9ー3歳
「それで、お姉さまは冒険者をされているの?」
「うん」
「貴族のお邸へ奉公に出る事も出来たのですが、リアお嬢ちゃまが嫌だと仰って……それで長男のレオ坊ちゃまと一緒に冒険者をされているのです。たしか、今はDランクだとか」
「1年でDランクとは優秀だな」
「レオ坊ちゃまに教わって、ロロ坊ちゃまはポーションも作られるのですよ!」
「まあ、本当にお利口さんなのね」
「にこにいの薬草がある時らけ」
「次男のニコ坊ちゃまが薬草を上手に育てられるのです」
「冒険者に薬草か!? ロロの兄弟は素晴らしいな!」
「えへへ」
自分の事より、姉や兄の事を褒められるととっても嬉しいのだ。ちょっと照れてしまう。
「バザーの時にまた会いましょう。楽しみにしているわ」
と、言って伯爵夫人と坊ちゃんは帰って行った。
「ロロ坊ちゃま、お買い物して帰りましょうか?」
「今日はお肉があるかもら」
「あらあら、そうでしたね。じゃあ畑のお野菜で足りますね」
「うん」
そんな取り留めない会話をしながら、俺とマリーも帰路についた。
家でマリーと夕飯の支度をしていたら、ニコ兄とユーリアが帰ってきた。大きな籠いっぱいに野菜を持って帰ってきた。ラッキーなのだ。スープが具沢山になる。
「野菜いっぱいもらったぞ!」
「おばあちゃんお腹すいたわ」
「あらあら、おやつのクッキー食べなかったの?」
「あ、忘れてた!」
「マリー、少しだけクッキー食べてもいいか?」
「はい、夕飯が食べられなくなるほど食べたら駄目ですよ!」
「うん、分かってる! ユーリア、食べよう!」
「ええ」
ニコ兄は賑やかだ。今日はユーリアと口喧嘩していないんだな。
口喧嘩しながら帰ってくる時もあるのだ。この2人は仲が良いのか悪いのかよく分からないのだ。
「ただいまー! お肉あるわよー!」
「ただいま」
リア姉とレオ兄が、お肉を沢山持って帰ってきてくれた。超ラッキーなのだ。
「わふ」
「ぴか、おかえり」
「わふん」
ピカが俺にスリスリしてくる。俺もピカの首に抱き着く。可愛いのだ。
「ロロ坊ちゃま、やっぱりお肉ありましたね!」
「うん」
夕飯を食べながら、今日1日の事を話すのだ。マリーが教会に行った事を話していた。
「へえ、バザーか。ロロはクッキーを売るのかい?」
「うん、ハンカチも」
「刺繍も上手だからきっと売れるよ」
「うん、しょういわれたのら」
「孤児院で領主様の奥様にお会いしたのですよ」
「そうなの?」
「姉上、領主様の名前知ってるか?」
「なによ、レオ。それ位知ってるわよ……て、何だっけ?」
「あらあら、フォーゲル伯爵ですよ」
「そうそう、マリー。そうだったわ」
「姉上、知らなかったんだろう?」
「そんなことないわよ。ほら、ギルドのクエストで領主様が依頼主のがあるじゃない。あれで覚えているわよ」
「ああ、なるほど」
そんな事があるのか? 領主様がギルドに依頼を出しているって事なのかな?
「魔獣が多い時はその討伐依頼だったり、低ランクの人用に街の掃除だったりね。色々あるんだよ」
「へえ~」
「俺も10歳になったら登録するんだ!」
「ニコは薬草を育ててくれる方が助かるんだけどね」
「そうね、ニコの薬草でポーションを作ってくれたら助かるわ」
「ええー! 俺だって冒険したいんだ!」
「でもニコが作る野菜や薬草は立派だよ?」
「それもする!」
冒険者かぁ。俺はどうだろうなぁ。剣とか槍とか使える気がしないんだよなぁ。
「ロロはポーションを作るといいよ。売れるしね」
「しょう?」
「うん、そうだよ」
「ロロ坊ちゃまは刺繍だってできるじゃないですか」
「うぅ~、まらまらなのら」
ピカが俺の足元で、お肉をわふわふ言いながら頬張っている。
みんなで色々話しながら夕飯を食べる。そんな平和な日常が、俺は結構お気に入りなのだ。
両親は亡くなってしまったけど、貴族じゃなくなっちゃったけど。でもリア姉、レオ兄、ニコ兄がいる。ピカもいる。マリー一家もいる。
だから寂しくはないのだ。だって、中身の俺はもう大人だし。だから大丈夫なのだ。
◇◇◇
「うえぇぇ~ん……うえ、うえ、えぇぇ~ん!」
夜中に泣き声が聞こえる。誰が泣いているのだ? 可哀そうにどうした?
と、ウトウトしながら思っていたのだ。
「くぅ~ん」
ピカ、どうした? 眠いのだ。
「ロロ、ロロ。大丈夫だよ。兄様が一緒にいるよ」
「びえぇ……れ、れおにい……うえぇ~ん」
俺の泣き声だった。俺は泣いていたのだ。
一緒に寝ているレオ兄が、優しく俺を抱き締めてくれる。背中を撫でたり頭を撫でたり。トントンしたりしてくれる。そして、ずっと『大丈夫だよ』て、優しい声で言ってくれる。
ピカも心配してスリスリしてくる。
それでも俺は直ぐに泣き止む事ができなかった。
俺の中で気持ちが溢れるのだ。いっぱいになって時々溢れ出して困るのだ。寂しい。悲しい。会いたい。抱き締めてほしいと。どうしようもないのだ。
「ロロ、大丈夫だ。ロロ、兄様がそばにいるよ」
「れおにい……ご、ごめ……んなしゃい……ヒック」
「謝らなくていいんだ。もっと甘えてくれていいんだよ。大丈夫だ」
俺はまだ3歳なのだった。社会人の俺の魂が入ったとは言え、ちゃんとまだ3歳だったのだ。
両親が亡くなってから1年。その間に何度も俺は夜泣きしていたのだ。
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