダンス。ソレがベリーダンス!」
簡潔に説明を叫びながら僕に絡むティス。ミユリさんは言葉を失い、みんなの目も点になる。その中でヲタク魂を解き放ち、ただ1人、踊り狂うティス。
「萌えて!萌えて!Blabo!」
「え?何?ブラジャー?」
「Fire!」
そう叫んで僕に飛びつくティス。両股で僕を挟み上半身で踊り狂う。僕の目の前で左右に揺れる爆乳。
「テリィたん…」
ミユリさんは目をむきスピアは辛うじて声を出す。欲望をむき出しの僕はカウンターにティスを推し倒す。すると、彼女は四肢を開き全てを受け入れる。
「来て!欲しいの、熱いテリィたんの…」
僕の熱い?ティス!僕の熱い何が欲しいのだ?
「テリィたん!萌えてるの、貴方のシャツが」
瞬時にワレに返る。VIP用キャンドルの火がシャツに萌え移ってる。あぢぢぢぢ…シャツの袖が炎上!
「スピア、初期消火員でしょ!泡消火器!」
ミユリさんが叫んで瞬時に泡まみれになる僕。ティスは…微笑んでいる。悪戯好きな小悪魔のように。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
トラベラーズビクスの従業員用トイレ。ミユリさんはルージュを引き、スピアは洗面台に腰掛けてる。
「スピア。そんなワケあるハズないわ。アレは…単なるテリィ様のウッカリょ」
「いいえ、ミユリ姉様。私が初期消火した時のティスのテリィたんを見る目、絶対普通じゃなかったわ」
「…あのね。私はテリィ様の"推し"で、テリィ様は私のTOなのょ?そんなの気にスル必要ナイわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じく僕とエアリも腰掛けているが、コチラはマチガイダのベンチシート。苦手な朝礼を終え休憩中。
「スンゴク気になるンだょティスのコトが。最近の僕って変だょな、エアリ」
「そうね。テリィたん、珍しく目が血走ってるし」
「いつものラギィのコトじゃなくてティスなんだょ。最近次から次へと妄想が浮かんで仕方がないんだ」
ナゼかネイルを磨きだすエアリ。
「妄想?姉様が悪の女幹部の巨乳窒息固めで切なく敗北スル奴?」
「(え。何でソレをw)うん。まぁ…違うけど、最近の妄想の中で僕とティスは、その、あの、つまり、いつもセックスしてルンだ」
「欲求不満なのね?ミユリ姉様と最近ウマくいってないワケ?姉様が巨乳じゃナイから」
ソレを逝っちゃあヲ終いょ。
「あのね。私達"覚醒"したスーパーヒロインって、もう普通の腐女子じゃないの。でも、ヲタクの方は、相変わらずヲタサー姫に免疫がないママね」
「あのさ。人は誰でも、愚かな連中と違い、自分だけは賢いと信じて疑わない。その習性を無視してジュッパヒトカラゲに扱うのはヤメてくれ。とにかく!僕とミユリさんは、最高の推しとTOの関係を築いてる。何も心配はイラナイさ」
「良かった。じゃ心配しナイわね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
従業員用トイレ。いつのまにかミユリさんとマリレは横並びの洗面台にそれぞれ座り脚をブラブラさせる。
「…テリィ様は、次から次へと、その、あの、ティスとのセックスを妄想してるのょ」
「待って、姉様。ソレって単なる被害妄想なんじゃないの?姉様、テレパスだっけ?」
「私、テレパスとしてのパワーは確かに弱いけど、何となくワカルの」
結局テレパスなのね。呆れるマリレ。
「考えないようにと思っても、勝手に頭に浮かんで来ちゃうのょテリィ様の妄想が」
「はい。この話はそこでお終い。ラギィの手に大事な"時空ビーコン"が渡ったの。そんな被害妄想の話なんかしてる場合じゃナイわ」
「だから!ソレがただの妄想じゃないの。ティスには全てを見透かされているような気がする。彼女は一体何者なの?」
TOの推し変に怯える地下アイドルの図w
「もぉヤメて。そんなコトで悩んでる場合じゃないでしょ?」
「そーなの?やっぱりマリレに相談したのが間違ってたわ」
「待って。姉様」
スタスタ歩き去るミユリさん。慌てるマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋。ラギィ警部のオフィス。
「はい、ラギィ警部…何?虎ノ門で?…わかったわ、ありがとう」
大型モニターのスイッチを切り替える。
「…火災のあった虎ノ門精神病院の前です。今、なお鎮火せズ、既に逃げ遅れた入院患者6名の死亡が確認されています」
ポッドキャストTVのローカルニュースだ。蒼い髪のニュースキャスターが火災現場からレポート。
「…出火の原因は現在調査中ですが、放火の可能性もアルと思われています。また、新しい情報が入り次第お伝えします。現場からセンジ・トョンがお伝えしました」
虎ノ門精神病院で火災?スマホを抜くラギィ。
「万世橋のラギィょ。バッジNo.7820378。大至急虎ノ門病院のマリヌ先生をお願い…最優先。コード5」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
虎ノ門精神病院の火災現場。ホルヒ15のダッシュボードでスマホが鳴動。駆け寄る白衣の医師。女医?
