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TS戦姫 黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
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ジャッジアクティブ、クロスライズ

改めて、対峙して思い知る、天城篝という男の大きさを。


『竜殺しの刃』の団長、帝国を変えた男、悪魔―――肩書は、きっとまだあるのだろう。

そんな、頂点に立つような存在というものは、どうしてそこにいるだけで凄まじい存在感を放つのだろうか。


エルリィは、その理由をまだ理解出来ていない。


「「おおぉおおおおお!!!」」

エルリィとリーシャが、それぞれの得物でもって篝に襲い掛かる。

しかし、篝には一切の攻撃が入らない。

「このっ!」

リーシャが付き出した剣の刃が、篝の目前で砕け散る。その砕けた無数の刃が、まさに散弾となって篝に向かって放たれる。


結晶流儀―――桜吹雪


その背後から、エルリィが終穹を構えながら篝の退路を断つように後ろに陣取る。

しかし、篝はそんなエルリィを軸にするように回転しながらエルリィの背後へと回る。

「な!?」

(死ぬ!?)

迫るリーシャの散弾。エルリィはそれを大慌てで全部叩き落とす。

そのエルリィの背に篝の背が激突する。

「わぁあ!?」

「邪魔!」

吹っ飛ばされたエルリィを飛んで躱し、その状態で回転して再形成した刃で篝に切りかかるも、吹っ飛ばしたエルリィに引っ付いていた篝がその振り下ろされた剣を持った手の手首を掴んで、そのままエルリィに向かって投げる。

「うげ!?」

「ぐぅ!?」

そのままもつれるように倒れた二人。

『このっ!』

そこへエイオス『ストライクプログレス』が右手の銃砲を向ける。だが、その前に、

「うぅ・・・ん?」

エルリィが、体が何かに引っ張られる感覚を覚えた。

それは、篝がエルリィの背後に回るときに巻き付けた細いワイヤーだった。

「なぁぁあ!?」

「なんっ!?」

そのままリーシャごと吹っ飛ばされるように引っ張られたエルリィは、そのままプログレスとの間に置かれるように引っ張られた。

『な!?』

プログレスはその為、銃を撃つことをためらう。

そのまま篝が取り出して構えたのはなんとバカでかい『砲』と見紛うスナイパーライフル。

分かりやすく言えば『対戦車ライフル』である。

それを、立ったままプログレスに向かって放つ。

『うお!?』

スラスターを吹かしてなんとか躱すが、それでもプログレスに乗るヴァンは戦慄する。

(どこまで読んでんだこの人!?)

コックピットから告げられるアラート。それは、篝が二丁目の対戦車ライフルで狙っている事を示していた。

それでも撃たないのは、ルールとして定めた『こちらから攻撃しない』という制限を忠実に守っているから。

だが、もしこれが実戦であれば、今ので死んでいた。

その上、倒れているエルリィとリーシャにも追撃しようと思えば追撃出来た筈だ。

「舐めてくれるわね・・・」

「リーシャ、一人だけじゃ篝さんには敵わない。協力してなんとかしよう」

「なんとかって、どうするつもりよ!?」

「リーシャ、少しの間だけ一人で足止め出来るか?」

「はあ?」

エルリィの言葉に、リーシャは絡まったワイヤーを解きながら訝しむ。

「頼む」

同時に、起き上がったエルリィがリーシャを見ながらそう言う。

その視線を受けたリーシャは、ため息を吐きながら立ち上がった。

「分かったわよ。だけど、失敗したら承知しないわよ!」

「ありがとう」

リーシャが篝へ向かって走り出す。その間に、エルリィは終穹を使って、一気にプログレスへの接近を試みる。

しかし、そこへ篝が立ち塞がろうとする。

「貴方はこっちよ!」

そこへリーシャが割り込み、次の瞬間、エルリィを隠すように、結晶の壁が地面から突き上がる。

「そこまで出来たのか」

「疲れるからやらないのよ!」

「それは納得だ」

壁が出来た事で追撃できなくなった篝は、そのままリーシャの相手をする。その間にエルリィはプログレスの元へと駆け寄った。



その様子をストライクゲニウスのコックピットから眺めているユーゴとジル。

「流石に戸惑ってんな」

狭いコックピットに男女二人。どこからどうみてもツッコミどころしかない状況の中、二人はプログレスの挙動に注視していた。

「初めての共同戦。その上相手は篝様ともなると、置いてけぼりになってしまいますね」

「だが、慣れてもらわないと困る。これから付く『傍付き』と一緒に戦場を駆けてもらわないといけないからな」

プログレスの傍にエルリィが駆け寄る。どうやら何かを叫んでいる様子だ。

「さて、面白くなりそうだ」



「ぐあ!?」

篝の掌底がリーシャの剣を柄ごと弾く。弾かれた剣はリーシャの背後へと飛んでいき、地面に突き刺さる。

「この―――」

「遅い」

すぐに両掌に剣を作ろうとしたリーシャだが、その前に篝がその手を叩いて、形成されかかっていた結晶を地面に叩き落とす。

「くっ!?」

「実戦なら今ので死んでいたぞ」

篝は追撃しない。

ここに至るまでに、既に三分は経っている。

残り二分、いや、あと一分と言った方が正しいか。エルリィはまだ戻ってこない。

(何してんのよ・・・!)

