表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS戦姫 黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
6/27

灰鉄小隊


―――基地の外はまだ寒く、雪がしんしんと降り積もっていた。


戦姫の体をもってしても感覚が残っている為に、その寒さにエルリィは縮こまる。

そんな寒さの中にありながら、エルリィの視線は、今自分がいる高台の下。

そこには、『要塞』から逃げ出す無数の男たちが、命からがらと言った体で走っていた。

その様子を、エルリィは見守る事しか出来ない。

「奴らはこちらの軍が保護する」

そんなエルリィに、戦姫となっている篝がそう声をかける。

「それより、早く先に向かうぞこの先で、味方と合流する手筈になっている」

「味方って・・・『竜殺しの刃』のですか?」

「まあそうなんだが、詳しい事はあとで話す」

そこで、要塞内部に残っていた剣太郎が戻ってくる。

「篝、内部にいる男は全員、牢から脱出した。が、全員無事とはいかねえみたいだ」

「流石に、戦姫相手に逃げ切れる訳がないか。仕方がない」

篝は踵を返す。

「っ!助けないんですか?」

「そこまで余裕はない。全員を助けられる程、俺は強くない」

はっきりと言う篝に、エルリィは何も言えなくなる。

「行くぞ」

篝の言葉に、剣太郎は迷いなく従い、エルリィは一度振り返った後、篝たちのあとを追いかけた。

そうして、しばらく進むと、人ひとり分の大きさを持つ岩を見つけ、そこに三人の人影を見つけた。

白髪の少女、茶髪の女性、そして、金髪の女。

「おせぇぞ」

黒いジャケットとフードを深く被った白髪の少女が、ガラの悪い顔で篝たちに向かってぶっきらぼうにそう言う。

「何してやがった」

「まあまあ、篝も篝で大変だったんだから、労ってやろうじゃないか」

へその出たシャツと短めのマントを着こんでいる茶髪の女性が、その美貌に反して胡散臭いセリフで白髪の少女をなだめる。

「潜入任務お疲れ様です、篝団長」

そして、軍服姿の金髪の女が、柔和な笑みを浮かべて篝に声をかける。

「ああ、お前たちも、周囲の警戒に別ルートからの潜入諸々、ご苦労様」

篝もまた、彼らに向かってそう返していた。

そのまま篝は金髪の女に近寄ると、その金髪の女から、何かを受け取った。

「お預かりしていた方たちです」

「ああ、ありがとう」

それを受け取った後、篝はエルリィの方を見て、彼らを背に、声をかける。

「エルリィ、紹介しよう。俺の直属の部隊にして、『竜殺しの刃』随一の戦姫たち『灰鉄小隊』だ」

その言葉と共に、彼女(かれ)らの視線が一気にエルリィに向けられる。

それにエルリィは思わずたじろぐ。

「・・・んで?こいつはなんなんだよ?」

白髪の少女が、フードの下から鋭い眼光をエルリィに向けた後、篝の方を見る。

「要塞の中で見つけた掘り出しもの」

「掘り出しもの!?」

とんでもない紹介の仕方に、エルリィは思わず驚く。

「んな事聞いてんじゃねえよ。どうしてそいつを連れてきた?足手まといはいらねえぞ」

その言葉に、エルリィは思わず俯いて左腕を掴んでしまう。

「今後の調査の一助になると思い、連れてきた。最も、本人次第だがな」

そう言って、篝は手を掲げると、突然、その掌が光り出し、そこから、何故か防寒着がその姿を現す。

そしてその後、変身を解いた。

黒髪の美女から、光に包まれてから、あの男の姿へと。

「さむっ」

「当たり前だろ」

流石に薄着一つでこの極寒の世界の放り出されるのは流石に堪えるらしい。

出てきた防寒着を着こんで、篝は白髪の少女を見る。

「お前が即攻撃に入らないのを見るに、お前の『耳』にもこいつは無害だと感じている訳だ」

「あんまりにも弱過ぎてな」

その少女の辛辣な言葉に、エルリィの心はズタズタのボロボロだった。

「危険はないんだろう。ならば戦姫状態でいる必要はない。全員、戦姫状態を解除してよし」

篝の命令に、他の者たちも応じる。


黒髪の女である剣太郎が、女顔の美青年に。

白髪の少女が、目付きの鋭い少年に。

茶髪の女性が、ロン毛の青年に。

そして、金髪の女は、そのまま金髪の女に。


それぞれが、共通の黒の軍服風の防寒具に身に纏い、雪上にその姿を現した。

そんな彼らを前に、エルリィの感想はこうだった。

「・・・一人だけ女の人?」

「最初に言う事がそれですか!?」

「聞いて驚け灰鉄小隊の紅一点だ」