「はい。マルゴ・リンダです」
「センセ!万世橋のラギィです」
「…どなた?」
意外な反応だ。
「万世橋警察署のラギィ警部です」
「あぁ昨日お電話いただいた方ですか?」
「キャサ・トポラと話をさせてもらえますか?」
回答はラギィを驚愕させる。
「残念ですが、キャサ・トポラさんは、今日の火災で亡くなりました」
「亡くなった?…センセ。先週お会いした後、何か不審なコトでも起きたのですか?」
「先週お会いした時?どーやら誰かと誤解してらっしゃるようね。私は、秋葉原に行ったコトもなければ、貴女とお会いしたコトもありません。では、失礼します」
いきなり通話は切れる。言葉を失うラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通りの"タイムマシンセンター"。僕はバイト先で開館準備中だ。ソコへラギィがやって来る。
「どした?未だ準備中だけど?」
「…やっとテリィたんの気持ちがわかったわ。辛い時に誰にも相談出来ないってキツイわょね」
「おいおいおい。何かあったのか?」
元カノの相談にノる親切な元カレw
「昨夜、虎ノ門で火事があったの。謎組織のエージェントだったトポラが入院してた精神病院も萌えて、キャサ・トポラが死んだわ…きっと殺されたのょ。事故に見せかけて」
「え。事故ではないと?」
「YES。テリィたんはどー思う?先日、トポラを迎えに来た主治医のマルゴ医師を覚えてる?昨夜、センセに電話したんだけど、センセは私と会ったコトも秋葉原に来たコトもナイと言うの。じゃマルゴ医師にナリスマシ、私達と話をした女はいったい誰だったの?」
確かに。
「あのね。あの時、モノホンのセンセはココからメトロで何駅も離れたトコロにいた…昔、ママがよく言ってたわ。姿を自由自在に変えるスーパーヒロインがいるって」
「そんなの作り話だろ?」
「そう言い切れる?トポラが言ってたじゃない?秋葉原の地下で"覚醒"した、私達とは異なる世界線を持つスーパーヒロインを狩る謎組織がアルって。その謎組織は、組織の存在を秘匿スルために罪もない男女を6人も殺した。リストの話も聞いたでしょ?謎組織のリストには、ミユリ姉様にエアリとマリレ。スピアに私の名前まで載っているらしいわ。あ、多分テリィたんも」
何で僕が最後?…多分?
「"リアルの裂け目"の影響を受けた全員の命が危険なの。ねぇテリィたん。助け合わない?私を信じて。謎組織の手は直ぐ近くまで迫ってる。こうしてる間にも、私達のコトを監視してるカモしれないわ」
力説するラギィ。その姿を何者かが画像で確認している。謎組織?南秋葉原条約機構が謎組織なのか?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マチガイダ・サンドウィッチズ。ボックス席を占領し一心不乱にPCを叩くスピア。何をしてるのか?
突然現れたマリレが画面を覗き込む。
「スピア。いったい何をやってるの?」
「マリレこそ何で尾いて来るの?」
「別に」
答えになってないw
「スピア。百合って先ずヲ互いを信じ合うのが1番ょね?だから、ヲ互いに隠しゴトはナシ。別に百合でいたくないって言うんだったら構わないけど」
「ま、待って!わかった。ちょっと気になって、少し調べてみたの…ハッキングして」
「貴女、ハッカーだったの?」
アキバ育ちのスピアはストリートギャングのサイバー屋をやってた過去がアル。その筋の経験は豊富w
「テリィたんから相談されたの…ほら、私は百合になる前はテリィたんの元カノだったから」
「ソレで…何をハッキングしてるの?ねぇ教えてょ。私達は百合でしょ?」
「今のセリフ、忘れないでね?とにかく!何かつかんだら、チャンと知らせるから待ってて」
愛用PCのフタをパタンと〆る。マリレは溜め息。
「…ソレだけ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東秋葉原の古いタワマン。駅前にヒルズが林立スル前の話で、スピアはサイバー屋だった頃の腕前で監視システムをヲフにしタワマンに侵入、目的地へ。
ドアをノック…答えは無い。
直後に高速EVの扉が開き、コート姿の女と武装兵の1団が降り立つ。危うく死角に隠れたスピアの目の前で女達は部屋に突入。兵士2名が立哨に立つが…
「ライフルの銃口がラッパ型に開いてるわ。アレが対スーパーヒロイン用に開発された音波銃かしら。この人達が私達を狩る謎の軍隊なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィ様と私は、ずっと、その、あの、セックスのパートナーだったけど、この間テリィ様が袖を萌やしてから、もしかしたらって…いいえ。別にヤキモチではナイのです。だって、TOがいなくなったら困るので…」
御屋敷のバックヤードで上目遣いに僕を見るミユリさん。メイド達はホールに出て他には誰もいない。
「ミユリさんが僕の推しであるコトは間違いようのない事実だ」
大きくうなずくミユリさん。
「ですが、テリィ様。ティスが日本橋からやって来てから、物ゴトのバランスが急速に崩れ出したように思います。あ、別にティスのせいだと逝っているワケではありません…」
「ミユリさん。ティスの話はもうヤメようょ…」
「テリィたん!その方が良いカモ!」
ソコへ飛び込んで来るスピアw
「姉様、テリィたん。ティスはスパイょ!」
「スパイ?スピア、何を逝ってるの?」
「ティスのアドレスのタワマンに行って来た。そしたら…彼女の家は空っぽだったわ。家具がナイどころか、人が住んでいる形跡は何もなかった」
小鼻を膨らますスピア。エアリが異議を唱える。
「きっと引っ越して来たばかりなのょ。あのね。やっとヲタ友が増えそうなのに、スパイ呼ばわりスルのはヤメてくれる?」
「エアリ。私が訪れた直後に、音波銃で武装した謎の軍隊がやって来たわ。スーツ姿の女はブリーフケースを持ち、兵隊達は銃口がラッパ型に開いたライフル銃を持ってた」
「だからって、その人達が秋葉原の地下で異なる世界線を持つスーパーヒロインを狩る謎の軍隊とは限らないでしょ?」
僕は、大きく溜め息をつく。
「テリィ様、何か?」
「実は、今朝ラギィが来てトポラが殺されたと逝っていた。少なくとも、ラギィはそう思ってるようだった」
「あのね、テリィたん。何でそーゆー大事な話を黙っていたワケ?」
詰め寄るメイド達w
「ソ、ソレは確証のナイ話だったからだよ。下手にパニックを起こしたくなかった」
「だからって元カノとコソコソ会ったり、新恋人のティスと脳内セックスをするのはヤメてくれる?」
「え。テリィ様が脳内セックス?」
何なんだょその脳内ナンチャラって。ミユリさんの目が険しくなった、その時…何とラギィが現れるw
「ラギィ?何しに来た?」
「ヲタクに信じて欲しければ、まず自分がヲタクを信じなきゃ。そーよね?」
「ソ、ソレは…」
ラギィがポケットから取り出したのは渦巻きヒエログリフの入った石?"時空ビーコン"じゃないか!
