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第六話『魔王と同盟』

 俺は勇者様のギルドに参加するというミッションは失敗に終わり追放された。

 好きな女の子の前で恥をかいた。


 「....クロ....クロノ?....大丈夫?」


 「はっ!」


 今まで逃げてばかりの人生だった俺に高難易度の試練の連続だったせいで我を失っていた。


 「大丈夫、大丈夫!ちょっと考え事していただけだから」


 「クロノは、これからどうするの?行くさきが無ければ私たちで良ければ一緒に旅をする?」


 「いや、エレノア達は大事な探し物をしている最中。そんな一大事な時に足手纏いの俺がお世話になるわけにはいかない。見てただろ?雑魚モンスターと同じレベルと言われた魔族を倒すことすらできなかったところを」


 「いや、あれは」


 「もう黙ってくれ!あ...いや、ごめん」


 ストレスも限界まで溜まり大声を上げてしまった。

 元はと言えば村の癌である魔族を倒さず見た目に惑わされて逃した俺が全部悪いのに。


 「おい!そこの兄ちゃん」


 声をかけられた方を見ると、さっきの魔族が声をかけてきた。


 「さっき、お前はわざと俺に攻撃しなかっただろ?不意をつかれた俺はあのまま攻撃されていたら、正直あの村の連中に袋叩きにあい最悪、死んでいたかもしれない」


 「お前はさっきの魔族。本当に人間じゃないのか?」


 「人間ではなく、魔族だ!それも魔王の息子だ。今は王国騎士団の封印魔法のせいで「8つの魂のカケラ」が各所に分散され俺は弱体化させられたから威厳は感じられないかもだが」

 

 「いや、威厳ていうか見た目が人間とほとんど変わらないんですけど」


 「そりゃそうだ。そもそも我ら魔族は人間を襲ったりはおろか普通の人間と同じ生活を送っているだけなのに王国の騎士や勇者達は我らを討伐対象として見ている。しかし、クロノと言ったか?お前は命の恩人だこれは何かお礼を返さないと俺の気が済まない」


 「そんなにお礼を返したいのなら俺の衣食住を保証してくれ!」


 「そんなことでいいのか?容易いことだ!」


 マジかよ。こんなにあっさり絶望的な状況下だった俺の衣食住が確保できるなんて。

 でも、魔族と手を組んだりしたらエレノアやグランデさんは俺のことを。


 「クロノ!良かったじゃない。これで衣食住は確保できたみたいだし」


 「でも、村の討伐対象の魔族と手を組むって話になる展開だよ。俺のことを失望したでしょ?」


 「そんなことないよ!私は色々な種族が手を取り合う世界にしたいって考えているの。目の前の魔王の息子さんも人間を襲ったことがないって言ってるし」


 そんな単純なことでいいのか?俺の地元なら絶対結婚詐欺とかに引っかかるタイプだ。

 しかし、色々な種族が手を取り合うか。素敵な夢を持っているんだな。

 ただ、ここれエレノア達を巻き込むのは。いや、その時はその時だ。エレノアを信じて魔族と人間が手を組む世界を作れば問題ないはずだ。


 「魔王の息子!そしたら、俺たちをお前の城に連れて行ってくれ。あと、名前聞いてなかったな。名前を聞いてもいいか?」


 「俺の名前はアステカだ。俺は空間転移魔法を使える。ここから魔王の城まで連れて行こう」


 「マジか。空間転移魔法ってアーサーも使っていたけど、みんな使えるものなの?」


 「クロノ、空間転移魔法は非常に複雑な魔法で簡単に使えるものではないの。だから、アステカはすごい実力者なんだよ」


 「エレノアさん、でしたっけ。凄い詳しいんですね。ただ、先ほども説明しましたが、あいにく「8つの魂のカケラ」が俺の体内から出て行ったせいで実力は雑魚モンスターと同等の力しか出せないが」


 「またまた!アステカに殴られた痛みはまだまだ痛むぞ」


 「アハハ申し訳なかったね、魔王の城に行ったら同盟を結んだ記念に食事会を開こう」


ーーー魔王の城まで空間転移


 「お父様、今帰りました」


 「おぉ、アステカ帰ったか。後ろにいる人間達はどうした?今日の食材か?」


 「お父様、この方は僕の命の恩人です。村の勇者に討伐されそうになったところを助けてもらいました。そして、先ほど利害一致して同盟を結ぶことに」


 「おぉそれはお礼をしないといけないな。お前達、宴をするぞ。今日はこの人間達と同盟を結ばれた記念の日だ」


ーーー魔王の城で宴が始まる


 「ところで、クロノお前の見た目は、この国では珍しいなどこのものだ?」


 「俺も詳しいことは分かりませんが、東の方からやってきました」


 「東?あははは、ここより東は存在しないのだよ、話は変わるが、お前達の衣食住を確保する代わりに息子の能力ちからを取り戻すのに協力してほしい。あの忌まわしい王国騎士団の封印魔法のせいで「8つの魂のカケラ」が各所に分散された。これを探すのに協力してほしい」


 「仕方ねぇ、ただ善の人間に危害を加えるのはやめるって約束してくれ。あと、エレノアの大事な探し物をする協力もしてほしい」


 「クロノは魔族との交渉が上手ですね。父上、この者たちは信用できる。どうか前向きに検討を」


 「いいだろう。ここに魔族と人間の異種族による同盟を結成する」


 魔王との同盟は心強い。エレノアやグランデさんがどう感じているかは分からないが、この機会を利用する他はないだろう。


 「そんなことより今日は飲むのを楽しもう、さぁ飲め飲め」


 「あ、ありがとうございます」


 俺は魔王と同盟を結び、エレノアの夢である、さまざまな種族が仲良くなれる国を作りたい。

 この後、2時間ほど飲んだり食べたりして泥酔状態になり、この後の記憶はほとんど覚えていない。

【ご視聴ありがとうございました。】

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