表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆第6回ESN大賞W受賞☆11/4④発売☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第1章 ルルンデで生活するのら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/469

60ー助けて

(マリー視点です)



 ロロ坊ちゃまが攫われた! ピカの背中に乗っていたロロ坊ちゃまが!

 一瞬の出来事で、手を出す事もできなかった。直ぐにピカが後を追って走り出した。

 こんな街中で、攫うなんて!

 そうだわ、衛兵に知らせないと!

 何をどうすれば良いのか分からない。気が動転して、あたふたしていた私の目に飛び込んできたのが『うまいルルンデ』の看板だった。

 咄嗟に『うまいルルンデ』に駆け込んだ。


「おばあちゃん? どうしたの?」


 ああ、エルザだわ。


「エ、エルザ!」

「まあ! どうしたの?」


 奥さんも出てきてくれた。助けて……お願い!


「ロロ坊ちゃまが! ロロ坊ちゃまが攫われたの!」

「何ですって!?」

「ちょっと、あんた!」


 只事ではないと、奥さんがご主人を呼びに厨房へ入って行った。

 ああ、私が抱っこしていれば良かった。手を繋いでいれば! どうしよう! 坊ちゃま!


「おばあちゃん! 落ち着いて! 何で? どこで!?」

「何だ! どうした!?」


 ご主人まで出て来てくれたわ。お願い、坊ちゃまを!


「え、衛兵に! ロロ坊ちゃまが攫われたんです!」

「落ち着いて、詳しく話してくれ」


 私は、必死で言葉にする。教会へ行った帰り道、ロロ坊ちゃまはピカの背中に乗っていた。

 そこを突然、走って来た男に攫われたと必死で話した。

 心臓が、破裂しそうな位に激しく波打っている。

 鼓動の音は煩い位なのに、周りの音は耳を塞がれた様に籠って遠く聞こえる。駄目よ、しっかりしなきゃ。伝えなきゃ!


「よし、任せな! 衛兵に伝えてくる!」


 ご主人が走って店を出て行った。ああ、お願い。お願い……坊ちゃまを!


「マリーさん、座って。お水よ、飲んで」

「あ、有難うございます」


 奥さんが水を出してくれたけど、手が震えてコップが持てない。


「おばあちゃん、しっかりして! ロロ坊ちゃまを助けなきゃ!」

「ええ、そうね。エルザ、そうよ。助けなきゃ!」


 両手でコップを持って、一気にお水を飲む。やっと、周りの音が耳に入ってきた。


「こんな街中だもの。見ていた人も多い筈だわ」

「ロロが攫われただと!?」

「ギルマス!」


 え? ギルマス!? ああ、本当だわ。あの大きな人は、以前ギルドで会ったギルマスだわ。態々来て下さったのね。


「今、オスカーに聞いたんだ。俺はギルドで待機しておくからな! 何か分かったら知らせてくれ!」


 さっき来られたばかりなのに、もう走って戻って行かれたわ。

 あらあら? オスカーって誰かしら?


「おばあちゃん、ここのご主人よ。ご主人がオスカーさん。奥さんは、メアリーさんよ」

「あらあら、そうなのね」


 私ったら、ご主人と奥さんのお名前も知らなかったわ。何度もお会いしているのに。


「衛兵が直ぐに捜索してくれるそうだ。見ていた奴もいるらしい」


 そう言いながら、ご主人のオスカーさんが店に戻って来られた。いつも頼ってしまって申し訳ないわ。エルザもお世話になっているのに。


「ピカはどうした?」

「あ、そうそう。ピカが追いかけているの!」


 そうだったわ。ピカが追いかけているから大丈夫よ。ピカが見失うなんて事はないもの。きっと坊ちゃまを助けてくれる。ロロ坊ちゃま、どうかご無事で!


「マリー! ギルマスに聞いた!」

「マリー!」


 リア嬢ちゃまとレオ坊ちゃまが『うまいルルンデ』に血相を変えて飛び込んで来た。

 

「嬢ちゃま、坊ちゃま、私が付いていながら、申し訳ありません!」


 私はガバッと頭を下げた。

 ああ、涙が出そうだわ。でも、泣いたら駄目よ。本当に泣きたいのは嬢ちゃまと坊ちゃまだもの。自分のエプロンを掴みながら、グッと堪えて頭を下げる。


「こんな街中で堂々と攫うなんて!」

「マリー、頭を上げて。仕方ないよ、どうしようもできなかったんだろう?」

「申し訳ありません! ロロ坊ちゃまにもしもの事があったら……」


 もう後悔しても始まらない。分かっているのだけど、悔やまれる。

 あの幼いロロ坊ちゃまが、今どんな思いでいるのかと思ったら胸が締め付けられる。

 

「大丈夫だ。ピカが付いている。マリー、歩ける?」

「は、はい」

「先に帰ってほしい。誰もいなかったらニコが心配するだろうから。僕はギルドにいるよ。ギルマスが衛兵と連絡を取ってくれているんだ」

「レオ坊ちゃま……分かりました」


 レオ坊ちゃまは、こんな時でも冷静だわ。まだ15歳だというのに。

 私もしっかりしなきゃ。両手でパンパンと自分の頬を叩いた。


「姉上もマリーと一緒に先に帰ってほしい」

「嫌よ! あたしもギルドに残るわ」

「姉上、ニコに話してそばにいて欲しいんだ。ニコも心配だからさ」

「分かったわよ……レオ、必ずロロを助けてよ」

「当たり前だ」

「さ、マリー。帰りましょう」

「はい。レオ坊ちゃま、お願いします」

「大丈夫、ピカがいる。それに現場を見ていた人が何人もいるんだ。大丈夫だよ」


 ロロ坊ちゃまは、小さかったからご両親の事を覚えていない。

 それでも、傷付いてらっしゃる事は分かっていたの。寂しいと思わない訳がないのよ。まだやっと3歳なのだから。

 なのに、寂しがったりなさらない。みんなに心配かけない様にと、気丈にしておられる。

 そんな坊ちゃまを、守らなきゃと思っていたのに。

 これ以上、辛い思いをさせられないと。幸せになって欲しいと。そう願っていたのに、私は何をしているのよ。

 ロロ坊ちゃま、ごめんなさい。マリーがもっと気を付けていたら。

 

 リア嬢ちゃまと一緒に家に帰ると、ニコ坊ちゃまとユーリアがもう帰っていた。


「誰もいないから心配したぞ」

「おばあちゃん、どうしたの? 顔色が悪いわ」

「あれ? ロロは?」

「ニコ、ユーリア」


 リア嬢ちゃまが、ロロ坊ちゃまが攫われたと話された。

 両手を膝の上に置き、ギュッと握り締めて真剣に聞いてらしたニコ坊ちゃま。


「リア姉、分かった。ピカが付いているなら大丈夫だ」


 なんて気丈な事を……まだ、ニコ坊ちゃまは9歳だというのに。

 ああ、ピカ。お願い。ロロ坊ちゃまを助けてちょうだい。

 どうか、ご無事でいてください。祈らずにはいられなかった。


お読みいただき有難うございます!

いやぁ、驚きました。なろうさんでは、あまり感想を頂けないのですが。^^;

皆様、ロロを心配して下さって有難い事です。

PV数で分かっているものの、沢山の方々に読んで頂けているのだと実感しました。有難うございます!

宜しければ、評価やブクマでも応援して頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マリーさん、あまり自分を責めないで! ほのぼのから一転ハラハラ展開で続きが気になるー。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