「テリィたん。コレを貴方に託すわ」
息を飲むメイド達。だが、ラギィは真っ直ぐ僕だけを見てる。"新橋鮫"の鋭い眼光が眼底を射抜く。
「私、テリィたんの返事を待ってるから」
そう逝い残し、バックヤードから去る。
「ふーんテリィたん。新しいヲ友達がいっぱい出来たのね…ってか古い元カノともズイブンと仲が良いじゃナイの」
「余計なお世話だ。とりあえず、ティスのコトを調べないとな。誰が逝く?」
「…任せて。私が行くわ」
エアリが志願スル。
第3章 闇に葬られた物理学上の大発見
続々家具が運び込まれる。ヤタラ統制のとれた屈強な男達が黙々と働く。彼等はマジで引越屋なのか?
「こんにちは」
開け放しのドアをノックするエアリ。メイド服だが今日は客。引越屋をかき分けティスが飛んで来る。
「エアリ!いらっしゃい、来てくれたのね!」
「来ちゃった。ティス、元気?」
「元気よ。ずいぶん散らかってるけど、ごめんね。
荷物が来るのが1週間も遅れちゃって。これでやっとホテル暮らしから解放されるわ」
引越の理由を簡潔に説明。
「素敵な遮光器土偶ね」
ピアノの上に置かれた土偶を指差すエアリ。
「縄文ルネサンス期、第27次サンナイM共和制の頃の仏陀。コレでも女神ょ。超古代のスーパーヒロインって感じ?」
「縄文ルネサンス?」
「YES。ざっと9000年経ってるわ…少しはお役に立てたかしら」
奥から出て来た女性がティスの肩に手を置く。
「ママょ。超古代のガラクタを集めるのが趣味」
「あら、ガラクタじゃナイわ。骨董品ょ。貴女がエアリね?ウワサ通りの美人メイドさんね」
「テイスさんはじめまして」
握手を交わす。
「テイスさんはヤメて。ヲバさん臭いわ。エンリと呼んでくれない?」
「あ、わかりました。エンリさんね?秋葉原には、
どんなお仕事でいらしたのですか?」
「ソレを知ったら命はナイわ」
突然、空気が緊張でピンと張り詰める。身構えるエアリ。ところが、次の瞬間ホスト母娘は大爆笑だ。
「ママの定番のジョークょ。人をギョッとさせるのが大好きなの」
「何か極秘のミッションについてると思った?」
「ママは、アキバ特別区の大統領府で働くコンサルタントよ。何しに秋葉原に来たのかちゃんと話して」
ママに促すティス。
「大統領府が所有スル不要な不動産を転用させるが仕事なの。ほーら退屈な仕事でしょ?」
またまた母娘で笑い転げる。苦笑いするエアリ。
「ねぇ気をつけて!超古代の遺物ょ!…ちょっと失礼スルわね」
引越し屋?の若者を叱責するママ。大きなペンギンの木像だが…遮光器をつけてるw異次元ペンギン?
「あぁソコの荷物はアッチでお願いします。アソコの奥には、この…」
「私もお手伝いいたします」
「触らないで!」
善意で手伝いを申し出たエアリに、ほとんど憤怒の表情を浮かべ怒鳴るママ。エアリはドン引きスル。
「ごめんなさい。ママったら私の友達を怒鳴るナンて…あのね、エアリは、お客さんだから手伝いなんかさせられナイって意味ょ」
「そ、そーなの?」
「ねぇソーダでも飲む?」
瞬時に笑顔に戻るママ。逆に不気味。エアリを残しキッチンに消えるティス母娘。今度は瞬時に真顔。
「ティス。彼女は何しに来たの?」
「友達だモノ。どーせ顔を出しただけょ」
「何処かで会った気がスルわ」
遠い目になるママ。エアリは…実は妖精で、地球が冷え固まった頃からアキバの辺りを徘徊しているw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷の2Fはメイド長のオフィスになっていて小さなバルコニーがついている。壁のダクトを登ってバルコニーに入る。中にいるミユリさんと目が合う。
「テリィ様…何か御用ですか?」
「ミユリさんと話がしたくて」
「どんな?」
カチューシャをとったミユリさん。扉を薄く開けて僕を招き入れ小首を傾げる。大好きな萌える絵だ。
「昼間、マリレが逝ってたコトだけど、僕はティスのコトは、何とも思ってないよ。僕にとって、ミユリさんこそ運命の推しだ。ミユリさんが音波銃に撃たれたフリをして僕を巻き込み、そして僕達が推しとTOの関係になったのも全て運命さ。僕を見て。僕の推しはミユリさんだけだ。今までも。これからも」
一気にまくしたてキスに持ち込む。余裕で唇を許すミユリさん。僕達はキスを味わうように唇を貪る。
「あぁ…テリィ様…」
喘ぎ声。しかし、僕の胸に顔を埋めながら、ミユリさんが遠くを見ていたコトに、僕は気がつかないw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
突然の夜の雨。僕は、ベランダから地面に降りて、雨の中をメトロへと急ぐ。冷たい雨が肩を打つ。
「テリィたん!車が故障したの。手を貸して!」
ティス?
