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TS戦姫 黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
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認められること


――――エルリィとエレンが激突し、凄まじい衝撃によって粉塵が立ち昇る。


しかし、金属同士が激突する音が聞こえる事は無かった。

それは、剣が交差することなく、どちらか、もしくはどちらも互いの斬撃を受けたのか、と思うのだろうが、それは違う。

「本気になり過ぎだバカ」

ラーズを起動した篝が、二人の剣を左右それぞれの二指で受け止めていた。

「あら」

「え!?」

エレンは少しつまらなそうに、エルリィは心底驚いた表情を浮かべていた。

「何するのよ。良いところだったのに」

「これ以上は試合じゃなくて殺し合いだ。全く、お前はともかくエルリィすら本気になりやがって」

そう言って、篝は二人の剣から手を離す。

「・・・・は!?」

そこまで言われて、エルリィは自分が何をしようとしていたのかを思い出す。

「あ、えと、私、その・・・!」

「何やっちまったって顔してるのよ」

エレンの表情は、先ほどとは打って変わって、爽やかな笑みを浮かべていた。

「楽しかったわ。いつかまたやりましょう」

その笑顔に、エルリィは呆気にとられる。

「・・・・」

「疲れている状態で、エレンとあれほどやれれば十分だろう。もう、お前の入団に疑問を抱いている奴もいない筈だ」

そう言って、篝はロキシーを見る。

「・・・」

それに、ロキシーは沈黙を以て応じた。それを見て、エルリィはそっと、安堵の息を吐いた。

と、同時に、背中を叩かれた。

「わあ!?」

「やるじゃないアンタ!」

セラだった。

「エレンさん相手にあそこまで戦えるだなんて」

「え、あの、セラさん!?」

と、同時に、終穹がエルリィの手から弾かれるように離れ、勝手に鞘に戻っていく。

「それ、自動で戻るんだ」

「あ、はい、なんでか・・・・」

「じゃあそのメカニズムを解明させてよ!」

「わあ!?」

今度はリリィが飛び込んでくる。

が、しかしその背後から迫ってきた大群がリリィを背後から吹っ飛ばす。

「邪魔だ武器研!」

「へヴ!?」

「貴方何者!?なんであの戦闘狂とあんなに戦えるの!?」

「なあお前今までどんな訓練してたんだ!?教えてくれよ!」

「団長とはどう会ったんだよ!」

「こらぁ!私が先だったでしょうがぁ!」

「え、あの、私・・・」

大勢に近寄られてどうすればいいのか分からないエルリィ。

その様子を、篝は表情を変えず、エレンは笑みを浮かべてみていた。

『期待の新人だね』

と、今まで沈黙していたアネットが篝に向かってそう言う。

「兵士としても戦士としてもあいつはまだまだ未熟過ぎる。これから、厳しい訓練を通して、鍛えていく必要がある」

アネットの言葉に篝はそう返す。

「正式な入団は、四月の入団式の時になります。それまではしばらく、仮入団、という事になりますね」

実体化したラーズが、ついでにそう付け加えた。

「まあ、そうなるな」

ラーズの言葉にそう答え、篝はエルリィの方を見る。

そこには、大勢の人間に取り囲まれているエルリィの姿があった。

その表情は、戸惑いながらも、どこか嬉しそうに頬を緩めているようだった。

「褒められ慣れてないようだねぇ」

そんな中で、ピンク髪の少女と見紛う女、ステラが篝の傍に立つ。

「まるで昔の君みたいだね」

「俺はあそこまでイイコちゃんじゃないぞ」

「そこは自覚あるんだ」

気を取り直して、ステラはエルリィを見ている。

「先輩」

そんな中で、篝はステラをそう呼んだ。

「必ず、俺は果たす」

「うん、ついていくよ。どこまでも。あの日、君が大勢の前に立ったその時から、みんな同じ気持ちだよ」

その言葉を聞いて、篝は少しその場で目を閉じた後、エルリィに向かって歩き出した。

それに気付いた者たちが、まるで海が割れるように篝の為に道を開ける。

二人の間に阻む者はもうおらず、すんなりと、篝はエルリィの下へとたどり着く。

「篝さん・・・?」

おずおずとするエルリィに篝は何も言わず、代わりにエルリィの隣に立って、観衆へと目を向けた。

「改めて、エルリィ・シンシアだ。四月の入団式まで、仮入団という形で先んじて俺たちと行動を共にする。実力は見ての通り。同じ戦線に立つ者同士にして、戦場に立った先達として、多くの事を教えてやってくれ」

そこまで言って、篝はエルリィに言う。

「さあ、挨拶を」

その言葉に、エルリィは体を固くしながら頷き、そして、再び大勢の団員の方を見る。

そして、

「え、エルリィ・シンシアです。これから、よろしくお願いします!」

そう、叫んで頭を下げた。

「おう、よろしく!」

そして返ってきた言葉に、エルリィは思わず顔を上げた。

「・・・え?」

「これから一緒に頑張りましょう」

「死んでも文句は言うなよ」

「団長、どこの部隊に入れられるんだ?」

団員たちの反応に、エルリィは戸惑っていた。

「あ、えっと・・・」

エルリィは、言わねばならなかった。

その事実を、なんとしても。

「あ、ま、待ってください!」

思わず声を荒げてしまうエルリィ。

再び視線が一斉にエルリィに向けられるが、エルリィはその視線に晒されて怖気づきながらも、自分の言いたい事を言う。

「私、エーテル放出が使えない、欠陥品の戦姫、ですよ・・・?」

本当は、自分の事をそんな風に言いたくはない。だが、理解している事のすれ違いは、後々何かしらのトラブルを引き起こしかねない。

それを憂いたエルリィが、その事実を告げる。のだが、

「そんなもの見れば分かるわよ」

「・・・・へェ?」

エルリィの十四年の人生で初めて間抜けな声が出た。

「いや、だってエレンさんエーテル放出使わないの不自然だったから、ねえ?」

「まあそれでも化け物みたいに強いんだけど」

「さっき化け物って言った人、あとで面貸しなさい」

「ギャアァアアァアアア!!?」

(もう連れてかれた)