「篝さんも篝さんでふざけないでください!」

興奮していた金髪の女が、咳払いを一つして落ち着いた後、務めて冷静に挨拶をする。

「改めて、灰鉄小隊隊長『ルクス・ジーフリト』です。『竜殺しの刃』では、副団長の地位も頂いています」

金髪の女―――『ルクス・ジーフリト』。

「俺は『セドリック・フェンネル』。灰鉄小隊の狙撃担当だ。撃ち抜いて欲しい奴がいたら、俺に言ってくれ」

茶髪の青年―――『セドリック・フェンネル』が、そう言って見せる。

「・・・・」

「こいつは『シモン・リンクス』。爆撃及び索敵担当」

「おい!俺の許可なく勝手に紹介すんじゃねえ!」

篝に勝手に紹介された白髪の少年―――『シモン・リンクス』。

「改めて、雨依剣太郎だ。こんな顔だが一応、男。ここじゃあ切込み役、つまりは斥候を担当してる」

女性と見紛う容姿を持つ男『雨依剣太郎』。

以上が、篝の言う『灰鉄小隊』のメンバーなのだろう。

一気に紹介され、思わず呆然としてしまうエルリィだったが、すぐに我に返って、頭を下げる。

「え、エルリィ・シンシアです。よろしくお願いします」

そう言って、エルリィは自らの名を明かした。

「んで?そいつをなんで連れてきたんだよ?」

古代兵器文字(オプロヒエログリフ)が読めるそうだ」

シモンの質問に答えた篝の言葉を聞いて、灰鉄小隊の顔色が変わる。

「古代兵器文字が読めるんですか!?」

「マジか!?」

「・・・!?」

「だとしたら、お前が連れてきた理由もわかるな」

その反応に、エルリィは嫌な予感を感じ取った。

「ま、まさか、また、私を・・・」

「だからお前次第だと言った」

篝は、エルリィの方を向いて、指を立て、説明を始める。

「まず、古代兵器文字については知っているか?」

「・・・よくは、知りません」

「ならそこから始めよう。古代兵器文字とは、世界各地で発見されている強力な能力を持った兵器に刻まれている文字の事だ。この文字は、兵器一つ一つに必ず存在するが、どれも規則性も法則性も無く、尚且つ兵器同士どころか、兵器一機にある全ての文字に同じものが何一つとして存在しない為、解読不可能とさえ言われるほどの難解さを持っている。世界中の学者たちが日夜その文字の解読に苦しんでいるレベルの代物だ」

と、篝は説明を続ける。

「ただ、唯一分かっているのは、古代兵器文字を読める、及び兵器を起動させるには、兵器起動の『鍵』となるコードスキルを持った戦姫が必要になる」

「戦姫が、必要?」

「そうだ。古代兵器一つにつき一人。必ず存在する対となる戦姫がいて、初めて古代兵器はその力を発揮する事が出来る。そして、その兵器に記載されている古代兵器文字を読めるのは、その兵器の『鍵』を持つ戦姫だけ・・・つまり、お前はその古代兵器の『鍵』となるコードスキルを持っている可能性が高い」

篝の言葉に、エルリィは左腕を握り締める右手にさらに力を入れる。

「ラーズ」

「はい」

篝の呼びかけに応じて、篝の体から光の玉のようなものが飛び出し、それが一人の少女の形を成して、その場に降り立った。

銀髪の少女、ラーズグリーズである。

「あの要塞に古代兵器、もしくはそれに関わるものはあったか?」

「現物は存在しませんでした。しかし、妙な事に世界中で発見されている古代兵器文字のデータが所長室の個人データベースに存在していました。おそらく、彼女にこれを読ませたものと」

「それだと特定が難しそうだな」

「ただ、一つだけ、特定の地点にポイントされた座標データを入手しました」

「だったら次の目的地はそこだな」

そこまで会話してから、篝は再びエルリィと向き直る。

「という訳で、俺たちはこれからそこに向かう。ただ、さっきも言ったように、お前は古代兵器の『鍵』を持っている可能性が高い。そうなると、必ずお前はその兵器の為に利用されるだろう。それは、俺としても帝国としても見過ごす事の出来ない事態になる。だから、そうなる前に鍵となる戦姫を確保する。もしくは、殺して使用不能とするの二択になる」

エルリィの背筋に悪寒が走る。

「っ・・・」

「ただ、俺としてはお前相手に後者の手段はとりたくない。だが、お前を見逃すという手もない。何しろ古代兵器は、それ一つで人を殺すのはもちろん、町を滅ぼし、人を恐れさせ、国を支配する力を持つ。古代兵器一つで国のパワーバランスがひっくり返るとも言われているほどだ」

だから、と篝はエルリィを鋭く見つめて続ける。

「お前を見逃す事は出来ない」

「・・・・」

篝の言葉に、エルリィは俯く。

(この人も、私を・・・)