見ると路肩に停まったシュビムワーゲンのボンネットから白い煙が噴き出てる。僕は横を通り過ぎようとしたが、びしょ濡れのティスの声が追って来る。
「ねぇ!ちょっと見てくれないの?」
「断る」
「え?」
呆気にとられるビショ濡れティス。
「僕は信じないぞ」
「何を言ってるの?」
「どーせ作戦だろ?」
僕は詰問スル。
「作戦って?」
「何もかも君の作戦ナンだ」
「テリィたん。話がピーマンで、何が言いたいのかサッパリわからないけど…何か変ょ」
トボケるティス。逃がさない。
「僕をどうする気だ?」
「どうするって…シュビムワーゲンが雨の中で立ち往生してるの。手を貸して欲しいだけょ。作戦って一体何のコト?」
「僕にはミユリさんがいる」
僕は、一歩一歩ティスに近づく。
「ええ。知ってるわ」
「ミユリさんを推してルンだ」
「えぇソレも知ってる」
2人の顔が接近スル。
「僕にはミユリさんしかいないンだ」
「わかってるわ!2番目で良いの」
「2番目?」
唇を差し出すティス。そして、雨の中でキスwその瞬間、目が眩むようなフラッシュバックが起きる!
「ティス…君は何者だ?誰なんだ!」
雷鳴の中で僕は叫び、ティスは…微笑んでいる。ソンな僕達をベランダからミユリさんは見てしまう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
雨が激しくなって、僕は深夜のマチガイダに逃げ込む。中ではマリレがチリドッグを食べている。
「テリィたん?何でビショ濡れ?」
「助けてくれ。自分ではどうしようもないんだ」
「でしょうね」
まるで関心のないエアリ。
「今…ティスにキスしてきた」
「何ですって!ミユリ姉様は知ってるの?」
「まさか!知ってりゃ今頃僕は黒焦げさ。とにかく!僕の意思じゃナイ。僕はティスの力場に作用スル強い磁力線に引かれている。僕は、コレを"万有磁力"と呼んでいる」
おぉ何だかノーベル賞級の物理法則の発見ポイ。
「万有重力だか饅頭引力だか知らないけど、ティスに出逢ったのも、ミユリ姉様を裏切ったコトも全部重量のせいだと言うの?ヘタな浮気の言い訳にしか聞こえないけど!」
「エアリ。お前にしか相談出来ない話なんだ。自分でも理解出来ない現象が起きてる。が、しかしコレはあくまで物理現象に過ぎない」
「浮気男の言い訳ってマジでムカつく。相談するんだったら、元カノでお友達のラギィ警部にしたら?物理学は苦手そうだけど」
頭を抱える僕。
「おいおいおい。いつまでコダわってルンだ。またラギィの話かよ。彼女は"時空ビーコン"を返してくれた。もう僕達の敵ではないカモしれない」
「あら、そーなの?味方だと思うんだったら全部バラせば?元カノだけど」
「あのな!僕は、君達スーパーヒロインのコトは誰にも話してナイ。モチロン警察にもだ。何度話せばわかってくれルンだ」
力説スル僕。だが、エアリも負けてナイ。
「あのね!コレだけは覚えておいて。私は、テリィたんを尊敬してた。ワタシ以上に意思が強くて信頼出来る存在だと思ったから寝たの。なのに今のテリィたんは何?出てってょ!せっかくのチリドッグがマズくなるわ」
「ホットドッグヲタクに最大の侮辱をthank you。だが、僕は妖精がイク時に翅を七色に輝かせるのを見た最初で最後の人類ナンだろ?とにかく!僕の話を聞けょ」
「嫌よっ!離して!おまわりさーん!」
エアリは背中の翅を広げて飛び上がり、すがりつく僕を突き落とす。ドシンと落ちた僕の目の前に…
ポトリw
何か落ちて来る。縦横数mmのチップだ。どこかに隠されていたのか?盗聴器?ソレにしても小さい。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「コレは"ニュートリノ走査器"だ。愛読してるヲカルト雑誌"ラー"の11月号付録"最新スパイ事典"に拠れば最新式の動体探知機であらゆる物質を透過するニュートリノを使って半径2.74m以内の動体を探知し音声を拾う…しかし、誰がこんなモノをホットドッグ屋に仕掛けルンだ?チリドッグのレシピを狙うライバル店か?」
「まさか。万世橋じゃナイの?」
「ニュートリノだぜ?最新式の超高価なモノだ。所轄の年間予算じゃ全額使っても買えないよ」
深夜のマチガイダ。メイド達が集まる。
「きっとティス母娘だわ。私達を追う謎組織なら買えるでしょ?あのトポラが所属してた、あの、えっとナンだっけ?南秋葉原条約機構?」
「マリレ、ソレはナイわ。私が調べたモノ。母娘のタワマンが空っぽだったのは、引っ越しの荷物が遅れたせい。私が行った時にちょうど家具を入れてるトコロだった。ママは、シングルマザーで少し神経質、確かに変人ポイけど、所詮は一般人ょ。軍用車で現れたり、音波銃の立哨がいたりしたけど、ママが軍のコンサルタントの仕事をしてるからだった」
「軍の?ほーら、つまりスパイってコトね?」
エアリに突っ込むマリレを制して僕は確認。
「そのシングルマザーには、何か怪しい点はなかったのか?」
「なかったわ…いいえ。実はマジ1つだけ気になるコトがあった。私が引っ越しを手伝おうとしたら、ティスがエラい剣幕で"触るな!"って怒鳴ったの。アレは普通じゃなかったわ…あ、姉様!コッチょ」
「エアリ。え…テリィ様も?」
