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TS戦姫 黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
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臨時小隊


「えーっと、そういう訳で今から臨時小隊の隊長を務める事となりました、エルリィ・シンシアです。よろしくお願いします・・・」


緊張と不安の入り混じった表情で挨拶をするエルリィ。そんな彼女の前には八人の男女。

(ユウ)黎霞(リーシャ)、ストーム、トモエ・ソーンズ、スレイ・アルスター、ブリーズ、アリス・シグルディング、エレン・スタジア。ついで、彼女たちに同行していた戦姫の一人であるウェーブのある茶髪のショートカットを持つ少女『エイミ・レーベ』。

そんな彼女らを前に、エルリィはげんなりとした様子でため息を吐いた。

(どうしてこんなことに・・・)



事の次第はほんの数十分前、

「「な、何故!?」」

エルリィとアリスの声が重なり、とんでもない事を言い出した篝の顔を思わず見る。

「なんでって、まだ新人のお前にいきなり主力の指揮をとらせるわけがないだろう。だから新入りが率いる部隊で指揮を取れって言ってるんだ。まだ訓練生のお前に作戦に参加させるだけでもかなりの譲歩なんだぞ」

「うぐ・・・」

「いや、だからって私が隊長って・・・そもそも私、部隊なんてもってないですよ!?」

「その辺りは後で説明する。それに、隊長ってのは何も隊の全てをどうこうするわけじゃない。在り方は人それぞれだ。隊の中で一番強いやつ、隊の中で一番賢いやつ、そして隊の中で一番士気に関わる奴等々・・・まあ、部隊の中で一番隊長に相応しいと思ったのがお前だと思ったから指名しただけだ」

それを言われてエルリィはなんとも言えない感情に支配される。

熱いような、ふわふわするような、頬がふにゃりと綻んでしまいそうな、そんな感情である。

「むぅ・・・」

そんなエルリィを、アリスは恨めし気に睨んでいた。

「ふぐお!?」

しかしそんな気分も束の間、脇腹を何者かにどつかれてエルリィは悶絶してしまう。

「り、リーシャ、なにを・・・!」

リーシャであった。

「納得いかないわね。なんでこいつなの?」

「だってお前人を見下してる節があるし、人に指示するのも敬られるのも苦手だろ」

「ぐっ!?」

図星だったのか、黙ってしまうリーシャ。

「だ、だからといって、こいつに隊長が務まるとは思えないわ・・・!」

「まあ九割がた勘ではあるからな」

「「「勘!?」」」

リーシャ、アリス、エルリィ、綺麗にハモる。

「だが、現状新入りの中で一番隊長に相応しいと思ったのもまた事実。戦姫としての才も実力もそれほどじゃないが、隊長として相応しいと思ったのもまた事実・・・アリス、お前の我儘を通すんだ。こちらの言い分も通してもらうぞ」

「う・・・わ、分かりました」

「その代わり、エレンもついて行かせる。あとの人選は、四人で考えるといい」

「え、エレンさんも来てくれるんですか!」

「お目付け役でね」

エレンは笑みを浮かべてアリスに頷く。

「・・・・ちょっと待って」

そこでリーシャが待ったをかけた。

「四人、ていった?」

「お前も頭数に入っているぞ」

「なんで私が」

「お前も新入りだからだが?」

「・・・・」

もはや何も言えなかった。

「・・・なんでこいつの部下なんかに」

「しばらくは我慢してくれ。エレンが適当なアドバイスをしてくれるだろう。というか愚痴を零すなこれ以上時間はかけられない」

篝が踵を返す。

「俺はサハラ小隊と共にカルスルエ中央にある『ゴルドー商会』本部へと向かう。お前たちは今までの生活を生かし、カルスルエ士官学校に潜入し、情報を集めろ。いいな」

そう言って、篝たちは立ち去って行った。




そうして、アリスの采配によって集められた九人がそこにいた。

「スレイ、傷の方は大丈夫?」

「ええ。『竜殺しの刃』の人に治してもらったわ。貴重な『治癒』のコードスキルを使ってもらえるなんてありがたいわね」

「衛生兵志望の俺としては複雑だがな」

スレイの傷を心配するアリス、『治療』してもらって全快のスレイ、そんなスレイを見て目元を抑えるブリーズ。

「ったく、ほとんど戦姫なのにどうして俺まで」

「まあまあ、私は嬉しいぞ。ストームの力が認められているということだからな」

「喜んでいいのやら」

何やら呆れているストームと、本当に嬉しそうな笑顔を見せるトモエ。

「はあ、憂鬱だわ」

「諦めなさい。これが組織というものよ。自由になりたかったらそれなりの実績を積むことね」

げんなりとしているリーシャと、それを諫めるエレン。

「あのー」

そして、今の今まで名前すら出てくることのなかった少女が、酷く戸惑った様子で片手を上げた。

「どうして私がいきなり指名を受けたのでしょうか・・・!?」

エイミ・レーベ。確かにアリス達と一緒に同行していた戦姫の一人だが、あまり目立った活躍をした事のない少女である。

そんな少女が何故、エルリィの『臨時小隊』に召集されたのか。

「貴方、今年主席で入学したエイミ・レーベさんよね」

そんな彼女の疑問に答えるように、アリスがエイミの名を呼んだ。

「え、ええ、そうですけど・・・」

「入学試験の筆記は一位。実技もトップクラス。今年入学した訓練生の中でとても優秀な人であり、この部隊に必要であると判断し、招集させていただきました。どうか貴方の力を貸してはもらえないでしょうか」

