57ー教会にお裾分け
翌日、マリーやピカと一緒に教会へお出掛けなのだ。
マリーとお手々を繋いで、トコトコと街を歩く。今日はピカに乗っていないのだよ。俺は日々進歩しているのだ。まだ早くは歩けないけど。
「ロロ坊ちゃま、帰りは手芸用品店に寄りましょうね」
「うん、糸ほしいのら」
「はいはい、刺繍糸ですね」
「うん、みどりがないのら」
ディさんからの依頼だ。葉っぱでいいと言っていた。少し凝ってみようと思っているのだ。その為に、緑色の刺繍糸を何種類か欲しいのだ。
先ずは、図案を描いてから刺繍を始めようと思っている。
リア姉とレオ兄のリボンに刺繍した時はぶっつけ本番だったのだ。だから、少し納得できない部分もあったりするのだ。
ディさんの依頼は代金も払ってくれるという。レオ兄達のおリボンより、もっとちゃんとするのだ。お仕事だからね。
「いろんなみどりがほしいのら」
「はいはい、見てみましょうね」
そんな話をしながら、トコトコと歩く。もうすぐ街の中央なのだ。そしたら教会は直ぐそこだ。
教会に到着すると、いつもの様に正面から入って行く。いつも開け放たれている入口からだ。
そしたら、奥の祭壇のところにビオ爺がいた。お掃除していたのだ。
「おう、マリーにロロじゃないか」
俺達に気付いて、やって来た。手には雑巾を持っているのだ。
「びおじい、おそうじ?」
「おう、祭壇を拭いていたんだ」
「えらいね~」
「わふん」
ピカも偉いと言っている。この祭壇にある像はあの女神の像なのだ。泣き虫女神。
本物の女神より、ずっと上品で女神らしく見えるのだ。
「わふぅ」
それを言ってはダメだ。と、ピカが言う。
でも、仕方ないのだ。いつも言動が、女神らしくないのだから。
「今日は沢山持って来たの」
「うん、いっぱいなのら」
「ほう、また何か差し入れしてくれんのか?」
マリーが説明したのだ。俺達が森の中の川まで行って来た事。その時のお裾分けなのだと。
「そりゃ、凄いな。ロロも行って来たのか?」
「うん、たのしかったのら」
「そうか、魔獣は出なかったのか?」
「でたのら。れも、ぴかがやっちゅけたのら」
「ピカがか?」
「わふッ」
「しょう。ぴかはちゅよいのら」
「アハハハ、強いのか」
そんな話をしながら裏の孤児院へ向かう。教会と孤児院の間にある中庭に出ると子供達に囲まれたハンナがいた。
「あら、マリーさん、ロロくん」
「はんな、こんちは〜」
俺はいつもの様に手をフリフリする。
子供達も口々に、俺とピカの名を呼びながら駆け寄ってくる。
「ハンナ、今日は沢山差し入れを持って来てくれたそうだ」
「まあ! いつも有難うございます! 調理場に行きましょう」
孤児院の、そう広くはない調理場の調理台にピカがドドンと出したのだ。
お魚さんにププーの実、コッコちゃんが今朝産んだ卵、そしてお鍋に入ったプリンだ。
「ロロ、このお鍋は何だ?」
子供達が聞いてくる。お鍋に入っているからかな? プリンには見えないのだ。
「ぷりんなのら」
「え!? こんなに大きいのが?」
「しょう。うまうまなのら」
途端に、おぉー! と、歓声が起きる。
「ハンナ、頂こう」
「そうですね、みんな食堂に座ってちょうだい」
はぁ〜い! と良いお返事をして、バタバタと食堂へと移動する。
ここの孤児院は、領主様の奥様がちゃんと援助してくれているから食べる事に困っている訳ではない。
毎食ちゃんと、お腹いっぱい食べている。それでも、オヤツとなると話は別だ。
畑のおじさん達と一緒で卵があるなら普通に食べる。プリンを作る事も買う事もないのだそうだ。
だから、みんな嬉しそうだ。鍋に入っているから、スィーツって感じは全くしないのだけど。それでも、甘い匂いはする。
「はんな、ププーの実はまだ2〜3日らいじょぶなのら」
「はい、分かりましたよ。お魚も大漁ですね。これ、全部捕ったの?」
「しょうら。れおにいが」
「凄いわね。私達は森の中なんて行けないから」
「しょう?」
「そうよ。だって魔獣が出るでしょう?」
「あー、しょっか」
俺達はピカが強いし、レオ兄やリア姉だって討伐できる。でも、普通は違うのだな。森で捕れたものは珍しいのだ。
ハンナが、皆にプリンを取り分ける。やっぱ、オタマなのだ。
「スゲー、こんなに食べていいのか!?」
だって鍋1個分のプリンなのだ。充分にあるぞ。
「これは、美味いなぁ。濃厚だ」
ビオ爺が一口食べて言った。説明してあげるのだ。
「コッコちゃんの、たまごれちゅくったのら」
「コッコちゃんて、何だ?」
「ビオ爺、フォリコッコという魔鳥ですよ」
「魔鳥か!?」
「しょうなのら。飼っているのら」
「ま、魔鳥を飼うのか!?」
「しょうなのら」
楽に飼える様なら、また捕まえてくるから孤児院でも飼うといいな。毎日、美味しい卵が食べられるのだ。売ってもいいぞ。
「いやいや、ロロ。お前、捕まえてくるって言っても魔鳥なんだろう?」
「びおじい、らいじょぶら」
だって魔法の言葉があるからね。
「おしゅわりしゅるんら」
「は?」
「らから、おしゅわり」
俺はビオ爺に説明してあげたのだ。
「マ、マジかぁ!?」
うんうん、そうなのだよ。
その上、コッコちゃん達はとってもお利口さんなのだ。朝早くから、コケッコー! と鳴いちゃうけどね。
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