御屋敷を〆て来たミユリさんもマチガイダにやって来る…が、僕を見て顔を曇らせ無視して歩き去るw
「ミユリさん!」
僕はボックスシートから飛び出し後を追う。
「あらあら。エアリ、姉様達は何かあったの?」
「うーんテリィたんにとっては謎組織ドコロじゃナイわねウフフ」
「マジ?私、前からテリィたんに姉様はMOTTAINAIと思ってたの。あくまで地球環境的な視点からの意見ナンだけど」
地球環境?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マチガイダを飛び出したミユリさんが逝くトコロ…ソレは御屋敷のバックヤードだ。背後から近づく。
「ミユリさん。僕は…」
「テリィ様。私、昨夜2人が路上でキスをしているのを見ました」
「ぎゃ!」
その瞬間、ヲタクSwitch on!
瞬時に、目前の1番大好きなモノに全身全霊を守り抜き、そのためならあらゆる犠牲、己が廃人になるコトも恐れない。ソレがアキバのヲタクの身上だ。
「ミユリさん。あのキスは違うんだ」
「何が…何がどう違うの?」
「アレは、最近発見された物理学上の大発見"万有磁力"の法則に基づく物理的な現象でアリ、ソコに推しとかTOとかは関係ナイ。モチロン推し変の事実も皆無」
「あの…"万有磁力"って?」
学際的に興味を示すミユリさん。さすが学級委員w
「YES。とにかく、あのキスは僕の意思じゃない。全て最近発見された物理法則"万有磁力"のせいなんだ。ティスは、僕を待ち伏せしてた」
「ソレはもう聞きました。で、"万有磁力"とは?」
「そうだったね。"万有磁力"とは、ヲタクと腐女子の乳を含む2人分の体重に比例し、目覚めた時の顔の距離の2乗に反比例スル物理法則ナンだ。最近発見され、恐らく来年のノーベル物理学賞にノミネート…」
ミユリさんの顔がみるみるハンニャ化w
「だ・か・ら?全部ティスのせいだと逝うの?その"何とか磁力"は、私の放つ電光も曲げる力場なのですか?実験しますか?物理的に今、ココで!ねぇテリィ様!」
no thank you。
「昨夜、私に語った"君しかいない"って、アレは
ウソだったのね?」
「ミユリさん、聞いてくれ。ティスは何処か普通じゃ無いンだ」
「ティスに誘惑されておいて、今さら彼女が普通じゃないってどーゆーコトょ?!」
絶叫するミユリさん。人類は"覚醒"したスーパーヒロインがキレるのを初めて見る。僕は神に祈るw
「…確かに僕は"万有磁力"に操られて、ティスに魅力を感じた。でも、ソレはミユリさんから"推し変"スルとかじゃ無いンだ。お願いだから、僕を信じて欲しい」
「どうやって?」
「何が起きているのか、必ず理由を突き止める。実は、キスしたらまた例の"絵"が見えたんだ」
目を剥くミユリさん。僕はソレを誤解←
「貴方、ティスとキスした時に"絵"が見えたのね?私とキスした時みたいに…つまり、貴方はキスの相手は誰でもよくて、私は特別な存在ではなかったってコトなのね?」
地雷だっ!…と思ったけど時、既にお寿司w
「ミユリさん!」
泣きながら2階に駆け上がって逝く彼女。立ち尽くす僕。今後"万有磁力"の話をスルのはヤメよう。
かくして、世紀の大発見は歴史の闇に消える。
第4章 マジでガチなセックス
メイド長個室で膝を抱えて泣いているミユリさん。夜だというのに開いてる窓から入って来るスピア。
「姉様、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわ。もうどーしたら良いのかワカラナイの」
「…マリレが姉様の近くにいてあげてって…ロケットガール装備でベランダまで送ってくれたの。ねぇ何があったの?」
ヲタ友に心を開くミユリさん。
「テリィ様がティスとキスしたの」
恨みガマシイ目でスピアを見詰める。スピアは暫し絶句してから、激しく首を横に振って大噴火スルw
「マジ?ウソでしょ?信じられない!テリィたんって…まさか何て人なの?ショックだったわね。あのティスって女、巨乳だから」
「そーなの。でも、テリィ様がソンな理由で浮気スルとは思えないし…私、頭の中がぐちゃぐちゃなの。助けて」
「何か理由があるんじゃないの?」
泣きじゃくるミユリさん。ハグするスピア。
「姉様まで元カノにならないで。元カノは私達だけで十分ょ。コレからどうスルつもり?」
「わからないわ」
「どんな時でも私は姉様の味方よ」
スピアは元カノの鏡だな←
「不思議なの。確かにテリィ様は私を裏切った。でも、私の心の中では、ソレは違うって誰かが叫んでるの。私は、ホラ、ウソをつけない学級委員なスーパーヒロインだから」
「姉様。テリィたんがどーゆーつもりかワカラナイけど、いつも私達は、自分の心の声を信じるべきなんじゃないかな」
「…私、何が起きてるのか突き止めたい。真実を知りたいの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
メイド長個室からホールに降りて来たスピアは、カウンター席の僕と目が合う。視線をソらされる僕w
「スピア。あのさ…」
「テリィたん。あのマイクロチップ、ニュートリノで動体を感知し、画像化して衛星軌道に転送スル高性能スパイメカだった」
「な、何?衛星軌道?」
衛星軌道は、実は僕の勤務先がアルけど、ティスのタワマンの画像を送ってどーする?誰が見るんだ?