「リーシャ、下がれ!」

その時、エルリィの叫び声が聞こえた。それに従ったリーシャは、すぐさまその場から飛び退いた。

そこへ、凄まじい光の砲弾が篝へと迫り、叩き込まれる。

「何!?」

突然の事に、リーシャは目を見開く。

しかし、舞い上がった土煙から、篝は掲げた十字架―――『アイトクロイツ』からその光弾が飛んできた方向を見る。そこには、こちらに猛烈に接近してくるストライクプログレスがいた。

(エルリィがいない・・・)

こちらに真っ直ぐに接近してくるプログレス。だが、辺りを見回してもエルリィの姿は無い。

どこかに隠れているのか。それを探す時間は、今はない。

プログレスが右手の銃から、再び光弾を発射する。

それを、篝は十字架で受ける。しかし、リーシャはその光景に目を疑っていた。

(あれは、エーテル・・・!?)

プログレスが放つ光の砲弾、それは熱量をもったエーテルだった。



「革命の後、エイオスの量産と開発は帝国随一の企業『シンクラトロン』が引き受けてる。そこにゼファー先輩の知恵が加わった事で、新しい兵器が出来た。それがあの『エーテル圧縮式ビームシュートガン』・・・人類史上初の『ビーム兵器』って奴だな」



再び放たれる砲撃。銃撃感覚で放たれるそれらが篝に襲い掛かる。


「エンゲージ―――ジャッジアクティブ」


対して、篝はアイトクロイツでの防御をやめてジャッジアクティブに切り替え、その砲撃を紙一重で躱し始める。

『くっ!』

それを見て、プログレスは急制動してその場に留まる。

「おいおい、前進(プログレス)だろ。止まってどうすんだ」

放たれるビームを躱して、篝は一気にプログレスに接近する。

ジャッジアクティブというリンカーは身体能力が変身前と同じになるという欠点を抱えているが、篝が使用すれば、その弱点はほぼ無くなると言って良いだろう。

すくなくとも、回避において最適であることは間違いないだろう。

そのまま、プログレスへと接近する篝。

「有効射程は百メートルか。破格だが、当たらなければどうという事はない」

『ぐっ!?』

接近されて、下がらないプログレスは、篝に向かって左腕を伸ばす。対して、篝はそれをスライディング気味にかがんで回避。


その腕の下にエルリィが終穹を振りかぶって待ち構えていた。


「ハァアア!!」

奇襲。エルリィの紅い斬光が篝へと迫る。

「あからさま過ぎだ」

迎撃。篝は終穹の剣の腹に蹴りを叩きこんで、加速する事で斜め上から奇襲を回避。

「くっ!」

振り返ったエルリィに向かって、『戦姫換装(エンゲージチェンジ)』によって『ウルフランス』へと切り替えた篝の槍の一撃がエルリィへと迫る。それをエルリィはほぼ反射で弾くと同時に、プログレスがスラスターを吹かして右回転、右足の踵が篝の背後から迫る。

篝はそれを後ろに退いて回避、その回避した先へ一周半回転したプログレスが再びビームシュートガンを発射。放たれた光弾が篝の元へと炸裂。しかし、その光弾は狼顎の槍の前に全て喰われる。

『クソっ!』

「構うな!撃ち続けろ!」

エルリィがプログレスの肩に乗ってそう叫ぶ。プログレスはビームシュートガンを撃つ。

篝は駆け出し、槍をもって光弾を全て叩き落として喰らう。だが、その横からリーシャが突っ込んでくる。

篝はそれに驚くことなくその剣の一撃を防ぐ。

しかし、視線を地面へと向けると、そのまま高く跳躍。直後、足元から篝を貫こうと結晶の山が付き出す。


結晶流儀『剣山』


「クソっ!」

空中に上がった篝。それに対して、プログレスがその頭部を向ける。

『喰らえ!』

頭部から放たれるのは内臓された機関砲。バララララッ、と放たれた銃弾が、篝へと襲い掛かる。それを篝はラーズグリーズへと切り替え、盾を作って防ぐ。

その篝の元へ、終穹の能力をもって高速移動、そして空中機動を以て接近したエルリィが斬りかかる。


『終穹・絶影』


紅い軌跡をもって、一秒間最大八連撃の斬撃が襲い掛かる。だが、


「エンゲージ―――ミストアサシン」


その連撃は篝の振るうナイフの前に全て防がれる。

「全部防いだ!?」

「嘘だろ!?」

連撃を防ぎ切った篝は、その体から煙霧を放つ。

これによって視界を潰される三人。だが、

(落ちた位置から篝さんはきっと―――)

