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TS戦姫 黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
49/56

逆転開始

篝の到着。

その登場に、アリスは心の底から安堵した。

「篝さん・・・!!!」

思わず涙が零れそうになる。

「エレン、立てるか?」

「情けない所を見せちゃったわね・・・」

「いい。お陰で殉職ゼロだ」

篝はエレンを肩越しに見て、そう褒めた後、エネルヒィの方を見る。

「うちの者が世話になったな」

「・・・どうやってここまでいらしたのでしょう」

エネルヒィは、努めて冷静に尋ねてくる。それに対して、篝は特に訝しむ様子も無しに答え始める。

「お前らは俺たちを舐め過ぎだ」





カルスルエ市街地―――。

『まさかこんなバカでかいやつと戦える日が来るなんてな』

背部の『Eドライヴ』から光の粒子を迸らせ、エイオス部隊『ジークフリート』隊長機『ストライクゲニウス』が降り立つ。

「いつもは戦姫か同じエイオスを相手にしていた為に、これは新鮮でございますね」

『たまにでっかい古代兵器と戦ってた灰鉄小隊の気持ちが少しは分かった気がするな』

その肩には、ゲニウスの『傍付き』としてその肩に立つ戦姫、ジル・リスタルテである。

「部下には市民の避難誘導を任せているわ。他の洗脳された市民も、もう怪我をさせてでも無力化して連れていけと言ってきたわ」

「それはいいのかなぁヒナちゃん」

その傍の建物の屋根の上に立つ、白の長髪と黒の軍服を靡かせるヒナ・イルタジオと、その隣に立つピンク髪の少女ステラ・ホルス。

『皆さん、聞こえますか?』

立ち並んだ彼らに、ロキシーからの通信が入る。

『既に全員配置につきました。ここから先は手筈通りにお願いします』

『了解。それじゃあ、やってやろうじゃないか』

ゲニウスに搭乗するユーゴが、そう意気込む。

「今回はたかだか樹木の伐採。市民の安全は、救命部隊に任せれば安心でしょう」

「既に多くの犠牲者が出ている。これ以上の好き勝手はさせない」

「それじゃあ、ほんの少し本気でやろっかな」

樹木の怪物が蠢く。

咆哮を上げて、その根を町中に這わせて蠢かせる。

その根がうなって、街を破壊していく―――


『―――作戦開始』


無数の砲撃音が鳴り響く。否、何かの射出音も交じっていた。

その巨大な樹木の怪物―――『ハイマート』に向かって、街の外から無数の弾丸、ロケット弾、ミサイルが降り注ぐ。

幾度となく爆発音が鳴り響き、その樹木の身体を撃ち砕いていく。

ハイマートはエーテルによって生み出された怪物。それ故に、通常兵器では傷つける事の出来ない存在だが、『竜殺しの刃』及び帝国軍の兵器には全て武装エーテルによるコーティングが施されている。それ故に、無数の爆発兵器による攻撃は、全て通る。