「画像転送はマイクロ波で、衛星回線にはスクランブルがかかってる…あ。私、こーゆーの大好きなの。ストリート育ちのサイバー屋だから」
「スゴいな。単なるスクールキャバ"チョベリバ"のナンバー嬢だと思ってたょ」
「とにかく!このチップには偏光作用のあるアイリス機能のついた広角レンズ付きデジタルカメラがついてる。しかも、動体感知にはニュートリノを使ってるわ」
僕の感心は別のトコロにアル。
「僕の鼻、ヤタラ大きく見えるな」
「テリィたん。またポルノか何か見てるの?」
「マリレ…わぉスゲェ」
キッチンから顔を出すマリレ。広角カメラの画像はまるで重いバストをカウンターに載せてるようだ。
「わぉ!私ってグラマーだと思わない?」
「広角レンズで見ればな」
「あ、そ。で、ソレは何に使うワケ?」
スパイデバイスからの画像を映すPCからスピアの手のひらの上に載ってるチップに目を移すマリレ。
「ティスを見張ルンだ」
「嫌だぁテリィたん、土砂降りの雨の中で、濡れたTシャツのティスとキスしたんだって?次はストーキング?もー未練タラタラなのね」
「スピア。テリィたんだけ責めないで。ティス母娘は謎組織"南秋葉原条約機構"の回し者カモしれないわ」
意外な助け舟がマリレから出航。だが、元カノ隊長のスピアにタチドコロに叱られ助け舟は沈没スル。
「マリレ!何ソレ?この間チャンと約束したコト、もう忘れたの?何かつかんだら直ぐ教えるって約束でしょ?」
「あ。忘れてた。メンゴ」
「とにかく!当面の問題は、どうやってチップを仕込むかょ。因みに、画像をモニターしながら監視出来そうな廃ビル倉庫を見つけたわ。問題は、どうやってティスのタワマンに忍び込むかょ」
ココで、百合相手のマリレをジロリと見るスピア。
「あらあら。私達はチームでしょ?何か良い方法を考えましょ。こーゆー時は、この場にいない人に仕事を推しつけるのが世の常ょ一般人の場合は」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
チャイムの音。タワマンのドアを開けるティス。
「ミユリ姉様?」
カチューシャから靴までオール黒コーデのメイド服だ。ティスもメイド服。何しろココはアキバだし。
「入らせてもらっても?私、実は貴女に話したいコトがあって来たの」
「どんなコト?」
「つまり、ソレはテリィ様のコトなんだけど、ねぇ聞いても良いかしら?貴女、今までマジなガチ恋をした経験はある?」
身構え、慎重に答えるティス。
「セックス?今さら処女だとは言わないけど、引っ越しばかりしてるからセフレ以上の仲になったコトはナイわ。モチロン決まったTOもいなかったし、テンポラリーな友情だけよ」
「私は、どうしようもない位テリィ様を好きなの」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってょ姉様。どーして私にソンなコトを言うの?重いわ」
いきなりスペシウム光線?慌てるティス。さらに直球を投げ込まれて、完全にミユリさんのペースだ。
「テリィ様が貴女とキスをしてるのを見たわ」
「あぁアレ?そうだったの…ごめんなさい。自分でもどうして泥棒猫みたいなコトをしたのかビックリしてるの」
「今日、ココに来たのは、貴女と2人でキチンと話すべきだと思ったからよ。つまり、貴女の気持ちをハッキリ確認しておきたかった。だって、貴女はエアリのヲタ友だし、出来れば仲良くしたいから」
明確な今カノ宣言だ。ミユリさん、超強気w
「私だってそうよ!エアリとヲタ友になれて超ウレしいと思ってるし、姉様のコトも大好きよ。2人の仲を邪魔スルつもりなんてアリません」
「そーなの。なら良かったわ。ほら、テリィ様は私のTOだし、あんなキスをしたのは初めてだから」
「テリィたんと2度とキスしません」
屈辱的な約束させられるティス。
「…ねぇ何か飲まない?お水とかソーダとか」
「ダージリンを」
「OK」
お茶を淹れに消えるティス。ミユリさんは素早く周囲を見回しピアノの上の仏像の下にチップを隠す。
「スピア、聞こえる?」
「姉様。音声良好、画像も拾ってるわ」
「マズいわ、ナセラょ」
廃ビルの前線基地でスピアのPCを囲む面々。ミユリさんの背後に突然ナセラが姿を現してドン引く。
「ヤバいわ。チップを隠すトコロを見られた?」
ミユリさんの背後からツカツカと歩み寄るナセラ。ソレに全く気づかないミユリさん。突然の声かけw
「ソコで何をしてるの?」
「え…あ、ごめんなさい!」
「あぁ仏像が!」
勢いよく振り向いたミユリさんはピアノの上の仏像を床に落としてしまう。木っ端微塵に砕ける仏像。
「画像が!」
廃ビルの前線基地でも叫び声が上がる。急速に落下スル画像は、衝撃音と共に砂嵐画像にチェンジw
「な、何なの?」
「チップが破損したンだわ」
「ヤバ。どーしよー?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。仏像を落とした直後の現場。
「ああっごめんなさい!ホントに眺めてただけなんですけど」
「ミユリさん、気にしなくて良いわ」
「何の音?どーしたの?」