(細かく砕いてまいた結晶で位置を―――)

(センサーで位置が丸わかりだ―――)

三者三様の知覚をもって、篝のいる場所へと一斉に攻撃を繰り出す。

エルリィは終穹、リーシャは結晶の刃、そしてプログレスは刀身にビーム刃を纏わせる近接武装『ビームブレード』で斬りかかる。

その三人の目指す交差点に、まさに篝はいた。これに対して、篝が取る行動は―――


『―――四分です』


「―――アネット」

篝の姿は、ジャッジアクティブへと換装を果たしていた。

『OK、今回は僕だね』

その右手には、光の輪(オーソライズリング)


「―――クロスライズ」


攻撃に、手応えが無かった。

「え?」

「なっ」

『は?』

三人同時に攻撃した場所には、確かに誰かがいた痕跡があった。その痕跡とは、篝の足跡。それなのに、篝は忽然とその場から姿を消していた。

その事実を確認するころには、煙霧は晴れていた。

「―――四分だ」

同時に、篝の声がして、そちらを見れば、そこには見た事もない姿の篝がいた。


どこにでもいそうな女子高生姿から一変、SFチックなジャケット、腹と胸の下部分が露出したインナー、太腿半ばまであるニーソと言う、まさに『戦闘形態』とも言うべき姿へと変貌していた。


「宣言通り、こちらから攻撃を仕掛ける。凌いでみせろ」

篝がその体の中でエーテルを迸らせる。



「―――あいつを選んだのか」

それを見ていたユーゴは、うわ、という表情でそれを見た。

「一方的な展開になりそうですね」

「ああ、あのリンカーは、篝の持つリンカーの中で―――」

モニターに映っていた篝の姿が、消える(・・・)

「―――最速だからな」





(――――何が起きたの?)

気付けば、地面に転がっていたことに気付いたリーシャ。

(え、いや、は?ちょっと待って、私、いつ、地面に倒れた?というか、寝かされた(・・・・・)?)

顔を上げれば、そこには同様に訳も分からず地面に倒れているエルリィがいた。と、それを認識した直後、

『うおあ!?』

プログレスが膝をついた。一体どうして、と、思う間もなく、篝がすぐそこにいた。

「くっ!」

立ち上がって、すぐに攻撃を仕掛けた。―――そうする前に顎に何かの衝撃を受けてリーシャは再び倒れる。

(え、今、何をされた・・・?)

リーシャは、理解が追いつかなかった。起きあがろうとしたら、再び地面に顔をつけて倒れている。その状況に理解が追いつかない。

しかし、篝は以前としてそこに立ったままだった。

そんな篝の背後から、終穹の絶影を使って背後から強襲するエルリィ。だが、振り抜く前に篝はその場から立ち消え、エルリィの背後から背中を叩いた。

「うあ!?」

背中を押され、バランスを崩すもすぐさま立て直し、再び背後に剣を振り抜くも、やはりそこには誰もいない。

(どこに―――)

再び衝撃、今度は左頬。そのまま、エルリィは篝がいる筈の方向へ剣を振り続けるも、一向に追いつけない。

(一撃の威力はそれほどでもない。それなのに、追いつけない・・・!?)

エルリィの努力を嘲笑うかのように、篝の姿は一向に見えない。

その様子を、プログレスのカメラ越しに、ヴァンは見ていた。

「嘘だろ・・・・」

モニターに映る、篝とエルリィの戦闘は妙だった。

例えるなら、篝だけ動画の再生速度が速すぎるような気がするのだ。



ジャッジアクティブ。

その能力は『思考の加速』。これにより、使用者の視界はまるでスローモーションにでもなったかのように映り、あらゆる物事の動作が亀のように感じる。

しかし、その『思考の加速』はただの副産物(・・・)に過ぎない。


その正体は『タキオン粒子への干渉』。


光速で移動する仮想粒子『タキオン』に干渉する事で、現在自身のいる時空から、光速の時空へと干渉し、視界を加速させることによって、あたかも全てを見切っている様子を見せるのである。

それが『ジャッジアクティブ』というリンカーの能力(リコレクトスキル)


そして、クロスライズした『ジャッジアクティブ』の能力は、その範囲を拡張させる。


「自分の身体そのものを別の時空へと干渉させ、周囲とは違う時間の流れの中で活動する。それが、あのクロスライズの能力」


クロスライズ『トライアルジャッジ』


―――光速のリンカー。



それから一分、エルリィだけでなく、動けないリーシャと対応できないプログレスもボコボコにされる展開が続いた。

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