73ー心配性
それからも、コッコちゃんは次から次へと出て来た。ディさんやレオ兄の『お座り』と言う声が聞こえた。
俺はまだ寝起きだからね、お喉が渇いたのだ。マリーが持たせてくれた果実水を飲もう。
「お座りッ!」
「ん……?」
おやおや? この声は……?
「ロロ、リア姉だ。ダメだったな」
「え……」
リア姉が張り切って『お座り』と言った。なのにコッコちゃんは知らんぷりなのだ。ププーの実しか目に入っていない。
「ロロォ……」
リア姉が、お顔を真っ赤にして俺に抱きついてきたのだ。半泣きなのだ。おしおし、頭をナデナデしてあげよう。
「りあねえ、じゃんねんなのら」
「なんで? なんでなの? レオはできるじゃない」
「アハハハ。レオの方が魔力量は多いし、魔力操作も上手だからだね」
ディさんが冷静に分析したのだ。でも、余計にリア姉を追い込んでいるぞ。
「りあねえ、ポカポカぐるぐるしゅるのら」
「分かったわよぅ」
残念だったね。リア姉がテイムできなかったコッコちゃんは、レオ兄が無事にテイムした。
この日は結局、コッコちゃんを10羽も捕まえた。コッコちゃんも、もうププーの実が残り僅かなのを知っているのかな? 前より多く捕まえられたのだ。
そしてコッコちゃんは、リア姉にププーの実を強請り捥いでもらって食べていた。どうして、リア姉なのだろう? お座りしないのに。
リア姉に捥いでもらったププーの実を、コッコちゃんは足でバキィッと割ってから食べるのだ。
何も足で割らなくても、嘴で突けば良いのじゃないか? その方が早くないか?
「ロロ、駄目なんだよ」
「れおにい、どうして?」
「フォリコッコの嘴をよく見てごらん。細くなっている嘴の先端が丸くなっているだろう?」
本当なのだ。鶏さんみたいに尖ってないのだ。嘴自体の形はよく似ているのに、先端は微妙に丸くなっている。
「だからね、突かれても痛くないんだ。だから多分、力も弱いんだろうね。ププーの実を、割ったりできないのだと思うよ」
「なるほろ〜」
あらら、本当に弱っちいのだ。
「れも、きっくはべちゅ?」
「アハハハ、そうだね。意外に足癖が悪かったね」
そうなのだ。だって、ププーの実を取るのも、木に蹴りを入れて実を落とすのだ。
その上、実をバキィッと踏み付けて割る。とっても足癖が悪いのだ。
「レオ、どうやって連れて帰ったの?」
「首に縄を掛けて、歩かせるんです」
「アハハハ! フォリコッコをお散歩させてるみたいじゃない!」
「しょうなのら」
「でも、お利口ですよ。普通に付いて来ます」
「そうなんだ〜」
またまたレオ兄が、バッグから縄を出してコッコちゃんの首に括り付ける。合計10羽のコッコちゃんにだ。
今日はピカが、バインドしている訳でもないのにとっても大人しいのだ。
「コッコッコッ」
「クックックッ」
何かコッコちゃん同士で、話しているのだ。
「ぴか、わかる?」
「わふわふ」
まただ。とっても打算的なコッコちゃんなのだ。『付いて行ったら餌を貰えるかも知れない』と、話しているそうだ。コッコちゃんは、みんなこうなのか? それ程この森で生きていくのは大変なのだろうか? コッコちゃんにとっては厳しい環境なのだね。
「そろそろ帰ろう」
お魚も沢山捕ったし、ププーの実も採れた。コッコちゃんなんて10羽も捕まえた。
不思議な白いマッシュも採った。育てられるかも知れないと、生えていた木を少しだけ切って持って帰る。
ニコ兄は、育てる気満々だ。うちの薬草畑がどんどんバージョンアップするのだ。
帰りもピカに乗せてもらおう。よいしょっと……おや、ピカの背中の向こう側まで足が届かないぞ。ピカが伏せてくれているのだけど、伏せていても大きいものは大きい。
「ほら、ロロ」
レオ兄にヒョイと抱き上げられて乗せられた。
「ありがと」
「怖くない?」
「うん、へいきら」
「そう、良かった」
レオ兄は、俺がピカに乗っていて攫われたからそう言うのだろう。確かに、トラウマになっているかな? と、俺も考えたりしたのだ。
全然大丈夫だったのだ。女神が癒してくれたからなのかな?
でも、周りはそうじゃない。
ピカに乗っている俺の両側に、レオ兄とニコ兄が付く。その後をリア姉が歩く。
必ずなのだ。森の中で、ピカに乗っている間はずっとそうだった。
俺より、リア姉達の方がトラウマになっていそうなのだ。
「だいじょぶなのら。もうへいきなのら」
「そうだね」
レオ兄が、優しく撫でてくれる。
心配掛けちゃったのだ。
今日捕まえたコッコちゃん達は、教会に3羽と『うまいルルンデ』に4羽を連れて行く事になった。残3羽をうちで飼う。
うちには既に4羽いる。今コッコちゃんのいる柵を大きくして、近所の数軒で一緒に面倒を見る事になった。卵は順に食べるのだそうだ。
「明日にでも教会と『うまいルルンデ』に連れて行こう。僕も一緒に行くよ」
何故なら、テイムの素養のある人がいるのか見たいそうなのだ。
でも、コッコちゃんはお利口さんだから大丈夫ではないかな?
ディさんは10羽のコッコちゃんを繋いだ縄を持って先頭を歩いている。コッコちゃん、お利口さんなのだ。『コッコッコッ』と鳴きながらちゃんと縄が絡まない様に並んで歩いている。これって何かの行事ですか? みたいな感じなのだ。
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