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TS戦姫 黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
32/56

男の武器


午後―――


「午後からは男女及びエイオスパイロットに分かれての訓練となる」

そう教官を務めていた男がそう叫び、あっという間に三つのグループに分かれる。

その様子を、エルリィとリーシャは並んで眺めていた。

「分かれるのはいいけど、男は一体何をするのかしら?」

「そういえば、男をともなって革命を成功させたと言ってたけど、その方法はついぞ知らないままだな」

それは最もな疑問であった。

そもそも戦姫はエーテルを伴う攻撃でなければかすり傷一つつく事のない体『ヴァリアブルスキン』に変身してしまう為に、まともに戦えばまともに戦う事すら出来ずに殺される筈である。

それなのに、どうして男を伴った状態で革命を成功させることが出来たのだろうか。

「それは私が説明しよう!」

「うわ!?」

「っ!?」

そこで飛び出してくるのはタンクトップの女、リリィだった。

「あ、貴方は!?」

「誰よあんた」

「ああ、自己紹介してなかったね。私は『武装開発部』所属『武器研』のリリィ・マクスウェル。兵士戦姫どちらの武器の開発を自主的に行ってる女だよ」

輝くような笑顔を向けて、リリィはそう自らを紹介する。

「あと、ゼファーくんとステラちゃんと同じ、篝くんの先輩って事になるかな」

「そ、そうなんですね・・・あとゼファーさんも篝さんの『先輩』なんだ」

「学校が同じだったからね~」

「そんなことより、説明するってどういう事なの?」

脱線していた話をリーシャが引き戻す。

「ああ、ごめんごめん。あ、みんなー、ちょっとこの二人借りるねー!」

そう了解をとって、リリィは得意げに説明を始める。

「まず、エイオスについて説明するね」


『エイオス』

全長七メートルの人型戦闘兵器であり、その大本は『タイタン』と呼ばれる古代兵器を元に設計されており、背部に戦姫のコアソウルに相当する動力『Eドライヴ』を搭載しており、そこから発生する粒子状のエーテルによって装甲にエーテル特性を持たせ、あらゆる攻撃を戦姫に対して有効なものへと変化させている。

高い防御力と効果的な攻撃を併せ持ち、戦術的価値は先の反乱を見れば明らかであろう。


「私たち見た事ないから分からないわ」

「それもそっか」

「いいのかそれは・・・」

「あ、丁度いい」

リリィの視線が、広いグラウンドへ向けられる。

そこにいるのは、複数の機械の巨人たち。

「丁度演習が始まるよ」


二機のエイオスが対峙している。

一方は盾を装備し、一方は二本の剣を有していた。

それぞれが機械的な動きで構えを取り、静止する。

準備が整ったのを確認したのか、数秒した後、スピーカーからアナウンスが入った。

『演習、開始!』

双剣のエイオスが、背部から青白い光を放って加速する。

それはまるで、戦姫のエーテル放出のようだった。

そうして加速した双剣のエイオスに対して、盾のエイオスが取った行動は、もう片方の手から放つ銃撃。

その手には、篝が使っていたものとは形状の違う銃―――いわゆる『マシンガン』を装備しており、その関節部の見える手が銃爪を引けば、そこから放たれるのは小口径の砲弾。

しかし、それを機体各部位に存在するスラスターを噴出し、器用にバレルロールよろしく回転しながら横に躱し、勢いそのままに一気に接近する。

「・・・・え、何今の」

それを見ていたエルリィはそう呟いた。

「あっちゃー、あの子またあんな無茶な動きさせてー」

「いや待ってあの巨体であんな動き出来るんですか!?」

「現実で出来てるんだから出来るんだよ。いやー、エイオスの可能性は無限大だねー」

「そういう事じゃないと思うわ」

驚いたままのエルリィと呆れるリーシャに、リリィは苦笑いを混ぜつつ説明を始める。

「エイオスはね、その全ての行動がEドライヴから発生する『武装エーテル』っていうエーテルによって稼働してるんだ。これは、Eドライヴ特有のエーテルで、これを電力や推進剤代わりにして、エイオスを動かしてるんだ」

「へえ・・・」

「そして、この『武装エーテル』の最大の特徴は、金属類に付着するという点」

そうして、リリィは兵士が訓練している方を指差す。

そこには、身を守るプロテクターなどの防具とアサルトライフルなどの銃火器を装備した兵士たちが集まっていた。

「常識過ぎて聞き飽きてると思うけど、戦姫はエーテル以外の攻撃で傷つく事は決して無い。だからこそ、男と女のパワーバランスはひっくり返ってるし、男が女に敵う事は無くなった。だけど、この『武装エーテル』は全てを変えた」

男たちが、並んで銃を構える。その先にあるのは、いくつもの障害物が設置された空き地。

「始めェ!!!」

野太い号令と共に、何かのブザー音が鳴り、突如として障害物の隙間に、人を模した形の板の的が現れる。

そして、轟くは無数の破裂音。

放たれたのは鉛の銃弾。的に直撃すれば、衝撃を検知したのか再び隠れる。しかし他にも無数の的が現れては隠れ、当たっては隠れるを繰り返す。

その光景を前に、エルリィとリーシャは唖然としていた。

「説明を続けるね。武装エーテルは、金属に付着する。という事は、金属にエーテルの特性を与えることが出来るという事でもあるんだ。そうして、コーティングされた刃物や銃弾は、戦姫を傷つける事の出来る武器になるという訳」