「主席と言っても、私はまだ入学して一年程度の新参者です・・・」

「ここにいる人たちのほとんどは貴方と同じ新参者ばかりです。ですので、そう謙遜しないでください」

「うう・・・」

エイミはそれ以上の抗議は無駄だと思ったのかうなり声をあげるだけでそれ以降喋る事は無かった。

「それじゃあ、隊長さん、これからの事を説明してあげて」

そこでエレンが、エルリィにそう促す。

「あ、はい。えっと・・・これから、カルスルエの士官学校に戻り、そこで調査を行う。篝さ・・・団長が言うには、この事態の原因はゴルドー商会の本部、この街にあるとある秘密組織の本部にあると判断されてるんだけど、『竜殺しの刃』では士官学校も怪しいと言われている。その為、まず土地勘のある人間のいる私たちが先行して潜入し、内部を調査。これは、今行われてる『追い込み』と同時進行で行われてる作戦で、先んじて情報を集める事で作戦の精度を高める・・・んで、いいんだよな?」

「ちゃんとはっきり説明しなさいよ」

最後で意気消沈したエルリィにリーシャがツッコミを入れた。

「まあ、初めてにしては上出来でしょう」

そんなエルリィにフォローを入れるようにエレンはそう言いつつ、その頭では一つの思考が巡っていた。

(まあ、篝がいきなりこんな事を言い出したという事はその士官学校に何かしら重要な何かがあるという事でしょうね。こういう時のあいつの目敏さはすごいから)

そうして、エレンは未だに緊張しているエルリィをじっと見る。

(こいつの『能力()』が、何かを見つけると踏んでるのね)

篝の思惑に、エレンはなんとなく、そう予想を立てた。




そうして地下水道を通るエルリィたち『臨時小隊』。

「また戻るのねぇ・・・」

スレイがそう呟く。

それは、あの地獄を経験した者たちも同意見だった。

「参考程度に教えてもらえないかしら?今のあそこの状態を」

エレンがそう尋ねると、一度顔を見合わせた訓練生たち。そこですぐさまスレイが説明を始める。

「いきなりの事で良く分かってないんだけど、突然、街の方が騒がしいと感じたら、それに続いて学校の中でも暴れ出す奴が現れて、そこから一気にパニック状態。士官学校の男は有事の時に備えて最低限の装備もしていたから、それで殺し合いがあっちこっちで起きて・・・」

言いかけて、スレイの口は止まった。

「OK、いいわ。大体分かったから」

「スレイ・・・」

「分かってる。分かってるわ」

心配するアリスに、スレイは自分に言い聞かせるように言葉を繰り返す。

いくら士官学校の訓練生とはいえ、彼女らは実践すら経験した事のない新兵。

凄惨な現場を幾度となく見てきたエルリィや、幼少の頃から殺人術を教わってきたリーシャと違い、未だ殺し合いには慣れていない。

(そういう意味では、あのストームという子も度胸がありすぎる気がするけど)

訓練生組の中で特別異端な雰囲気を放つ少年ストーム。

トモエとは同郷の仲らしいが、その出自は一体どんなものなのか。

(まあ、今の状況において、度胸があるのはありがたい事ね)

エレンがこの臨時小隊に組み込まれた理由はただ一つ。もしもの時の為の『安全装置(セーフティライン)』。

この小隊でも力が及ばない敵、もしくは状況に遭遇した時の為の『臨時要員(ピンチヒッター)』である。

(アリスの為って訳だけじゃないんでしょうけど、ここはちゃんと期待に応えてあげないといけないわね)

そう、エレンの口角が上がり始めた頃。

「士官学校に突入する前に」

ブリーズが、口を開いた。

「一つ、確認したい事がある」

その言葉に、一同は足を止めてブリーズの方を見る。その一方のブリーズは、アリスをじっと見ていた。

「アリス・シグルディング。お前、何故戦姫に変身していない?」

その言葉に、スレイとエレンを除く一同が目を見開く。

「・・・隠していたつもりはないわ」

アリスは、少し気まずそうに話し出す。

「私は、元々戦姫になれない体なの」

その告白は、エルリィは大いに驚かせ、動揺させた。

(戦姫に、なれない!?)

それは、『欠陥品』とまで呼ばれた自分以上に、異常な事だった。

「なるほど。お前と走っていた時に感じていた違和感はそれだったのか」

ストームが合点がいった様子でそう呟く。

「ごめんなさい。貴方たちと合流した時点で、話しておくべきだったわ」

「いや、あの時はそんな時間が無かった事は重々承知している。指揮官であるお前がどの程度自衛出来るのか確認しておきたかっただけだ」

そう言って、ブリーズは静かに言う。

「指揮官が倒れられては困る」

「ええ、分かってるわ」

アリスは、その言葉にうなずいて、自分の懐に手を当てた。

「口だけしか何もない私だけれど、どうか指示に従ってほしい。篝さんの期待に応える為に、何より、貴方たちの生存の為に」

アリスは改めて決意を告げる。

それに、一同は頷く中、エルリィは思う。

(戦姫になれない・・・それなのに、どうして、そんなに・・・・)

エルリィは、自分の中で、何かが少し崩れるのを感じた。

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