キッチンからティスが飛んで来て息を飲む。
「嫌だママ。大変だわ」
「ごめんなさい!私、すぐに片付けますから」
「ミユリさん。後でやるから良いわ」
仏像の破片を掃き集めるナセラ。フト気づくと彼女もメイド服だ。母娘でメイド服。何しろココは(略)
「でも、私が今すぐ…」
「良いと言ってるでしょ!」
「ママ!」
氷のような叱声に凍りつくミユリさん。とりなすティス。数秒が経過してからヤニワに微笑むナセラ。
「ホラもう夕食の時間でしょ?良かったら一緒にどうかしら?」
「え。夕食?」
「ま・さ・か、断らナイわょね?」
ナセラの背後でティスもニッコリ微笑むが…目が笑っていない。何か罠?敢えて飛び込むミユリさん。
「はい、お言葉に甘えて。でも、御屋敷に連絡させてください」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「今すぐティスのタワマンへ行きましょう」
「え。何しに行くの?」
「決まってるでしょ?ミユリ姉様を救出スルのょ。ティス母娘は秋葉原のペルソナ・ノン・グラータ…」
メイド達の意見はまとまらない。
「今行くのは危険よ。あの母娘は謎組織の手先カモしれない。良くて万世橋?」
「こうなったのは私達が姉様を送り込んだからでしょ?私達の責任で助けてあげなくちゃ」
「助けるって…姉様は秋葉原で最強のスーパーヒロインだモノ。何も心配は要らないわ」
確かに。だが、経験的に変身したミユリさんが絶好調なのは、僕とラブラブの時…のような気もスル。
ソレが今は…
「とにかく!姉様にもしものコトがあっても無くても援護は必要ょ」
「じゃ約束して。無茶なマネして姉様を危険な目に遭わせたりしないって」
「約束する。とりあえず、前線基地をタワマンまで進めましょう。ソコから様子を伺えば良いわ」
バタバタと準備が始まる。フトつぶやくマリレ。
「待って。テリィたんには何て言う?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スマホ鳴動。珍しいな。僕の番号を知ってるのは…
「スピア?」
「え。何?テリィだけど。ミユリさん?」
「あ。スピアね。ナイト、出れなくなったわ」
何だ?シフトチェンジの間違い電話?
「今ね、ティスのタワマンなの。お食事をいただくコトになったわ。シフト変わってくれる?」
「何?どうしてミユリさんがティスのタワマンに…乗り込んだの?」
「そうなの!夕食をご馳走になるコトになったわ。万事解決したわ。だから、お願いね」
ミユリさんは、僕の話を遮り、明らかに何か芝居を打っている。スマホの向こうで何が起きてるのか。
「ミユリさん。何があったんだ?」
「スピア。昨夜話したコトだけど、やっぱり貴女が正解だった。ティスと腹を割って話せてホント良かったわ」
「何を逝ってルンだ?元カノと今カノが顔を合わせて良いハズがナイだろ!」
スマホ通話をニコリともせズにジッと見つめてるティス母娘。その緊張感がスマホから伝わって来る。
「ミユリさん。今すぐ助けに逝く。待ってろ」
「そーなの?ありがと。助かるわ」
「とにかく!時間を稼げ」
快活に通話を切るミユリさん。
「わかったわ。ありがとう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
夜の首都高上野線を疾駆スル赤いキューベルワーゲン。先にタワマンに着いたのはメイド達の方だ。
「エアリにマリレ。タワマンの中の様子は?」
「うーん確かに夕食中ね。ポテトを回してるわ」
「まぁアメリカンね」
高層階の窓から様子を伺う妖精とロケットガール。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ソレでミユリさん。秋葉原ではどんな推しゴトを?あ、もうポテトは結構」
「御屋敷です。私はメイドなので」
「ミユリさんはメイド長なのょ」
ティスの紹介にうなずくナセラ。
「メイド長?偉いわね。何処の御屋敷?」
「トラベラーズビクスです。時空旅行者のための宿と逝うコンセプトの」
「まあ!老舗のメイド長サマなのね。時空旅行者ってマジでいると思う?」
意地悪な引っ掛けQだが、ミユリさんは即答。
「いいえ。まさか」
「美人のメイド長か…TOはお幸せね」
「ママったらヤメてょ失礼だわ」
ティスが笑顔で割って入るが、決して質問を遮ってはいない。ナセラの質問は未だ継続してる状況だ。
「TOはどんな方かしら」
「どんなって。別に…普通のヲタクです」
「ヲ名前は?」
口をつむぐミユリさん。ティスがバラす。
「テリィたんっていう方。国民的SF作家なのょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「テリィたん?何でココに?」
ピンクのケッテンクラートで乗り付ける僕。
「ミユリさんから電話があった」
「テリィたんって…電話に出ない人でしょ?ってか、電話はいつあったの?」
「詳しく話してる暇はナイ。今から突入してミユリさんを救出スル」
その場の全員が激しく首を振る。
「ヤメて。絶対マズいコトになるわ」
「姉様もソレは望まないし」
