転生
「----------」
「----------」
声が、聞こえる。分からない。
痛みが、もう、ない。
目を、開ける。
「....?」
目の前には、慈しむ女性の顔。綺麗な白い髪をしている。
隣には、喜ぶ男の人。鮮やかな金髪が似合っている。
そして、僕より少し下ぐらいの年齢の白と金の混じった男の子が興味深そうに見ていた。
そして、暖かい感触。僕は、その女の人の腕に抱かれていた。
...抱かれていた??
自分の腕を見る。小さい。とても小さい。これじゃあまるで、赤子の...
辻褄があう。僕は...
(赤子おおぉぉーーーーーっ!!!??)
「おぎゃあああああああああああああああああ!!!!」
僕は元気よく産声を上げた。
...........................
俺は、気がついたらどこか知らない場所にいた。
荒野みたいな所で、草木一本生えてないし、空が、曇っている。
とりあえず状況整理しようとしたら、変な奴を見つけた。
ところどころボロボロなワイルドな服装で、なんか、身体が俺以上にでかく、肌が茶色の大男に見えた。
「あのー、すみません!」
大男が振り向いた。
「-----?」
振り向いてから始めてその顔を見た。角が...生えている?
大男がこちらを見た瞬間、一瞬驚いた顔をして、ニヤリと笑った。牙が生えている。
そして、こちらに殴りかかってきた!
「うおっ!?」
なんとか回避できた。危ねぇな...不意打ちとはいい度胸じゃねえか。
「--------------!!!」
大男は笑いながら何かを喋り、構えを取った。戦う気満々らしい。
「やってやろうじゃねえか...!!」
荒野に、戦いの始まりを告げる風が吹いた。
新神義人は、戦いを始めた。
............................
3年の月日が過ぎた。色々分かってきた。
ここは変わらず異世界で、僕は、町の中でも有数の大きな家に生まれたらしい。
言語も、理解できるようになった。
まずは僕の家族を紹介しようと思う。
「今日は魔法のお勉強をしましょう!」
昼下がりにハツラツとした声が聞こえる。
最初に僕の母親、ティティス・ゼインゼルク。
綺麗な白い髪をしていて、髪型はセミロング。ローブみたいな物を着ていて、今の年齢は34だったはずだ。
主に家事全般をこなしながら、教師として働いているらしい。
だけど、その教師というのが僕の知る世界の教師と違っていた。
「まずは見たほうが早いわね。見ててね~...ファイア!」
その言葉と同時に、ティティス母さんの手から火が噴き出る。
そう、魔法が使える。魔法教師である。
この世界では、魔法が使えるらしい。どうやら、生前願った魔法が使える世界に生まれたらしい。
...自分が死んだ場所も、この世界だったのかな。
高松志奈であった時の最期を思い出してしまい、顔がちょっと歪んでしまった。
「おいおい、魔法の勉強だからといって家の中で魔法を使うな、危ないだろう?」
苦笑いしながらこちらに寄ってきたのは、僕の父親、エイゼン・ゼインゼルク。
鮮やかな金髪で、筋肉質。ガッチリした鎧の腰に剣を2本携えており、髪を長めにしている。年齢は、30歳だったはず。
見ていると、義人を思い出す。義人は無事なんだろうか。それとも...
嫌な考えが浮かんできたが、できるだけ考えないようにした。
さて、エイゼン父さんの話だが、父さんは剣士だと思う。というのも、よく魔法を教えてくれるティティス母さんと違い、そんなに話を聞いたことが無い。
でも、2本の剣から考えて、両刀使いだろうな。まだ家の中から出たことが無いから、戦ってる姿を見たことがないけど、きっとかっこいいんだろうな。
「大丈夫よ、ここで私がそんなヘマするはずないもの!」
「そういって母さん、色々な物を魔法で焦がしてきたじゃないか。」
呆れた顔で肩をすくめているのは、僕の兄、イリウス・ゼインゼルク。
エイゼンとティティスの髪色を両方合わせ持つ、見た感じ結構イケメンな男の子だ。動きやすそうな白い制服で、髪型はショートで年齢は、16歳だ。イリウスの誕生日パーティーで、年齢を知れた。大分若くて、ビックリした記憶がある。
イリウス兄さんは、確か学園に通っているはずだ。確か、剣と...なんだっけ。剣となにかを勉強するために通っている事を聞いたことがある。
学園...か。天翔高校、今はもう知り合いもいないだろうな。
それに、兄弟か。凛花は...どうしているだろうか。異世界に行った後、どうすることもできなく死んじゃって、赤ん坊で何もできずに時間だけが過ぎた。
それも、凛花を一人にしたまま。
異世界に行く方法なんて、行くんじゃ無かったって赤ん坊になった後で何度も思った。
でも、起こってしまったんだ。凛花が異世界に来てない事を願いながら、僕がここから戻るしかないんだ。
...なんか、家族の話をしていると、思い出しちゃうな。
「どうした、レイ。悲しそうな顔をして。大丈夫、母さんはお前の服を燃やさないさ。多分な。」
「まぁ!イリウスったら!私がレイナードのお洋服を燃やす訳がないでしょう!まったく...大丈夫よ、母さんはそんなヘマ、ぜーーーったい、しないからね~」
いつの間にか、悲しい顔をしていたらしい。
最後に、僕だ。ゼインゼルク家の次男、レイナード・ゼインゼルク。
容姿は恐らく兄さんと同じで、兄さんよりも少し銀が多い髪だ。自分の容姿をそこまで断定できないが、イケメンなのだろうか。
「ご、ごめんなさい。ちょっぴり別の事を考えてました...」
「まぁレイナード!そんなに魔法が嫌なの?でも大丈夫、きっとすぐ良さがわかるわ!」
「魔法が嫌なら剣でもいいぞ、レイナード!父さんが教えよう!」
「あなたが教えるのは明日でしょ!さあ、母さんと魔法の授業、再開するわよ!」
母さんが本を片手に教える気満々で声を出す。
僕は、とりあえず授業に集中することにした。