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☆第6回ESN大賞W受賞☆11/4④発売☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第2章 おともらちが増えたのら

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95ーコッコちゃんはお友達

「ロロはまだ小さいから仕方ないよ」


 そんな風に、レオ兄から言われる度に情けなくて胸が締めつけられた。

 だけど、みんなの生活リズムが決まり、それが当たり前になると共に俺も落ち着いてきたのだ。

 マリーと一緒におやつを作ったり、刺繍をしたり、家の前でピカと日向ぼっこをしたり。俺の夜泣きもだんだんと少なくなった。

 ……なのにだ。


「うぇ、うぇ……ええーん! うえーん!」


 ああ、また泣いている。どうして俺はまた泣いているのだ? 寝惚けた頭で考える。


「ロロ、ロロ。大丈夫だ。僕が抱きしめているからね」

「れ、れおにい……びぇ……ご、ごめんなしゃい……うぇーん」

「大丈夫だよ。謝らなくていいんだ。大丈夫だ。みんな一緒だ」

「……ヒック……れおにいぃ」


 俺はまた夜泣きしていたのだ。何がそれ程悲しいのか自分でも分からない。

 なのに、泣いてしまうのだ。

 攫われた事の後遺症か? と、いうとそうでもないのだ。

 なんだか、とても心がキュッとなって寂しくて不安になってしまうのだ。


「よしよし。ロロ、良い子だ。何も不安になる事はないよ。みんな一緒だ」

「くぅ〜ん」


 レオ兄が、そう言って抱きしめながら俺の背中を撫でてくれる。ピカまで心配してくれている。でも、レオ兄の体温と匂いで安心するから大丈夫だ。

 そんな夜の次の日は、決まってマリーが抱っこしてくれる。もうお決まりになってしまった。


「まりー、ごめんなしゃい」

「あらあら、何を言ってるんですか。マリーの役得ですよ」


 何が役得なのか分からないけど。俺はマリーに甘えて、お膝の上に乗り抱っこしてもらう。

 レオ兄とは違う、体の感触。フワンフワンしている。それに、ほんのりとさっき食べた朝食のオムレツの匂いがするエプロン。何故か、それがとっても落ち着くのだ。

 この世界の俺は、母親の温かさも、父親の力強さも知らない。

 中身は大人だというのに、情けない。

 前世の俺も、肉親の温かみをあまり知らずに育って、そのまま一人暮らしをしていた。

 その分も取り戻そうとしているのだろうか? いや、そんなに寂しく思っていた訳ではない筈なのだ。確かに一人暮らしだったけど、趣味を通じて友達もいた。

 それでも、この世界の3歳児の気持ちは正直だ。寂しいと……温かみが欲しいと泣いている。前世よりずっと家族らしい温かい家だというのに。

 これ以上望んだら、贅沢というものなのだ。


「まりー、ありがと。らいじょぶら」

「そうですか?」

「うん、ししゅうしゅるのら」

「はいはい、じゃあお道具箱を出しましょうね」

「うん」


 ディさんに頼まれた刺繍。頑張るのだ。


「そうそう、坊ちゃま」


 マリーがお道具箱を出してくれる。


「ユーリアが言ってたんですけど、最近獣が出るらしいのですよ」

「けもの?」

「はい、見た者はいないんですけどね、野菜が食べられているそうなんです。だから獣じゃないかって話だそうですよ」

「えー、たいへんら」

「それに危ないですからね。暫くは1人でお外に出ないようにして下さいね」

「わかったのら」


 獣かぁ。何の獣なのだろう? 獣も魔獣や魔魚も、今は産卵や子育ての時期なのだろうか?

 お野菜を食べちゃうという事は、食べ物が足らないのか? 森には魔獣がいるから、魔獣より弱い獣達の居場所が無くなってしまったのかな? 何にしろ、気をつけよう。

 俺は小さな手の、短いプクプクとした指で一針一針丁寧に針を刺す。ディさんを、守ってくれる様にと思いを込めながら。んー……今の俺の手の動きは、まだ思い通りという訳ではないのだ。それでも、根気よく少しずつ刺していく。

 図面で確認する。今回は、大作なのだ。こんなに大きな刺繍を、今までした事がない。


「ふゅぅ……」

「ロロ坊ちゃま、ゆっくりですよ。根をつめると疲れますよ」

「うん、らいじょぶら。細かいから、しゅうちゅうしなきゃ」

「少しずつ刺していきましょう」

「うん」


 俺がソファーに座って刺繍を刺していると、コッコちゃんは足元に集まってくる。


「コッコ?」

「クックック」

「ししゅうなのら」

「ククッ」

「コッコッコ」

「おしょとは、いかないのら。あぶないんらって」

「クック?」

「けものがでるから」

「コッコ」

「クックック」

「え、しょう?」

「ココッ」


 本当、誰と話してるんだって感じだよ。コッコちゃんが、普通に話しかけてくるからね。

 返事をする俺も俺だけど。コッコちゃん達も、もうお友達なのだ。

 何をしてるの? お外に行かないの? 良い天気だから気持ちいいよ〜。なんて、話しかけてくるのだ。

 獣が出るらしいから、危ないよ。と、言ったら、そういえば昨夜気配がしたな。と、話している。

 コッコちゃんは、弱っちいから獣の気配には敏感らしい。

 気付いていたけど、その時に鳴いて知らせたりはしなかった。と、いう事は、獣は家がある方へは近付いて来ていないという事なのかな?


「こっこちゃん、はたけのほう?」

「コッコ」

「ぴか、しょう?」

「わふん」


 ピカも、そうだと言っている。ん〜、やっぱ出てきているみたいだ。畑のお野菜が目当てなのだろう。

 罠でも仕掛けるか? リア姉とレオ兄に頼んで狩ってもらうか?


「れも、夜なんら?」

「ククッ」

「しょっか」


 夜中に気配がしたらしい。そんな話をしながら、手は動かしている。チクチクとね。


お読みいただき有難うございます!

ほんわかな日常が続きます。ロロのお友達はどれだけ増えるのでしょう。^^;

毎日読むよー!と、応援して下さる方は、是非とも評価をお願いします!

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宜しくお願いします!

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