まるで裏切られた気分で、失望が胸中を満たす。

しかし、ふと、エルリィは要塞の中で篝が言ったことを思い出す。


『顔を上げろ』


思い出して、顔を上げる。

そこに立つ、男の顔を見て、エルリィは思う。

(でも、この人は、他の人たちとは違う目の色をしてる・・・)

何人もの、『悪い色の目』を見てきた。自分を嘲笑い、愚かだと蔑む顔ばかりを見てきた。

笑顔の裏の悪意が明け透けて見えるようになった。

けれど、目の前の男に笑顔はなく、ただ真剣な眼差しがそこにあるだけだった。

ただ、誇張も卑下もない。ただエルリィという少女を等身大のままに見ているように、エルリィ自身は感じていた。

(この人なら・・・)

「まあ」

篝が話を続け始める。

「見逃さない、と言っても、このまま俺たちについてきてもらうか、あの男たちを保護する為に国境際まで来てる軍に保護させるか、という二択はあるんだが・・・」

「・・・ついて、いきます」

エルリィは、左手を胸に当てて、喉奥から言葉を振り絞った。

「その古代兵器の起動を阻止できれば、いいんですよね?」

「破壊は最終手段だ。最善は確保だが、状況によっては、二度と使えないようにするのが最善だ」

「だったら、私も行きます」

エルリィは、生まれて初めての感情に突き動かされる。

(今はただ、この人の役に立ちたい)

「決まりだな」

「いいのかよ」

シモンが、不満そうに割り込む。

「こいつ、アホみたいに弱いぞ。そんな『鍵』をわざわざ連れて行くなんて何考えてんだよ」

シモンの指摘は最もだった。

「いつも通りだ」

しかし篝はなんでもないように返す。

「俺が守ってお前らが攻める。何も変わらない。こいつの身は俺が守る。お前らはいつも通りに暴れればいい」

「よく言うぜ」

篝の言葉に、セドリックがくっくと笑いながらそう返す。

「だが、俺は別に反対はしないぜ。もし何かあったら、俺がそいつを狙い撃ってやるさ」

しかし、すぐにそう同意してくれる。

「私も異論ありません。それに、彼女がいれば古代兵器の能力やその破壊方法を知る事が出来るかもしれません」

ルクスも続いてくれる。

「俺の意見は聞かなくてもわかるだろ。篝についていく」

剣太郎もまた、頷く。

最後に残ったシモンに、全員の視線が集まる。

それにシモンは、不機嫌そうに頭の後ろを掻いて、諦めて承諾する。

「分かったよ。好きにしやがれ」

そして、ラーズは篝の傍で、その無表情を僅かに綻ばせて、小さな笑みを浮かべて篝に言う。

「私は貴方のリンカーです。貴方の望みのままに、従うだけです」

「いつもありがとう、ラーズ」

『ボクたちの事も忘れないでよー』

そこで、どこからともなく、聞き覚えのない声がその場に響き渡る。

『わたしもいるよ~』

『私の事も忘れないでほしいぞ、卿よ』

『当然、私もいるからね』

「はいはい、分かってるから少し黙っていろ」

「・・・え、誰?」

エルリィは、その声に心底驚き、混乱していた。

「あー・・・そろそろ移動しよう。ルクス、説明任せた」

「私に丸投げしないでください」

篝がエルリィの質問をルクスに投げたので、ルクスは額に手を当てて呆れていた。

そんな中で、篝は再びエルリィの方を見て、右手を差し出す。

「・・・?」

「どれくらい一緒にいるか分からないが、しばらくはよろしく頼む」

差し出された手の意味に、エルリィは首を傾げ、なんとなく、同じように右手を差し出し、その手を握った。

雨依剣太郎

年齢 十八歳

性別 男

身長 180㎝ 女性Ver175㎝

容姿イメージ 『パニシング:グレイレイヴン』の『ルシア』

『好きな食べ物』カレー 『嫌いな食べ物』クサヤ

『特技』仮面作り

実は背中に鴉の入れ墨がある


シモン・リンクス

年齢 十六歳

性別 男

身長 165㎝ 女性Ver163㎝

容姿イメージ 『パニシング:グレイレイヴン』の『カレニーナ』

『好きな食べ物』ローストチキン(超激辛)『嫌いな食べ物』ゴーヤ

『特技』歌

実は歌を通して動物と会話可能


セドリック・フェンネル

年齢 二十二歳

性別 男

身長 185㎝ 女性Ver180㎝

容姿イメージ 男性Ver『ガンダム00』の『ロックオン・ストラトス』 女性Ver『アークナイツ』の『メテオ』

『好きな食べ物』鹿肉 『嫌いな食べ物』特になし

『特技』射撃

実はかくれんぼ名人


ルクス・ジーフリト

年齢 十八歳

性別 女

身長 165㎝

容姿イメージ 『崩壊3rd』の『デュランダル』

『好きな食べ物』ドーナツ『嫌いな食べ物』特になし

『特技』訓練

実は猫好き

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