「・・・それが、革命を成功させられた理由?」

「一因、ではあるかな」

リーシャの質問に、リリィはあっけらかんと答える。

「銃火器が使えれば、確かに接近戦しか出来ない戦姫を一方的に攻撃することが出来るだろうね。だけど、やはり接近されれば身体能力の差でやられるし、例えエイオスで応戦出来たとしても、図体の差や起動域のせいで懐に入られたら何もできない。だからこそ、戦姫という要素は外せない」

双剣のエイオスが、後ろに下がり続ける盾のエイオスを追いかける。

牽制で放たれるマシンガンの攻撃にも臆することなく、巧みな機動でその距離を縮めていく。

「エイオスで先制し、兵士で抑え、戦姫で追い返す。こうした戦術を確立できたからこそ、そこらの有象無象相手なら全戦全勝を誇れた。けど、戦術だけじゃまだ足りない」

盾のエイオスが、盾が装着された腕の方を突如として腰の方へ回した。

そこにあるのは、それは大きな手榴弾(グレネード)

それが投げられ、双剣のエイオスの目の前で炸裂し、粉塵が舞い上がった。

「高い性能の機体、戦姫の防御手段を打ち破る武器、そしてそれらを打ち破って接近してくる敵を抑える事の出来る力。その三つを揃える事が、常勝不敗の軍隊の形を作るって、ロキシーは言ってた」

それによって、双剣のエイオスの視界は塞がれる。それを狙って、粉塵の中へ盾のエイオスは再び盾を構えたまま、マシンガンをマガジンを撃ち尽くすまで銃爪を引き絞り続けた。

「エルリィ、それにリーシャ。私たちはまだ若い軍団だ。未熟で知らない事も多い。その上、構成員のほとんどが青春を世界を変える為に捧げた子供たちが作った組織でもある。子供らしい驕りもある。それでも、経験した失敗を忘れる事なく、連れていく事の出来る強さを持ってる」

煙が晴れる。しかしそこには、双剣のエイオスはいなかった。

「君たちには、そうあって欲しい。君たちは形は違うけど、篝が入団する事を認めた二人だからね」

リリィがそう微笑むと同時に、呆然としていた盾のエイオスが、背後に何かが降り立ったのを感じ取って振り返った。

そこに、双剣を突き付けるエイオスが一機、いた。

「さ、説明はこれぐらいでいいでしょ。少し遅れちゃったけど、訓練に戻ってね」

と、そこで見覚えのある赤髪を持った女性が近寄る。

「丁度良かったわ。体が温まってきた所なの」

「あ、エレンさ―――」

その声を聞いて、エルリィは振り返った。


そこにあったのは死屍累々だった。


「うわぁああああ!?」

「また一人で全員ノしたの?」

「準備運動ぐらいにはなったわ」

よく見ると全員気絶しているだけだった。

エレンは悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

「さあ、二人とも、午後は私が相手をしてあげるわ。遠慮せず、能力も使って、手加減無しでかかってきなさい。たっぷりと戦いの作法ってのを教えてあげる」

「面白いわね」

エレンの末恐ろしい言葉に、リーシャは髪飾りに触れ、リンカーを起動する。

その姿が、黒夜のような装束へと変わり、その刃の無い剣の柄から、結晶の刃を形成した。

「その余裕を、崩してあげるわ」

「ふふ、やれるものならやってみなさい」

その様子を、エルリィは唖然としたまま眺めていた。

そんなエルリィに、リリィがその肩を叩く。

「それじゃ、頑張ってね」

「え、あ、ちょ・・・」

そうしてリリィはさっさとその場を立ち去って行った。

その場に残されたエルリィが、再びエレンとリーシャの方を見れば、こちらをじっと見つめる二人がいた。

それを前に、エルリィは観念するようにため息を吐き。

「お願いします」

そう言って、腰の剣を引き抜いた。





『―――今回もお前の勝ちだったな』

「あ、ありがとうございます・・・」

通信越しに、エイオス部隊『ジークフリート』隊長のユーゴからの賞賛の言葉に、双剣のエイオスの搭乗者は少し緊張した様子で答えた。

『相も変わらずの滅茶苦茶な機動だったから、また整備士の連中に怒られるだろうが、これでまたお前の連勝記録が更新されたな』

「いえ、隊長に比べたら、これくらい・・・」

『謙遜すんなって。ただ、この調子じゃ量産型の『ハウンズ』じゃあこの先きついかもな・・・』

そう、ユーゴが考えるような素振りを見せ、

『作ってもらうか?『ストライクシリーズ(専用機)』』

「そ、そんな!?新人の俺の為にそんな大事なものを・・・」

『作ってもらえよ』

そこで割り込んできたのは、盾をもつエイオスのパイロットだった。

『仮入団してからのお前の実力は、もう誰もが認めてる。その上、お前の全力稼働に耐えられる機体なんてそうそうない。もしお前が自分の力を最大限発揮できる機体を手に入れたら、それこそ無敵だろ』

『まあ、決めるのはお前次第だがな。今日はもう上がれ。次、行くぞ』

通信が切れる。

双剣のパイロットは、操縦桿を握り、旋回、後に前進と叩きこむ。

その最中で、モニターに映った三人の戦姫。

一人の赤髪の戦姫が、他二人を一方的に叩きのめしている光景は、いっそ何かのコントなのではと思うほど滑稽だった。

その様子を流し見て、双剣を装備した量産型エイオス『ハウンズ』のパイロット『ヴァン』は、手慣れた様子でハウンズを演習場から出した。

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