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第二話『運命の出会い』

 「大丈夫ですか?」


 白髪の美女が心配そうな顔で俺を見つめる。

 顔は美しさと幼さが混合しており少し気が強そうな雰囲気がある。

 そして、品のある高貴な雰囲気が漂っている。俺は既に一目惚れしそうだった。


 いやいや、今は目の前の女性にうつつ抜かしている場合じゃない。

 指先や腕が軽く動く感覚はあるものの上半身を起こすことができない。

 

 (もしかして、異世界に転生しても現世の後遺症も引き継がれるクソゲー仕様?)


 嫌な予感が脳裏をよぎる。

 

 「た―・・・・―な―...よ」


 少女は隣にいる人獣と俺を見ながら何かを話している。

 もしかして、俺の後遺症についてか?

 片腕は大型トラックに潰されて使い物にならないだろうし、頭は地面に叩きつけられて脳内出血による脳の障害は逃れることはできないだろうな。

 

 「このお方は恐らく体内の魔力が尽きているのでしょう」


 魔力!?今、魔力って言ったか?

 俺は人獣の言葉に耳を疑った。本当に異世界に来てしまったのか俺は。

 半信半疑だったものが現実のものとなった。

 

 少女が何やら僕に光を照らす。

 何とも温かい優しい光だ。俺の体は徐々に力がみなぎってくる。

 数分くらいして、やっと上半身を起こせるくらい力が戻る。


 「あ、ありがとうございます」


 「本当に生きてて良かった。帰り道にあなたが倒れてて、声を掛けてもビクともしないんだもん」


 「ぎゅるるるる」

 

 俺は一目惚れした女の子の前でお腹の虫が大きくなってしまった。

 おいおい、こんな時にお腹が鳴るなよ。そういえば、意識なくなってたって言ってたよな。

 俺はどれだけ寝たきりだったのだろうか。


 「ふふふ、お腹空いているのね!1週間くらい意識がなかったのだから、しょうがないよ

今からご飯にしようと思っていたの。良かったら一緒に食べる?」


 「ぜひ!」


 目の前の彼女が僕のために手料理を作ってくれた。俺は生まれて32年間一度も、お母さん以外の女性の手料理を食べたことがなかった。嬉しくて涙が溢れた。


 「大袈裟だなぁ(笑)でも手料理を人に振舞ってここまで喜んでくれたのは人生初めてかも」


 魚を醤油のようなもので煮た煮物に肉じゃがみたいな料理。どれもご飯が進む。

 異世界の料理だから俺の現世の食材とはまた違うのだろう。異世界もののゲームやアニメは一通り見たから自慢じゃないが事情は誰よりも詳しい。


 「そういえば、君の名前を聞いてもいいか?」


 「私の名前はエレノア。隣にいる執事はグランデ」

 

 「以後、お見知りおきを」


 「あなたの名前は?ここの人じゃないんでしょ?」


 俺の名前か。現世の名前を名乗っても異世界で浮くだけだろうし。

 なんて名前にしようかな。あ!APEXで使ってた名前にしよう。

 この世界でもプレデター並みに最強になれるように。


 「俺の名前はクロノ・トリガーよろしくお願いします」


 「珍しい名前だね。よろしく!でも、明日でここを出ないといけないんだよね。私は大事な探し物をしててさ。その探し物をするための旅の途中であなたが倒れているのを見つけて看病してたの」


 彼女は自分の大事な探し物よりも僕の看病を優先してくれたってのか?なんて優しい子なんだろう。

 1週間もあれば、自分の探し物を探す旅もだいぶ進むだろうに俺の看病してくれた上に手料理まで振る舞ってくれて、自分のことは二の次、三の次って。


 「明日には宿を出るから、後はこの村を超えたら冒険ギルドがある。そこで勇者様のパーティに入れて貰うと良いわ。そうすれば、衣食住は確保できるし」


 「え!?でも、俺がその勇者様のギルドに入れるって保証は」


 「あなたは異世界転生者なんでしょ?身なりからして、この国の人じゃないのは分かるし。この国でも異世界転生者はチートスキルをギフトされるって伝説があるの。勇者様は魔王を討伐するために強い仲間を欲している。あなたの存在は勇者様の目に留まると思うわ」


 「俺はエレノアの探し物の邪魔をしてしまった。1週間、意識が戻らなかった俺の看病をしてくれた何か恩返しをさせて欲しい。このままでは心に悔いが残る」


 「う〜ん。でも、見返りを求めてやった行いじゃないからね?お礼できるような余力もないし。ここでお別れするのが、お互いにスッキリするんじゃないかな」


 やはり、自分のことを犠牲にしてでも他人に尽くすことは抵抗無いくせに人からの善意には抵抗があるんだな。

 そんなのめちゃくちゃ不幸になるだけじゃんか。

 このままお別れは後味悪い、少し言い方を変えてみるか。


 「大丈夫。見返りなんて求めてない。俺はお母さんに人からよくしてもらったら、その人の助けをしないとバチが当たると育ったんだ。だから、君のお手伝いをさせてくれ」


 「もう、分かった。そしたら勇者様のギルドがある村に私も用事があるから、それまで護衛してくれる?そしたら本当にお別れだから」


 「エレノア様は素直じゃないのです。悪く思わないでいただけると幸いです」


 素直じゃないってレベルじゃないだろう。孤独で何事も自分の力だけで乗り越えてきたのだろう。

 顔を見れば分かる。覚悟が決まっている人の顔だ。

 でも、大事な探し物って一体何を探しているのだろうか。


 「もう時間がないし寝て明日起きたらこの宿を出るわよ」


 「おう。俺は寝るの早いからすぐ寝ついちゃうかも。俺が寝言言っても絶対に話しかけるなよ?

夢の世界から出てこれなくなるって俺の地元では有名だから」


 「はいはい、クロノも私が寝言言っても話しかけないでね?私も夢の世界に閉じ込められたら困るし。

明日も早いしもう寝ましょうか。」


 エレノアは俺を突き放すような態度を取りつつも俺の善意を受け取ってくれた。

【新連載です!ご視聴ありがとうございました。】


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