「派手に始めましたね」

『よし、それじゃあ俺たちも行くとするか!』

ゲニウスのエーテルの光が、一際強く輝き出した。




その一方で、街を焼く炎の剣による炎で燃え盛る地点にて。

「―――おい」

既に三発目が放たれていた。

しかし、今回の持ち主が消し炭になる事は無かった。だが、放たれた炎は。

「オレじゃなかったら死んでたぞゴラァ!!!」

直撃を喰らった筈の戦姫―――シモンが怒りの形相で立ち上がって見せる。

「なんであれで死んでねーんだよ」

そんなシモンを見てドン引きしているのはリン・レッドフラッグだった。

「いくら火炎耐性があるからって、レンガだとかを蒸発させてる炎喰らって無事でいられるとかおかしいだろ」

「知るかオレが聞きたい」

三発目が放たれた時、シモンはあろうことか自らその一撃の前に出た。

結果は見ての通り、シモンが身を張って盾になった事で、炎は突き抜けることなくその場で爆散。周囲の建物を溶かしてシモンだけが無事だったという話である。

一方で、炎の剣を持っている戦姫の手は焼け焦げていた。

「ったく、そこまでして一体何がしたいんだテメェらは」

その女の背後には、未だ九人の戦姫が立っていた。

「分かりやすくて助かるぜ。つまり後ろにいる奴ら仕留めれば、これ以上あのバカ火力は撃てねえって訳だ」

リンが、にやりと笑って、その手のサブマシンガンを向けた。

その時、再び炎の剣が燃えた。

剣を構えて、その戦姫は何も言わないままシモンたちを睨みつける。

「・・・お前、状況分かってんのか?」


ザン


突如として、九人の戦姫のうち、一人の首が撥ね飛んだ。

「あっつ・・・!」

剣太郎が、刀を以て敵戦姫の一人の首を撥ねたのだ。

しかし、周囲の熱さに溜まらず退避する。

「だぁークッソ!あいつらたぶん冷却系だとかそういうコードスキルの持ち主ばっかだな!?」

あの炎の剣を扱う為には、おそらくそこまでしないといけなかったのだろう。

「無理矢理持つ事が出来る奴を集めて、そいつらを弾丸代わりにしてあの剣を使わせてんのか。ったく、ここまでイかれてるやつらは初めてみるぜ」

少し眺めて、剣太郎は自分の言葉を否定する。

「いや、他の連中と同じで、操られてんのか」

次の瞬間、剣を持っていた戦姫の頭ががくんと揺れた。

「お前らの境遇には同情する。だが、そこまでの慈悲は与えられない」

セドリックの狙撃だ。

その場所から二キロメートルは離れている遠い塔のような場所から、狙撃銃で狙撃したのだ。

「覚悟しろよクソどもが」

シモンがハウルをその肩に担いで、どこまでも不機嫌な顔をもって、炎の剣を睨みつける。

「全員叩き潰してやる!!!」



そうして、場面は士官学校地下へと移る。

「もう既に対応は始めた。お前が仕掛けた全ての罠が取り除かれるのも時間の問題だろう」

樹木が伸びてくる。

「それで、私に降伏勧告でもしにきたのですか?」

篝が地面を踏み砕いた。

「ふざけるな。お前はここで仕留める」

拳を握り締め、篝は戦闘態勢に入る。

「ふふ、では私は、全てが水泡に帰す前に―――」

対して、エネルヒィはあらゆる植物を自身の周囲へ生み出す。

「―――出来る限り殺すとしましょう」

そこから、エネルヒィはさらに植物たちを生み出そうとしたが、その前に篝の拳がエネルヒィの眼前へと叩きつけられる。


戦乙女流決闘術『蒼火撃(ソウカゲキ)


「っ!?」

間一髪、樹木が一本、立ちはだかった事で防がれたが、樹木は砕け散り、篝の拳は軌道を変えられ空振った。

(私の樹が砕けた・・・?こいつは・・・)

続けて、飛び上がってのボレーキックが叩きつけられる。


戦乙女流決闘術『隕哭(インコク)彗星(スイセイ)


樹木が再び篝の攻撃を防ぐ。

しかし、篝は構わず攻撃を続ける。

対してエネルヒィは樹木を伸ばす事によって迎撃するが、篝はそれらを紙一重で躱し続ける。


戦乙女流決闘術『妖精舞踏(フェアリィダンス)


風にそよぐような動きでもってエネルヒィに接近する篝。

しかし、密度が上がれば、体積を誤魔化す事は出来ず、行く手を阻まれそうになる。


―――『リアライズ』


しかし、篝は構わず前進する。

「!?」

樹木を砕いて、巨大な槍の穂先がエネルヒィに迫る。


―――『槍戦槌(ランスメイス)


突き出た槍戦槌の一撃は、車椅子を蔓の植物に運ばせた事で再び不発。

しかし、ここにきて篝が武器の使用を開始した。

「貴方の弱点は分かっています。そのラーズグリーズというリンカーは、貴方自身が戦う分にはいいですが、そのリコレクトスキルを使用する場合、かなりのエーテル消費を強いられる。さらに面倒な事に、一度作ったものは()()()()()()()。質量攻撃をしようものなら、積み上げられた瓦礫のように後々の障害物となってしまう・・・もし、爆発物でも作ったら大変です」

篝の足元から樹木が伸び出す。

「その上、貴方の持つリンカーの中で、高威力の攻撃を出せるリンカーは存在しない。故に、貴方は私を仕留められない」

その樹木が、ランスメイスに絡みついた時―――何かが炸裂した。

「!?」

凄まじい爆発音の後に、爆炎と黒煙がまき散らされ、樹木が砕け散る。

「・・・別に、エーテルを無駄に消費するからあまりやらないだけで、やらないとは言ってないだろ」

爆発したのは槍戦槌の槌部分。そこにリアクティブアーマーのように爆弾を仕込んで爆発させた。仕組みは単純である。

そして装填は、ラーズが行う。

『本当は直接叩きつけるつもりだったんだけどねぇ』

アネットが、相手に聞こえないように篝の頭の中でぼやく。

(だが、あの防御能力は異常だ。おまけに砕いた樹木も大本さえ残っていれば再生する始末。たぶん、種一つで無限に植物を成長させ、自在に操る能力だろう)