「今以上にマズいコトなんかナイ。母娘がSATOならミユリさんは人体実験されるカモしれない」
誰も反論出来ない。みんな内心は心配なのだ。
「でも、ソレでテリィたんまで捕まってしまったらどーするの?」
「ソレで推しが助かるならTOとして本望だ」
「…行ってあげて。推しのために」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
食事中、僕は未だかとドアを振り向くミユリさん。
「どーも仏像を壊したのが気になるよーね。だったら、少し片付けて来るわ」
ナセラが立ち上がる。慌てて後を追うミユリさん。
「待って!私がやります」
「良いから貴女は座ってなさい」
「でも、壊したのは私だから申し訳なくて。弁償します。おいくらですか?」
チリトリで掃除を始めるナセラ。
「大丈夫ょ。保険に入っているから」
「じゃ後は私がやります…」
「良いって言ったでしょ!」
思いがけない怒声が飛ぶ。瞬時に張り詰める空気。ナセラは睨みつけるようにミユリさんを見ている…
ソコへチャイム。
ナセラはチリトリを放りドアを振り向く。仏像の破片入りのバケツを床に置き、ドアを開けると僕だ。
「こんばんは」
「あら。どなたかしら」
「テリィたん?」
ナセラの後ろから首を出すティス。
「テリィたん?貴方がミユリさんのTO?(このTOじゃ美人メイド長にはMOTTAINAIわw)」
「テリィたん。何でミユリさんがココにいるとわかったの?」
「ミユリさん?ココにいるのか?僕は、ティス、君に用があって来たんだ」
その隙に、ミユリさんは脱臭剤の金色の粒が入っている皿の中にニュートリノ走査機を潜り込ませる。
「私に?私、テリィたんに話ナンかナイわ」
「君に無くても僕にはアルのだ」
「あのね。この前は、貴方がどうかしてただけよ。もう忘れましょ?」
ナーイス。食いついてくるティス。
「そうだ。2人ともどうかしてたんだ」
「テリィ様。その件ならマジ解決したから、もう良いの。一緒に帰りましょ?」
「ダメだ。ミユリさんは1人で帰ってくれ。僕はティスにどーしても話がアルんだ」
とっても良い形で話が進む。しめしめ一石二鳥←
「テリィ様。私からもお願いします。話はもう決着がついたの。私とティスの間の遺恨は解消しました。だから…お願いだから一緒に帰って!」
素晴らしい。完璧なシチュエーションだ。
「ウーンわかった。じゃミユリさん、帰ろう」
「あら?もう帰るの?残念だわー」
「(断固)帰ります」
決然と立ち去る僕とミユリさん。後に残ったティス母娘は…フト顔を見合わせ不気味に微笑を交わすw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
タワマン前に路駐してたキューベルワーゲン。待ってたみんなに迎え入れられる僕達。ハグまたハグ。
「姉様、大丈夫?」
「良かった!マジ良かったわ!」
「さぁ帰りましょ」
キューベルワーゲンに乗り込む。その様子を物陰から望遠カメラで撮影しているのは…ラギィ警部だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
廃ビルの前線基地。ミユリさんの仕掛けたニュートリノ走査機から送られる画像を交代で見張ってる。
今は僕とミユリさんの番だ。
「ミユリさん、ありがとう。僕を信じてくれて」
「…だって、信じるしかナイのです。悔しいけど」
「あぁわかるよ」
実は何もワカってナイw
「でも、テリィ様。テリィ様が爆乳のティスとキスした事実は消えないわ。真の理由がワカルまで、テリィ様を心から信じるコトは出来ません」
ウーン流石は学級委員。固いなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに深夜。当番はマリレとスピア。画面奥に唐突に現れたティス母娘はベリーダンスを踊っているw
「何?何なの?…みんな、来て!」
ワラワラ集まる僕達を尻目に、画面の中の母娘ベリーダンサーズはグランドピアノの周囲を踊り回る。
ガラガラガラ…
ティスが壊れた仏像の破片が入ったバケツをグラピの上に開ける。破片の山を崇めるように踊る母娘。
「見て。様子が変よ」
「どうした?」
「わからないけど…何してるのかしら」
爆乳、ヘソ出しコスプレの母娘が両手を破片の山にカザすと破片がグルグル渦を巻きながら宙を舞うw
いつの間にか…仏像は元通りになっている。
「コレって…どーゆーコト?」
全員が息を呑み、ドン引きし、顔を見合わせる。何処か遠くで、怪しく切なゲな尺八の音が聞こえる…
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"魅力的な転校生"をテーマに、ボーイミーツガール的なヤキモチ系モテモテ群像劇となりました。ハッキリ申して、描くのが楽しくてたまりません。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりイレズミ系インバウンドが増えた秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。