その反応に、エルリィは拍子抜けしたように肩を落とす。

「それに、団長だって似たようなもんでしょ?」

「・・・・ハイ?」

人生二度目の間抜けな声。

「ん?そういえば言ってなかったな」

「え?え?え?」

「俺もエーテル放出は使えないぞ?」

「・・・・ハァ!?」

人生一番の驚きだった。

「え、でも、だってあの時・・・・あ!?」

エルリィが思い出したのはラムとの戦いの時、止めに使った技の事だった。

高く打ち上げたラムよりも高く飛び上がり、そのままオーバーヘッドキックで叩き落としていたのだが、その時に炸裂音が聞こえたのを思い出し、エルリィは唖然とする。

「まあ、そういう事だ。一応、戦乙女流のお陰で多少なりとも他の戦姫と渡り合えるようになってはいるが、別にエーテル放出が戦い方の全てじゃない。実際、エーテル放出どころか戦姫にすらなれない男ども伴ってこの国ひっくり返せてるんだからな」

「・・・・」

エルリィは開いた口が塞がらなかった。

「そんな訳で」

そんなエルリィの背を叩き、篝は言う。

「全員じゃないが、お前を認めた奴が大勢いる。誇れ。この信頼はお前が勝ち取ったんだ」

その言葉は、エルリィの中にあった何かを取り払った。

「え・・・あれ・・・?」

ぽろぽろと涙が頬から零れ落ちていた。

「「「・・・・!?!」」」

突然泣き出したエルリィに、篝以外の全員がぎょっとなる。

「え、泣いた!?」

「なんで!?」

「あー団長が泣かしたー!」

「年下泣かせるなんてサイテーだぞー!」

「・・・待て、何故そうなる!?」

あっという間にエルリィを慰めるべく集まる団員たち。

その様子を後目に、ようやく復活した灰鉄小隊の面々が眺める。

「やれやれ、一時はどうなるかと思ったが、大丈夫なようで良かった良かった」

「手加減してたとはいえ、マジでエレンと互角に戦えるとはすごいな」

「わ、私の首、ちゃんと真っ直ぐですよね?」

「真っ直ぐだから喚くなこの【王国スラング】が」

上から剣太郎、セドリック、ルクス、シモンである。

「酷いです・・・」

「ンなことより、気付いてるかテメェら」

唐突に、シモンが視線をとある方向へ向ける。

「外からこっち覗いてるやつがいるぞ」

その言葉で、その言葉を聞いた全員の顔色が変わる。

「どこからですか?」

ルクスがそう尋ねる。

「壁の外、北西の方角」

「捕まえんなら手っ取り早くいくぞ?」

剣太郎が腰の刀に手をかける。

「例の報告にあった人でしょうか・・・?」

「報告?」

「はい、ミリアさんに締められた時にそのような話が出てきて・・・」

「篝はなんて?」

セドリックの質問に、ルクスはこう答えた。

「様子見、だそうです」





時刻は深夜。

仮入団に乗じて歓迎会を食堂で行われた夜。

エルリィは疲れたままベッドに飛び込み、そのまま寝ていた。

しかし、エルリィは何故かその夜中に起きてしまった。

「・・・・トイレ」

何故かこのタイミングで便意だった。



「うう・・・こんなことで・・・」

久しぶりにぐっすり寝ていた所をこれである。寝覚めは最悪であった。

消灯した通路は真っ暗であり、唯一の光源は雲の隙間から差し込む月明かり。

それを頼りに、来た道を戻ろうとしていた所、丁度窓があったので外を見たエルリィ。

「・・・ん?」

そこに、一つ、気になる影があった。




その後、月が雲に隠れた頃、場所は変わって、『竜殺しの刃』団長執務室へと向かう廊下にて。

一人、暗闇の廊下を歩く者が一人いた。

「待て」

その暗闇の中を人物に、自身のリンカーを取りに行って、追いかけてきたエルリィが声をかける。

「篝さんに何の用だ」

エルリィがこう声をかける理由。それは、その人物が、壁を越えて入ってきたのを見たからだ。

本当に偶然の一瞬で、確信とかあった訳じゃない。

だが、なんとなく、目の前に立つ相手は、この『竜殺しの刃』の一員ではないと理解していた。

月が再び、雲の中から顔を出し、その月明かりが、その廊下を照らす。

その明かりで照らされた、その人物を見て、エルリィは目を見開く。


その少女は、まるで『月』であった。


黒夜を想起させる衣装、月光のように輝く梅鼠色の髪、そして麗しい顔立ち。

篝をその名の通り、闇夜すら焼き払う火であるならば、目の前に立つ少女は闇夜の中で輝く月。

そんな少女が、エルリィの目の前に立っていた。

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