88ーコッコちゃんと教育事情
「それは、サルトゥルスル殿。良い案だ。子供達が出来る仕事として、領内で普及できれば餓えに苦しむ子供達が減るかも知れない」
「れも、でぃしゃん」
俺は、ディさんに下ろしてもらって声を掛けた。
「なんだい、ロロ」
「ていむしなきゃらめら」
「そうだね、でもニルスでもできたんだ。大丈夫じゃない?」
ああ、そうだった。ニコ兄より1歳年上のニルスがテイムできたのだった。
それでも、ディさんの協力は必要だ。きっとディさんの、精霊眼は必要になるだろうと思うのだ。
「僕は協力を惜しまないよ」
やっぱ、ディさんは良い人なのだ。コッコちゃんを、育てて卵を売る事も先を考えている。
子供達が自分達の手でお金を稼ぐ事が出来る。それは、凄い事なのだ。
「それにね、子供達が集まるのだったら、教育だってついでにしてしまえば良いんだ」
「サルトゥルスル殿、教育ですか?」
「そうだよ。この国は平民の子供達の教育が成ってない。識字率だって低い。せめて、文字の読み書きを覚えて簡単な計算も出来るようになってほしい。それが子供達の、将来の武器になるんだ」
ニコ兄や俺は、レオ兄に教えてもらっている。それも、レオ兄が元貴族で教育を受けていたから出来る事なのだ。
そのお陰で、ニコ兄や俺も文字の読み書きや簡単な計算が出来る。まあ、俺は前世で大学を卒業しているのだ。この世界の文字さえ覚えたら、計算なんてお手の物なのだ。
でも、この世界の子供達は違う。貴族なら、早いうちから家庭教師に教わる。そして、王都にある学園へ進学する。
平民だとそうはいかない。子供だって立派な労働力なのだ。そんな時間があるなら仕事を手伝えという事だ。その親だって教育を受けていない。だから、当然といえば当然なのだろう。
なら、平民はどこで学ぶのか? 領主が、無料で小さな学舎を開いてる領地もある。教会が担っていたりもする。
例えば、ルルンデならビオ爺とハンナが教えている。でも、集まりは悪いらしい。
それとは別に、裕福な平民だったら個人的に家庭教師を雇う。
そして、姉達が通っていた学園だ。学園は貴族だけのものではない。入学試験に合格し、学費が払えるのなら平民だって通う事ができる。だが、なにしろ学費がお高い。実質的に貴族の子息子女しか通えない。
国的には平民が気軽に通える学舎の様なものがないのだ。
それを、ディさんは言っているのだ。教育が成っていないと、領主様の前で言い切ったのだ。
「サルトゥルスル殿、それは耳が痛い。だが、良い事だ」
「そうでしょう? フォリコッコを育てるという仕事をするんだ。その合間に読み書きと簡単な計算を教える。それなら、親だって文句はないだろう? それに、孤児院に入っていないけど両親のいない子達だっている。先ずはその子達の救済にならないかな? 孤児院に資金があれば、そんな子達も受け入れられるよね」
なんだと? 両親がいないのに孤児院にも入っていないのか? そんなの、どうやって生きていくのだよ。それはいかん。何なのだ? この世界は、平民の命の扱いが軽すぎる。
子供達には、とっても生き難い世界なのだ。俺はそう思うぞ。
領主様とクラウス様は、ディさんと少し話をして帰って行った。
「ロロ、また来てもいいかな?」
「うん、くらうしゅしゃま」
「レオ、リア、いいだろうか?」
「平民なんかを、相手にしていてもいいんですか?」
またぁ、リア姉は素直じゃないのだから。そんな嫌味を言うのはやめようね。
「姉上」
「私達は、ほとんど毎日クエストを受けているもの。家にはいないわ」
「毎日なのか?」
「はい。食べていかなければいけませんから」
「レオ君、貴族簿の閲覧希望の申請は出しておく。それを見てまた考えよう」
「はい、有難うございます」
「レオ、学園が休みになったらまた来るよ」
「はい」
立派な馬車に乗り込むと、窓から顔を出してくれた。俺は、いつもの様に手をフリフリしておく。
確かに、夫人とレベッカのした事で何人もの人が傷ついた。でも、こんな縁も良いじゃないか? そう俺は思ったのだ。
「ロロは優しいね」
「でぃしゃん、しょお?」
「そうだよ。あんなに酷い事をされたのに」
「らって、りょうしゅしゃまもくらうしゅしゃまも、ちゅらしょうなお顔をしてたのら」
「そうだね」
「わじゃわじゃ来てくれたし」
「うん」
「らから、もういいのら」
「ロロー!」
ああ、まただ。またこの姉は、何かというと直ぐに抱き着いてくる。
そして、俺のプニプニしたお腹を触りながらほっぺにスリスリする。俺は呆れてしまって、されるがまま棒立ちなのだ。
「りあねえ、やめれ」
「また、ロロ。冷たいわ」
なんだか、ふと泣き虫女神を思い出してしまったのだ。似た様なやり取りをした気がするぞぅ。あの女神が抱きついてきたら、避けてやるが。
「りあねえ、きょうはもういかない?」
「行くわよ!」
なんだ、行くのか。遅くなったから、もうギルドには行かないのかと思ったのだ。
「姉上、今日はもう遅くなったからいいんじゃない?」
「レオ、駄目よ。行かないなら特訓するわよ」
「えぇー」
リア姉はあれなのか? じっとしていると、死んでしまう病でも罹っているのか?
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