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届いた想い①

私は自分の耳を疑った。

 自分の知る烏丸遼という男は隠し事が苦手な男のはずだった。

 だが今の発言はどうだ。

確かに、「自分も不老不死になっても」という言葉を言った。

それは私が知らなかったことであり。

 兄ちゃんが初めから知っていたという証拠であった。

 八尾比丘尼の先祖返りである私は思う。

 不老不死という言葉、意味がどんなに残酷なことを指すのか。

死があるから生があり、生があってこそ死があってこそ成立するのだ。

 つまり今の私は生きているとは言えない。

言うなれば、生きる亡霊のようなものだ。

 少なくとも、人間というカテゴリーの中に入るということは難しかった。

 だけど、人間扱いを受けていなかった私は大した傷つくことはなかったのだ。

 なぜなら、それが日常茶飯事だったから。

ここ数ヶ月の温かさに触れて幸福を知ったけれど、トラウマを短期間で克服できるとは限らない。

 温かさを受け入れただけで傷が癒えるわけがないのだ。


何故だか、裏切られたような気持ちに私はなった。


これなら今までの優しさは全て嘘でした、と言われた方が私は傷つかなかった。

 自身に対してそんなくだらない覚悟を持ってほしくなかった。

当たり前に生きて、泣いて、笑って、怒って、そして死んで欲しかった。

 なのに──

私はたまらなくなってその場を逃げ出した。


信じていたわけじゃなかった。

でも出来るなら、信じたいと思っていた人が烏丸遼──兄ちゃんだった。


私は烏丸の森の結界を出る。

 行く宛てなんてないが、とにかくここに居たくなかったのだ。

式神を出し、空へと逃げて行く。


私のこの行動は愚策だったと言える。

兄ちゃんは確かに私にこう言った。



──逃さない、離さない、と。



遼は両親と話をしている途中で、「あれ?」と声を出した。

 結界から雫が帰ってきた気配がしたというのに、また結界から出て行ったのが分かったのだ。

結界を張っていることはもちろん、当主である遼だ。

 だからこそ感じとることが出来た。


「どうしたのよ?遼」

「…雫が屋敷に入らず何も言わないで何処かに行った」

「まさか、今の会話が聞かれていたんじゃないのか?」

「…もしそれが本当なら、雫は鬼ごっこがしたいのかな」


あくまでも笑顔で言う。

 だが、目は全く笑えていなかった。

あれほど言ったというのになぁ、と思いながら遼はゆっくりと立ち上がる。


逃げることも、離れることも許さないと。


その意味を雫は本当の意味では分かっていなかったようだ。

彼女は知らない遼の異常なほどの執着心にも見える愛情の深さ。

遼は何事もなかったかのように玄関に向かい、下駄を履く。


「ちょっと鬼ごっこしてくる」

「ちょっと遼…」

「そっとしといてやりなさい」

「僕はきちんと言ったんだよ?でも聞かなかった雫は今回は悪いよね」


屋敷を出ると漆黒の両翼が背中から生えてくる。

 そして鬼天狗にしか現れない額の両角が今日は生えていた。

いつもは雫に見せない鬼天狗の本来の姿。

 瞳は紅く、短髪だった髪は腰まで長くなっていた。

見た者を圧倒させる絶対的な姿。


鬼さんこちら、手の鳴る方へ。


鬼でもある遼が本気で鬼ごっこをしようとしている。


──絶対、捕まえてあげる。そして、分からせてあげる。


遼はそう決心し、翼を広げて大空へ羽ばたいていった。


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