『どう攻略しますか?』

(悪いが今回はラーズ以外の活躍は無しだ)

『『『えーっ!!?』』』

その時、頭の中で落胆の大合唱が起こった。

(うるせえぞ!)

『だって!だって!』

『ジャック仕方がない。ラーズで突破出来なかったのなら私たちが本気(クロスライズ)を出してもおそらく結果は同じだろう。それに、今この場にいる者たちが自由に動けなくなる』

『サラならもしかしたら可能性あったんだろうけど、そんな悠長なことしてる場合じゃないわね』

『では、そういう訳で』

篝が槍戦槌を回す。

「全員聞け!」

そして構えを取ると同時に、篝は高らかに叫んだ。

「俺がお前たちの盾になる。その間に、こいつを仕留められる策を考えろ」

篝はそう言って、エネルヒィと向き合う。

「そんな事を許すとでも」

空間が震える。

みしみしと音を立てて、壁が崩れていく。

「これは・・・」

それを見て、エレンは戦慄を隠せなかった。

「流石にちょっとやばいかも」

その部屋を型取るようにびっしりと、枝葉や樹木が生い茂っていた。

ここはまさに、エネルヒィの領域とでも言うように。

「二十年前に改装工事をいたしましたが、ここは私がこの街を見守るために用意した部屋です。故に、ここにある全ての植物は、私のエーテルをたっぷりと吸い取ったものでございます」

蔓が、エネルヒィの身体を抱えて持ち上げる。

「さあ、守れますか?」

放たれたのは樹木の槍のみではなかった。

弾けた木の実から飛び出す鏃のような破片、葉の形をした浮かび揺れる刃、鞭のようにしなる蔓、等々。

数えるのも億劫なほどの攻撃の嵐が、篝とその背後の臨時小隊に向かって四方八方に放たれる。

だが―――

「・・・?」

ふと、植物の動きが鈍い事に気付いた。

「・・・これは」

「まさか俺が、何の準備もなしにここに乗り込んだと思っているのか?」

次の瞬間、突如として現れたゴライアスの剛腕が、臨時小隊を狙った樹木を纏めて薙ぎ払う。

「・・・何をしたのです?」

「単純な話だ」

篝が懐からナイフを三本、指に挟んで抜くとそれを横の樹木に向かって投擲した。

それを見たエネルヒィは、怪訝そうな表情を浮かべた。

「・・・除草剤ですか」

「急速な成長性が仇になったな。そしてその悠長な性格も」

「・・・・!?」

篝に指摘されて、エネルヒィは顔色を変えた。

ナイフが刺さった所から、一気に樹木が変色し始めたのだ。

「くっ!」

それを見たエネルヒィは、すぐさまその部分を斬り落とすが、突如として全く別の部分が変色を始める。

「これは・・・」

「ここに来る前に、あらかじめ団員たちに地中に埋まっていた樹木の根にある薬剤を打ってもらった。それだけだとなんの効果もないただの栄養剤だが、別にある薬剤を打つことで、強烈な反応で一気に内部の液体を凝固させる。うちの優秀な解析班が作った薬剤のサンプルを、ラーズの能力で量産しておいた。今ナイフに仕込んだのはもう一つの薬剤。急速成長による内部の流動性が上がっていたのが仇になったな」

「くっ、しかし!」

エネルヒィのすぐ近くにある樹木だけは、変わらない動きでもって篝に襲い掛かる。

「貴方程度、この程度で事足りる!」

「そうだな」

篝が槍戦槌を掲げる。そして振り回して襲い掛かってきた樹木たちを叩き砕く。

「俺一人では、お前の防御を突破するのは難しそうだ」

だが、篝は一切の動揺もなく、エネルヒィを睨みつけていた。

「だが、お前如きが俺を超えられると思うな」

ゴライアスが篝の背後に立つ。篝は槍戦槌を構える。

その瞳は、ただひたすらにエネルヒィを見つめていた。

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